氤氳 Ⅳ
Aクラスの最強コンビの試合スタートです。
透はすでに1LEG戦っているので肩が温まったようだが、俺はここから初めての試合なのでやや緊張していた。俺なりに工夫をしているので、前の練習試合の時のような轍は踏まない。
相手チームもエース2人を投入し、完全臨戦態勢だ。
再び後攻となるLEGで、俺たちの作戦は一つだった。
『501 GAME ON !』
『ROUND 1』
…パシューン『BULL』
…ピュン『SINGLE 19』
…パシューン『BULL』
『LOW TON』
…ピュピュピュン『TRIPLE 19』
…ピュン『SINGLE 19』
…ピュン『SINGLE 12』
俺と透は3ROUNDで上がるつもりで考えていたが、19を外した瞬間に、ダーツのリリースが気になってしまい、3本目はBULL狙いにもかかわらずBULLとTRIPLEのリングのちょうど真ん中くらいの位置に刺さってしまった。
まだ肩の力が抜けない。異様な空気、周囲の目もあってか、無意識のうちに力が入っているようだ。
413
(B)司波 裕迅 (A)八神 翔
382 413
(B)九鬼 央悠 (A)御影 透
「……………次僕はHATでいいよね?」
「悪い…少し力んだ。」
「……………調子悪くてももう僕には当たらないでね?」
「その節は本当にすみませんでした。」
これに関してはもう俺は平謝りするほかない。
『ROUND 2』
…ピュン『SINGLE 12』
…ピュン『SINGLE 9』
ここで九鬼は一息おく。イメージが悪い時はしっかりとリフレッシュして狙うあたり、相当な実力者だ。
…バギュン『DOUBLE BULL』
カバーはきっちり決め、透がボードに向かう。
…バギュン『DOUBLE BULL』
…バギュン『DOUBLE BULL』
…パシューン『BULL』
『HAT TRICK』
263
(B)司波 裕迅 (A)八神 翔
311 263
(B)九鬼 央悠 (A)御影 透
「あぁー惜しい!でもNICE HATだよ。」
「……………なんだったら盛り上げるためにBLACK出したかったかも…」
「それで女子からまーたちやほやされるされるんだもんなぁー…ほんとうに恨めし…いや羨ましいよ。」
「……………いま恨めしいって言いかけてなかった??」
さて、オロオロする透を無視して俺はエアスローをし、再度狙いを確認する。先攻の司波がスローに入る。
司波は先ほどの透とのCRICKETの試合でコンディションを整えたらしく、BULLの攻めが鋭く刺さる。
…パシューン『BULL』
…パシューン『BULL』
…ピュン『SINGLE 15』
『LOW TON』
「あーっとぉここでミスるんかぁ…」
196
(B)司波 裕迅 (A)八神 翔
196 263
(B)九鬼 央悠 (A)御影 透
司波はHATが出せなかったことに不甲斐なさを感じているように見えるが、実際Bクラスとは思えないスコアを叩いている。修正能力が高い九鬼は恐らく次にいい数字を残して司波に決めさせるのだろう。
だから俺はここで透にいい数字を回すのが必要条件。上がり目を最低限作る必要がある。
ここまでの思考は数秒のうちに片付いた。透は迷惑が掛かると思うと途端に肩に力が入ってしまう。
「……………大丈夫だよ!僕がどんな数字でも上がってあげるから力まず投げて!」
この言葉で現実世界に引き戻される。プレッシャーになっているのを察した透の頼りになる言葉。
もうこれに俺は僻んだりしないと決めた。これはもう透に任せて好き放題投げればいいと自分に言い聞かせるトリガーになった。
「…一投集中…よしっ!!」
…パシューン『BULL』
…バギュン『BULL』
この時点で163点残り。どう減らしても絶対にテンパイできる。それなら。
…ピュン『SINGLE 19』
『LOW TON』
理想はTRIPLE 19を入れての106残し。BULLから入ってSINGLE 6に行くのもあり、16に行くのもあり、透の好きなように狙うことができる。あとはHIGH TONで後ろの女子からわーきゃー言われたいから。
それくらいは認めてほしい。男の性というものだ。透ばかりで不平等極まりないではないか。
144
(B)司波 裕迅 (A)八神 翔
196 144
(B)九鬼 央悠 (A)御影 透
「……………僕ここで上がり目出ると思ってなかったよー。」
「なんでだよ!?」
「いや、調子崩してまた僕に当たってきて…またチーム崩壊の危機に立たされると思ってたから…」
「本当にごめんなさい…」
なんていうか透が無表情な分余計怖い。透自身は緊張をほぐすためにいじっているつもりなのだが、翔はそうだとは思わなかった。
透は仲直りしたとか口で入っていても内心憤慨しているに違いない。
『ROUND 4』
…ピュン『SINGLE 16』
…ピュピュピュン『TRIPLE 20』
…ピュン『SINGLE 20』
BULL狙いで16に外した後のカバーはきっちり決めてきた。対する透は―――
…パシューン『BULL』
…ピュピュピュン『TRIPLE 18』
…ピュピュン『DOUBLE 20』
『LOW TON』
『WONDERFUL!!』
0
(B)司波 裕迅 (A)八神 翔
100 0
(B)九鬼 央悠 (A)御影 透
透の口角がわずかに上がり、コクリと頷く。危なげない上がりに加えてSTATSもえげつない。2ROUNDしか投げていながら、というのもあるがプロに匹敵するレベルだ。
「……………お疲れ。」
「お疲れ様!ひとまず一回戦突破だね!!」
「相変わらず強いですねぇ…」
「透は出来上がってるからもうやばいと思う…俺の狂戦士モードでも敵わない。」
近くで見ていた俺だからわかる。腕の振りからして調子は上々だ。
「それじゃあ僕は審判の仕事があるから失礼するね。」
「ご苦労様です。」
本来であれば負けたチームのメンバーの誰かが、次の試合の審判をする、というのが普通だ。しかし今回の大会は一斉にトーナメントで当たっていくので、一回戦の試合に全員出場となれば審判員がいなくなってしまうことになる。よって抜け番のプレーヤーが一回戦は例外的に担当することになる。
透はその一回戦の抜け番だったチームの試合の審判をする。
教員から事前に指示を受けているようだし、試合直前になっても戻ってこない、と言うことはないので安心だ。
「私は少し練習ブース行って投げてきます。」
「それじゃあ俺は偵察でもするかな…」
「ボクはお腹減ったからご飯食べる!」
「……………え…まだ10時だけどもうお腹空いたの?」
「うん!しかも今日は美味しいのたくさん食べられるんでしょ!全部食べ尽くすまで帰れないなーー!」
今日はダーツバーのスタッフの人が中心になってビュッフェ形式での食事だ。美味しいのはわかっているが今からがっついて試合に悪影響が出なければいいが…
とりあえず各々、一回戦の結果が出るまで解散となった。
透は調子がいい時はプロとも互角に戦えそうですね!
次回からは各々の視点で休憩の時間を書きたいなと思っています。ぜひお楽しみに。
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