毅然 Ⅷ (昴side)
続きです。
「おぼっちゃま、これを。」
「ありがとう…!本当に助かったよ。」
「まったく…一体誰がこのようなことを…見つけ次第…!!!」
「それは大丈夫だ。この僕が実力で倒してくるからね!」
「立派になられて…!私感動しております…!!」
密かに怒りを燃やすのはメイドの飛鳥馬だ。幼い頃から昴の成長を近くで見守り、そして献身的に身の回りの世話をしてきたメイドの1人でもある。
家事を全てこなせるだけでなく、ダーツもかなりの腕前だ。小さい頃はもちろん簡単に勝てていたのだが、今ではとうに実力を追い抜かれていた。しかしそれも、飛鳥馬の中では息子の成長を見守る親のような気持ちを抱いており、誇らしくもあった。
今回の新人戦では、いい仲間に恵まれたと言う昴の言葉から昴の善戦を信じていたメイドたちだったが、それはある事件、すなわちダーツの盗難事件で一気に暗雲立ち込めた。
でもそれをしっかりと最速かつ最善策で打開するのが西園寺家の強み。
昴からのSOSを受け、昼の休憩までに会場に到着。あまり手に入らないはずのバレルだが、独自ルートで最速で入手、そして学園に赴きすぐに替えのダーツを渡したのだった。昴が慣れないバレルで投げる試合を最小限抑えることができ、普段通りに投げられる状態にすぐに持っていくことができた。
昴自身もこれから難敵を相手にするこのタイミングで渡してくれたことには感謝していたが、しかしメイドたちに余計な負担をかけてしまったことを深く反省していた。
だからこそ…
「絶対に2日目に残る。本当に助かったとみんなに伝えてくれ。」
「もったいなきお言葉でございます。私たちも陰ながら応援させていただいております。ではご武運を。」
「わざわざすまなかった。」
これから3回戦、そして準々決勝が始まる。
しかしいつものバレルを数時間握っていないだけで、ここまで調子が崩れるものか、と自分でも不安になる。
これは確実に別室での投げ込みも必要なのではないかと色々と思考する。その時にふっと頭に浮かんだのが仲間たちの顔だった。
ここまで支えてくれた仲間たち。
中身はとてつもなく濃いメンバーだが、自分のことを信じ、慕ってくれてここまできた大切なチームメイトだ。
彼らのためにも、ここは負けていられない。
「魅せる。」
そう呟くのは、他でもない。
ファンの為、ライバルの為。勿論それも理由の一つではあるが、今回だけは。
「いた…!もーどこいってたの?」
「我の目をかいくぐるとは。我も修行が足りぬな…」
「逃げろ…俺の真の力が解放されてしまう前に!」
「なんで見つけたのに逃がしちゃうの?ほらほら、試合だからみんな準備しよう?」
3人がいつもと変わらず出迎えてくれる。
これは…今までにはなかった、大切な日常で。
僕にとっての新たな希望。
「君たちには…感謝しているよ。」
「「「……………?」」」
急にしんみりした昴にやや動揺する3人だったが、その空気をいち早く察して昴は取り繕う。
「…いきますか…!ショータイムだ!!」
「「「おー!!!!」」」
ここ1週間で部活動の合宿があったため、投稿が1日遅れてしまいました。申し訳ありません。
閑話ということもあり、短かったかと思います。申し訳ありません。
次回から、また本編へと戻る予定です。
次回もお楽しみに。
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