毅然 Ⅵ
1-1で迎えるゲーム中盤戦。続きです。
LEGカウント1-1で迎えた第3LEG。
「樹から渡してもらった?」
「……………もちろん。今までよりは打つつもりだから気負わなくていいよ。」
「助かるよ。じゃあ行きますか!」
このLEGの次のLEGは、本当なら俺と樹が出る予定だったが、試合数の制限があったため、透と樹で出ることになっている。
第4LEGのSINGLES TEAM CRICKETは1人が何本打とうとパートナーが得点できないと意味がない。透の無力化工作がなされている以上、ここは何としても勝っておきたいところだ。
「出てきやがったか…この前のようにはいかないぜ。」
下卑た笑みを浮かべて剛田がやってくる。
向こうのチームからすれば、有利になるような条件で試合受けてもらえたようなもの。余裕で臨むのは当然と言える。
「さぁ奥の手、とやらを見せてもらおうか。」
凄んだ剛田に難波も乗る。
「じゃあお構いなく。」
依然として毅然とした態度を崩さない俺たちに肩透かしを食らった2人は訝しげに俺たち2人をひと睨みし、ボードに向かう。
『DOUBLES 501 GAME ON !』
『ROUND 1』
…ピュン『SINGLE 17』
…パシューン『BULL』
…パシューン『BULL』
『LOW TON』
やはり余裕をかますだけある、正確なダーツ。まだ彼らが犯人とわかったわけではないが、執拗に透を挑発して手の内を早く明かすように責め立てていることは明白だ。
まるでなぜ透が良いダーツを打てていないかを知っているかのように。
しかしそんなことでは俺たちは動じない。
…バギュン『DOUBLE BULL』
…バギュン『DOUBLE BULL』
…バギュン『DOUBLE BULL』
『THREE IN THE BLACK』
「「…あ???」」
「……………やっぱり久しぶりに握るけどこれもこれで投げやすいね。」
「やっぱり慣れなのかな。久しぶりと言っても練習もなしで投げられるなんて…やっぱり技術の差を見せつけられてる感じがするよ。」
「……………これに関しては技術というより慣れだよ。人生で初めて握ったバレルがこれなんだから。父さんから借りて投げていたのが懐かしいよ。」
初っ端からBLACKをかまされて呆然としている剛田と難波を尻目に、透は昔のことを思い出してか、いつもの無表情の時と打って変わって穏やかな表情になる。
プロダーツプレイヤーとして活躍している父親の元に生まれ、幼い頃からダーツを握ってきた。ダーツを始めたのは5歳の時だ。
父親はプロとしてダーツの会社とも契約を結び、その過程でバレルを製作、プロデュースもしてきた。その処女作が、たまたま樹の持っているバレルだったのだ。本来ならば廃盤になっているため入手できないが、特別に数セット、手元に置いていたのだ。そして、試投の時に樹が気に入ったのを見て、1セット無料で譲ったのだ。
「これを樹は知ってるの?」
「……………多分知らないと思う。樹の性格からして父さんがらみだっていうのか何か察してそうだけどね。」
「あー、なんか分かる気がする。」
雑談をしながら2人でリラックス。
そうこうしていると、難波が81点削って戻ってくる。さすがにAクラスともなるとミスしても一本BULLは入れてくる。
「作戦は…っと。」
…ピュピュピュン『TRIPLE 19』
…ピュピュピュン『TRIPLE 19』
大半は透を見に来ているであるはずのギャラリーがこの2投で静まり返る。
そして俺も嫌な予感がしたため一呼吸を置く。
深呼吸。
「…しゃっ。」
…ピュピュピュン『TRIPLE 19』
『THREE IN A BED』
もうこのゲームでは投げないという宣言の意地のBED。
相手は303点に対し、俺たちは180点。十分な見せ場を作り、俺はダーツをボードからゆっくりと抜いて透のもとへと戻ってくる。
「……………流石だよ…これは流石にプレッシャーだよ…」
「透から『流石』という言葉をもらえただけで恐悦至極だよ。」
相手はHAT、そしてHIGH TONが絶対条件。それも透が180点をミスしてくれることが前提だ。
ROUND3で剛田は果敢に攻めるも108点のLOW TON止まり。透に順番が回ってくる。
会場の雰囲気もピリピリと肌でも感じられるような緊張と、空前絶後のプレーを期待する眼差しが透を包む。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
安定したフォームで2本を入れ…
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
最後はやや体勢を崩しながらもなんとかFINISH。会場がどっと湧いて、納得したように透が頷く。
その頷きはいつもよりもなんだか安心したような、自分の全てを出し切ったような、大きな頷きであったように見えた。
更新ギリギリで作業しており、完成したものを時間通りにあげられませんでした…申し訳ありません!
次回、透たちの逆襲が始まります。お見逃しなく!
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