同盟 Ⅱ
ゲームスタートです!
「……………先攻は譲るよ。」
「じゃあありがたく。」
透と実力差がある以上、先攻で投げられるのは大きい。ダーツという競技は基本的に先攻有利だ。
ゲームはオーソドックスな01ゲーム。初めの数字が501、701、1101のように、下2桁が01となることからそう呼ばれている。お互いダーツを3本ずつ投げて点数を減らしていき、先に点数をぴったり0にしたほうが勝ちとなるゲームだ。
基本的に得点はボードの外に書いてある数字を見ることになるが、エリアによって得点が違う。1番外側の狭いエリアが書かれている数字の2倍の得点が入る、ダブルリングと呼ばれるエリア。その内側の広いエリアは書かれている数字と同じ得点。アウターシングル、と呼ばれることもある。その内側の狭いエリアはトリプルリングと呼ばれ、点数は3倍だ。その内側の広いエリアは数字そのままが得点となる。インナーシングルとも呼ばれる。
そして、真ん中の2つの大きさの異なる小さな円のエリア。ここはBULLと呼ばれるエリアで、基本的にはどちらに入れても50点、点数が減らせる。
「……………じゃあよろしくお願いします。」
「よろしく。」
『701 GAME ON !』
ダーツ台からの小気味のいい音楽とともにモニターに残り点数が表示される。
『ROUND 1』
701
八神 翔 701 御影 透 701
まずスローラインの前で深呼吸。気持ちを整えてダーツを投げる姿勢にはいる。目標を見て…腕を引いて……投げる。……投げる。……投げる。
…パシューン『BULL』
…パシューン『BULL』
…ピュン『SINGLE 2』
『LOW TON』
おお!音楽と一緒に派手な演出の映像がモニターに流れるのか。
LOW TONとは、1ROUNDで100点以上、150点以下減らした時に出るアワードだ。
アワードとは何かしらいいダーツが出来た時に出る、いわば景品のようなものである。
アワードは他には3本のダーツ全てをBULLに入れた際に出る『HAT TRICK』や、1ROUNDで151点以上の点数を減らした際にもらえる『HIGH TON』などがある。
家にもダーツができる場所はあるものの、こう言った演出や、点数などの表示システムはない。
やはりいい機械は違うな。
そして次は透が投げる。
深呼吸し、ボードを見て構える。動き一つ一つに全く無駄がない。綺麗だ。
…パシューン『BULL』
3本ともBULLか、と思っていたら透の目線がやや上に変わった。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
『HIGH TON』
531
八神 翔 599 御影 透 531
「え…?」
思わず声が漏れる。
後攻の透は俺よりも1ROUND少ないROUND数で上がらなければならない。先攻が上がったらゲームは終了してしまうのだから。
そしてBULL、すなわち50点を確実に入れて減らしていったときに最短でかかるROUND数は5。一応1本ならばBULLを外しても辛うじて5ROUNDで上がりの目が残る。
そこで透は4ROUNDでの理論上最短スローでFINISHしようとしている。この後180、180、171と減らせれば最終的に0ぴったりになる。ここから先ずっとTRIPLE 20やTRIPLE 19に入れ続けることが必要条件だが。
しかし俺は既にBULLでのミスができない状況に陥っている。ただ俺の実力ではLOW TONが精一杯、時々HAT TRICKで150点減らせる程度。ましてやBULLよりもエリア面積の小さいTRIPLEのエリアに、3本全てのダーツを入れるのはかなり難しい。外せば減らせる点数が大きく減ってしまう。狙うのはリスクが大きすぎる。BULLを狙い続けて点数を減らす方がまだ勝機があるだろう。
『ROUND 2』
531
八神 翔 522 御影 透 531
俺は結局77点しか減らせず。そして透のスロー。おそらく狙いは…TRIPLE 20に3本全てのダーツを入れる『TON 80』だろう。ダーツの中の最高点、出すのは至難の技だ。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…ピュン『SINGLE 20』
…ピュン『SINGLE 7』
444
八神 翔 492 御影 透 444
助かった。4ROUNDでの上がりの目は無くなった。透は最後の一投のみBULLを狙ったが僅かに外したようだ。しかし透の気迫に押されているのはなんとなく感じる。
いけない。このまま持ってかれたらチームに誘った意味が無いじゃないか。
しかし勝てない相手だからこそ、何故か燃えて来る。ここまで上手いダーツを見せられて、俺が黙っていられる性分ではない。
俺の中で何か箍が外れたのか、急に緊張が抜けた。
「…ぅし。」
やってやろうじゃねえか!
『ROUND 3』
…パシューン『BULL』
…バギュン『DOUBLE BULL』
…パシューン『BULL』
『HAT TRICK』
黒いハット帽がくるくる回りHAT TRICKの文字が踊る。
その後吹っ切れた俺は次のROUND 4では114点のLOW TONを決める。今回はいつにまでなく調子がいい。
対して透はROUND 3からBULLへ狙いをシフト。HAT TRICK、そしてROUND 4で僅かにBULLを外し120点のLOW TON。明らかに相手も乗ってきている。
ROUND 5は互いに上がりを意識してか、BULLに入らなかった。
『ROUND 6』
192
八神 翔 192 御影 透 135
俺はまだこの時点で上がり目がなく、透にはある。ここで良い点数を減らしてプレッシャーをかけたいところだ。
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…パシューン『BULL』
…バギュン『DOUBLE BULL』
『HIGH TON』
「よっしゃぁ!」
思わず声が出る。残り点数は32。これはいい点数の残し方だ。16と8はダーツボード上では隣り合っており、DOUBLE 16を外しSINGLE 16に行ったり、DOUBLE 8に逸れても、次も同じような場所を狙えば良いためにかなり都合が良くなるのだ。これはかなりプレッシャーになる筈だ。
「……………やるね。」
「そりゃどうも。」
透はまた口角を少し上げ、ダーツボードを見る。
深呼吸し、3本をリズム良く投げた。
…パシューン『BULL』
…ピュピュピュン『TRIPLE 15』
…ピュピュン『DOUBLE 20』
『LOW TON』 『FANTASTIC!』
「NICE OUT!!」
「……………お疲れ様。」
格上相手にここまで善戦できただけでも良しとしよう。相当調子が良かったのに全く歯が立たなかった。やはりまだまだBULLの精度が安定しない。帰ったらこれからたっぷり練習だ。
いかがでしたでしょうか。ブックマーク、コメントなどもよろしくお願いします。
透の強さが際立ってましたね!次回、新たなキャラクター登場です!お楽しみに。




