暗雲 Ⅴ
続きです。西園寺は事細かく事情を話したようです。
「…というわけだ。」
「……………僕の予想を超えていたけど、これは明らかに誰かに仕組まれたことだっていう確信は得られたね。」
「では具体的にどうする?怨敵を見つけ出すにも手掛かりがないぞ。」
猿飛の言う通りだ。周りにいるチームメイトも悔しさを押し殺しながらも頷く。
そうしてしばらく考え込んでいた樹が何かを思いついた様子で口を開いた。
「ここまでの状況を整理すると、基本的に狙われているのは優勝候補のチームだと考えると他にも被害者がいるかもしれませんよね?
少しIクラスの友達に確認してきてもいいですか?」
「え??なんで樹のクラスの中を確認するの?狙われてるのって透とか西園寺とかのクラスばっかりじゃん!!」
「いえ、そこを逆に利用するんです。これには二つ目的があります。
一つ目は、同じクラスへの被害者がいなければ、被害者は上位のクラスに絞り込まれるはずで、その場合はその優勝候補チームとの接触のあった人物に犯人は絞られます。
二つ目は、私と同じクラスにも被害者がいた場合にはただこのトーナメントを荒らすために動いているということになります。
後者に関しては目的は不明ですが、この場合はトーナメント全体への呼びかけでお互いに注意するようにすれば新たな事件は起きない可能性があります。」
「なるほど…やっぱり樹って頭いいんだね!」
虹渡が目をキラキラさせている。
Iクラスに聞きに行く、すなわち一般受験で編入してきたメンバーは、必ず内部進学した経験者とチームを組んでいる。それぞれのチームリーダーのプレイヤーは上位クラスで占められている。そのチームのリーダーに何かあったとなれば情報もまわってくるだろうし…そのことも見越しているのだろう。
「じゃあこれから西園寺たちはどうするの?このままだと試合にならないと思うけど…」
「……………僕たちも僕たちでピンチだけどね。」
俺も透も西園寺が心配、と言うよりも…できることなら試合をしたいと言うのが本音だ。ここで負かされてしまっては困る。興醒めだ。
「どうしようもない。借りたものでもある程度の数字は出せる。冷静に見ても…Cクラスくらいだ。」
何だかしおらしい西園寺を見るのがあまりにも珍しいものだからどう接したらいいか分からなくなる。
「ククク…なんと言うことはない!!我が力を解き放てば敵の襲撃など造作もない!!」
「僕たちもできるかぎりがんばるよっ!」
「色即是空…空即是色…」
約1名精神統一で聞いているのか聞いていないのかわからないものもいるが、皆西園寺のことを思う気持ちは一つだ。
絶対に勝って、犯人を見つけ出す。その為には―――
「俺たち、一時的に同盟を組もう。お互いあった情報を共有して、絶対に犯人を見つけ出そう。」
「いいのか…?君たちにも試合はあるだろう…?」
「……………さっき言ったでしょ?僕たちも被害者。犯人を早くとっちめて、ダーツでボコボコにしないと気が済まないんだ!」
いつも冷静な透もやや熱くなっている。
「はい。では手分けをして探しますか…」
考えた作戦の書いた紙を皆に見せる樹。そして皆で覗き込む。まてまて…いつのまにそんな資料を作ったんだ。
かなり詳しく作戦が記されていた。
午後の試合は相手が決まっていて、それぞれ試合時間が異なることも把握済みだ。ここからは舞台の上で試合をすることになり、観客席もかなりの数が設けられ、一部試合には実況がつく。一部の試合は作戦を要約するとこうなる。
虹渡、猿飛くん…見回り。
透、西園寺くん…全力で苦しんでいる演技で周りの目を引く。外の見回り。怪しい人物の出入りがないか、会場の中と外を見回る。
樹、有栖川くん…透、西園寺くんをそれぞれ心配する。試合でない方のチームの人は他に被害者がいないか情報収集する。
俺、青野さん…会場を舞台上から怪しい人がいないかを見張る。
それぞれ怪しい人物で特徴が共通する人物がいれば、試合後、虹渡や猿飛が確保…が大まかな流れになるようだ。
樹の資料には他にも会場全体の様子、地図や見回りのルートまできっちりと決められている。ものすごい手際としか言いようがない…
正直ここまで大きなことをやっている以上、証拠が残らないようにアリバイを作って動いている可能性は大いにある。それを見破らなければならないが、今の現時点では割く人員が少ないためこれが限界だ。
「それじゃあ作戦開始ですね!!」
全員が一斉に頷き、それぞれがテーブルを後にしていく。
「絶対に勝ってくれよ。」
「任せておけ。絶対に切り抜けて決勝で華麗なダーツを披露してやろう。」
ニヤリと口角をあげ、微かな笑みを浮かべる西園寺。少し気持ちが吹っ切れたようで、彼からは復活の気配が醸し出されていた。
申し訳ありません!!!
完成したものが上がっていなくて急遽書き上げました…
これからも温かい目で見守っていただきたいと思っております。
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