同盟 Ⅲ
透と翔の激戦の後のお話です。
「強いなぁ!」
「……………それほどでも。」
「同級生でここまで強い人がいるのかって思ったら、かなり熱くなっちゃったよ。やっぱりRATING以上には打てないもんだね。」
「……………僕も普段なら4ROUND FINISHなんて狙わないんだけどね。まあ1番初めの翔のLOW TONで少し火が着いたよ。」
RATINGとはダーツの実力を示す値のことだ。基本的にソフトダーツの筐体によって様々だが、18段階で示されるものや、30段階のものがある。主に学園では30段階のものを推奨し、成績に反映している。システムについては詳しくは知らないが。ちなみに俺は30段階のうちの16。トッププロになっても30を取る人はおろか、25以上を取る人もあまり多くはない。
スコアは主にICチップの埋め込まれたカードで管理しており、それをダーツの筐体に通すことによってデータが蓄積される。ゲームの記録は学園側にデータとして残っている。そこでRATINGを知ることができるのだ。
それにしても始めのHIGH TONには痺れた。気圧された。だがおそらくこういった猛者がこの学年にはうようよいるのだろう。彼らの実力も知りたいところだ。
「……………実力をすぐに一目で見抜く人ってあんまり周りにはいなかったし。僕手加減とかしないタイプだからかなりパワープレーになっちゃったけど、翔も相当打ってきてたからプレッシャーだったよ。」
「そうなの?全く表情変えなかったから気付かなかったけど。」
「……………それが僕のプレースタイルだから。ここまで追い込まれたの初めてだったよ。」
そしてもう1つ気になっていたことが。
「あのさ………後ろにいるあの人たちは?知り合い?」
「……………あーあれね………」
透がとても微妙な表情になった。珍しい。
後ろで数人の女子がヒソヒソ話してるのが聞こえていた。
「さすが透くん…」
「にしてもあの男だれ?今まで見たことないけど。」
「あぁ…今日もあの儚げな瞳が美しい…!」
透の表情と話している内容から察するに………
「ファン、と。」
「……………中等部時代からあそこのメンバーはよく僕の試合を見にきてくれるんだけど…僕あんまり女子に免疫ないからどう接すればいいか困っててね…」
なるほど。女の子に囲まれているのにどうすればいいか困るから俺に相談しにきていると。なぜだろう。友達だと思っていた人に裏切られた気分だ。モテ男め。殺意が湧いてきたぞ。
「まあプレー中は静かだったからまだマナーはいいんだな。」
「……………そこだけはありがたいよ。」
少しずつ打ち解けてきた辺りで俺から再び切り出す。
「そうだ。結果として俺は負けちゃったんだけど…俺とチーム組む話、受けてくれる?」
負けた側から言うのも少し勇気が要る。勝った側はそれを選ぶ権利がある。もっと強い人と組みたいと思えば拒否されてもおかしくない。
「……………こちらからお願いするよ。翔みたいに強くて熱い試合ができるプレーヤーとは僕もチームを組みたいって思っていたんだ。正直、ここのところ中等部から学年主席だったっていうだけでやたらと偉そうな勧誘が多くてね。」
「え?」
「……………言ってなかったっけ。僕、実は中等部首席の成績で卒業してるんだ。あんまり自分からそういうこと言うタイプじゃないんだけど、もうチームメイトだから知っておいてもらってもいいかなって。負けたことは今のところは一度もないんだ。」
知らなかった。そりゃ強いわけだ。
頼もしいチームメイトが出来て嬉しい反面、やはり学年主席には遠く及ばなかったという悔しさが再び噴出してくる。
「なるほど。でもさっき透自身が言っていたけど首席卒業生なら引く手数多じゃないのか?」
「……………翔の言葉で少し変われたのかもしれない。もともとダーツで上に行くことだけしか考えてなかった生徒があまりにも多いし、自分もそうだった。でも学園長の言葉とか、一般編入生の意味とか、僕もこれから考えたいと思ってさ。それを翔が教えてくれそうな気がしたんだよ。」
「透…」
「……………そうだ、僕とチームを組む人がもう1人いるんだ。同じく中等部から進学してきた人がいるんだけど今から時間ある?」
「もうチームを組む約束はしてるの?」
「……………してないけど確実に乗ってくるはず。」
まあ透から誘われれば確かに誰でも乗って来るだろうが。時間があるか聞かれたということはまだ学園にいると知っていることになる。
「クラスは?」
「……………C。ダーツカフェにいるはずだから。今から行こう。」
早速カフェへと向かう。ドアを開けると元気そうな声が飛んできた。
「おー!透ー!終わったかー?」
元気な『少年』、という感じだ。純粋さや素直さが伝わって来る。茶髪のサラサラヘアに、前髪の一部が寝癖のようにピョンと立っている。そこだけ髪色が一際明るい。
「……………待たせてごめん。新人戦トーナメントについての話は聞いてる?」
「聞いてるぞー!それがどうしたのー?」
「……………僕とチーム組むよね?」
「勿論!そういやチームメイトあと2人だっけ?集められるの?透、人と全く話せないじゃん。」
「……………それがね。熱心なラブコールを受けて、」
「結婚することにしました!?」
「……………違うよっ」
漫才を見ているみたいだ。息ぴったりである。
「……………自己紹介よろしく。」
んで丸投げか。
「八神 翔です。特待枠受験で高等部に編入してきました。よろしくお願いします。」
「光倉 虹渡だよ!よろしく!!」
元気一杯の挨拶と握手が飛んできた。その勢いにタジタジだ。
「……………虹渡とは長い付き合いなんだ。幼稚園時代から家が近所だったからよく遊んでた。」
「今日もまた透の家で投げていいかー?」
ん?
「透の家?」
「……………僕の家でよく虹渡とダーツを投げてたんだ。」
「透の家ダーツ台たくさんあるし色んな人と投げられるから楽しいぞ!!」
んん??
「…透の家って何してんの…?」
「……………家がダーツバーを経営してるんだ。」
「翔知らなかったのかー?翔も透の家で一緒にゲームしようぜ!!」
いろいろ新しい情報が多すぎてついていけない…理解が追いつかないまま、俺は虹渡の勢いに押されて新しいチームメイトの家でダーツをすることになったのだった。
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次回、透の家で新ゲームです!最後までぜひお読みください!




