暗雲 Ⅱ (虹渡side)
今回は虹渡視点です。
「いやー…まだみんな試合やってるなぁ…」
そう零す虹渡はチーム"KNIT"の試合が他の一回戦の試合より圧倒的に短い時間で終わったことを知らない。主な原因は透だ。CRICKETの瞬殺に加えて4ROUND OUTを501で披露するなど、瞬殺だったのである。
「こういう空気感のところは少し嫌だな…しかもなんだかわかんないけど嫌な予感するし…」
ピリピリとした空気を、虹渡は敏感に感じ取っていた。普段ならばどんな空気でもマイペースに振る舞う筈だが、今日だけはこの非日常という感覚が、虹渡の野生の勘というものを刺激していた。
「よし!この空間にいるのなんだか居心地悪いからちょっとトイレにでも行ってこようかな!」
少し気分転換して、あとで樹のところに合流して、次の試合も頑張るぞ!
虹渡もただ元気なダーツをしているわけではなく、しっかりと確固たる意志を持ってダーツをしていたのだ。
そしてトイレに着く。
「…そうすりゃぁ俺たちの優勝は間違いない…」
「…それじゃあ…頼んだぞ。」
「………そんなことしてバレたら…」
「んなこと言ってねえで早く行ってこい!このままあいつらにただ負けるだけで終わるぞ!今……している時しかチャンスがないんだ!………」
なんだか変なこと話してるなぁ…まあいっか。
虹渡がトイレに入ると、
「ちっ…」
虹渡を見て舌打ちをする人が数人、そしてバツが悪そうに数人の男子生徒が出て行った。
「何話してたんだろう?っていうか何かボク悪いことしたかな…」
何か悪いことをしたのであれば謝りたいけどそんなことした覚えないなー…
「あとさっき会ったのって…」
会ったことある気がするけど思い出せない。
「…誰だったかなぁ…」
虹渡がここであった人物が、これから大会を少しずつ蝕んでいくということを彼は知る由もなかった。
トイレを出ると、試合を終えたプレイヤーがかなり増えていた。試合結果も出てくる時間なので樹を探すことに。
数分もしないうちに、練習ブースから出てくる樹を発見。
「おーい!次の試合の対戦相手が決まるよー!!」
「はいはい、行きますよー。」
ボクに気づいたみたい。もう少しで2回戦の試合の対戦表がわかる。
「次の対戦相手早く見に行こうよ!」
「元気ですねぇ…」
「緊張してるくらいだったらできる限り張り切っておいた方がいいと思うんだよね!なんとなく!」
樹と合流して、試合結果を確認しに行く。
「「え……??」」
なんでだろう…少しモヤモヤするな…
「西園寺くんの投げ方ってあんな感じでしたか?
少し違和感がある気がするのですが…」
「あ!樹もそれ思う?なんだかいつもの西園寺くんと違う気がするんだよね。…グリップとか。」
「え、ここから見えるんですか??」
「うん。少し腕の引きが小さい。あとは周りの雰囲気が少し変だからかな。僕のカンがそう言ってる。」
「ここからプレーヤーの細かい指の動きなんて見えません!もうその認識能力は人間のレベル超えてますよ…」
勿論、注目選手だしかっこいいし!でもいつもなら聞こえるキャーキャーが全然聞こえない…ファンたちの不安がる声が結構聞こえてる。
多分ファンならボク以上に西園寺くんの異変に気付いているんじゃないかなぁ。
この虹渡の予測通り、この時昴は苦戦を強いられていた。
本来であれば、初戦からAクラスやBクラスのプレーヤーを含むチームとは当たらないように、二回戦まではそのはずだった。
しかし、透や翔も圧倒的な実力でねじ伏せてしまって本人たちも気づいていないが、トーナメント表が何者かによってすり替えられており、初戦でいきなり昴は消耗させられていた。その上、プレーヤーに合わせてうまく投げられてあまり余裕がなかった。
そして極め付けはダーツバレルが何者かによって盗まれたことだ。本来であれば肌身離さず持っておくのだが、コントロールセンターに呼び出された際に、練習のためのブースのテーブルに放置しておいたままだったのだ。
ここではとにかく別のバレルを用意する他なく、急遽コントロールセンターでダーツを借りたのである。
勿論、いつも使うダーツとは重心も異なる上、シャフトも長くフライトも大きい。とにかく焦っていた。替えのダーツは持っているが今手元にはないのでそれは自分の家のメイドに頼んで持ってきてもらう、ということになった。これは家の財力を間接的に使った無理やりの解決だ。他のプレイヤーでそれをされたら少なくとも今日1日はまともに試合ができなくなる。しかし初戦とその次までは昴も学園から借りて出場することになってしまっていた。
もともとの実力、ポテンシャルはあれど、慣れていないダーツに翻弄され、いつも笑顔を振りまく王子もこの時ばかりは流石に苦々しい表情を隠しきれなかった。
「どうしちゃったの昴さま…」
「なんか腕全く引けてないせいかダーツが下に全部刺さってる…」
「あぁ…でも少し苦しんでる表情は…興奮する…」
「心配ね…」
一人おかしいファンもいるが、注目の選手なだけに会場に不安が広がる。
…シュッ『OUT』
…ピュピュン『DOUBLE 16』
『WINNER 西園寺 猿飛 青野 有栖川』
「ふぅ…助かったよ冴助!次の試合も…申し訳ないが頼む。」
「我は我の任務を遂行するのみ。」
「冴助くんがこの試合はMVPだねっ。次も頑張ろうね。」
「我が手にかかればなんと言うことはない…う…右目が疼く…」
チームはなんとか僅差で勝利したが、本来の実力ならストレートで下せる相手に3-1で、しかも自身の初戦の501FREEZEは感覚がつかめずまさかの負けときた。
「ボクたちにも変なことが起こらなきゃいいけど…」
その不安は後に現実となった。
いかがでしたでしょうか。西園寺たちは無事に勝ち上がっていくことができるのでしょうか。
また、翔たちにも悪の手が迫っていきます。




