氤氳 Ⅲ
「さすがだよ樹!助かった…」
「……………あそこで相手を凍らせるなんてね…よく入れられたね。」
タッグを組んだ虹渡、そして応援していた透からも賛辞の言葉が絶えない。
良いタイミングで良いダーツを投げられることは難しい。土壇場で決められるのは樹の強さなのかもしれない。
「なんというか…学園の試験の方が緊張したんですよね…透くんとも戦いながら精神力も鍛えてきましたからね!」
「あぁ…透本当に練習の鬼だよね。」
キラキラと輝く笑顔でいる樹だが、俺は練習でサンドバッグにされた記憶しかないので、あまり練習にはいい記憶がない。
本当にファンの女子たちに見せてやりたい。「この人チームメイトを痛めつけて楽しんでるんだ!」って言ってまわって幻想をぶち壊してやる!!!
…少し取り乱してしまった。とてもいい練習だった。
「次のCRICKETは透くんですよね?頼みましたよ!」
「……………行ってくる。」
透を送り出してから少しがャラリーが増えた。
トーナメントは全員が戦うわけではなく、闘っていないチームもある程度おり、女子チームも試合がまだないチームは透を見に来ていた。
「「透くんがんばってー!!」」
「今日もクールで決まってるよね…!」
後ろから黄色い声が聞こえる。
「……………申し訳ないね…よろしく。」
「いやいや!大丈夫や。こいつ持っとるけん!よろしくお願いしますー。」
ポケットから耳栓登場。まあファンの多いプレイヤー相手だからこそ、対策の一環で持っているようだ。
相手が理解ある人でよかった。
前のゲームの結果から、透は後攻だ。負けたチームが先攻で戦うルールになっている。
『STANDARD CRICKET GAME ON !』
『ROUND 1』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…シュッ『TRIPLE 5』
…ピー『SINGLE 20』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
…ビーピーピー『TRIPLE 19』
…ピー『SINGLE 19』
『 ※ ※ / 』
※ 20
19 ※
18
17
16
15
BULL
(B)司波 裕迅 20 (A)御影 透 76
BED狙いで僅かに外した。相変わらず安定したプレーだ。
「いやぁ噂通り強いのぉ…」
司波が呟く。しかし司波は不思議なことに、不利な場面にも関わらず、心地よさのような、気持ちの昂りを感じているようだ。
『ROUND 2』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…シュッ『SINGLE 3』
『 ※ ※ ― 』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
…シュッ『TRIPLE 1』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
『 ※ ― ※ 』
―※―20―※―
19 ※
18
17
16
15
BULL
(B)司波 裕迅 140 (A)御影 透 133
「うひぃーここで決めてくるんかぁ!」
合気道のように、相手に合わせて攻撃を仕掛けているので、ここまでくるといくらBクラスの腕でもお手上げらしい。しかし司波のミスに透がつけ込むことができず、やや試合はもつれた。
ROUND 3以降、やや19と18の打ち合いが続いたが、ROUND 6で透が魅せた。
『ROUND 6』
…ピー『SINGLE 18』
…シュッ『TRIPLE 4』
…ピー『SINGLE 18』
―※―20―※―
19 ※
※ 18
17
16
15
BULL
(B)司波 裕迅 284 (A)御影 透 342
「……………ふぅ…よし。」
透は気持ちを整えるように眼を瞑って深呼吸。そしてボードを改めてその目で見る。
儚げに見えるその瞳はターゲットを見据え、そして何万回と投げ込んできた緻密な感覚でダーツを放ち―――
…ピーピーピー『TRIPLE 18』
…ピーピーピー『TRIPLE 17』
…ピーピーピー『TRIPLE 16』
『WHITE HORSE』
「「「うわぁ!ナイスダーツ!」」」
「流石透くんー!!」
「きゃぁぁナイスダーツ!!」
チーム3人全員、思わず声が出た。女子からの声援もありかなり盛り上がっていた。
―※―20―※―
19 ※
―※―18―※―
17 ※
16 ※
15
BULL
(B)司波 裕迅 284 (A)御影 透 342
透は18、17、16のHORSE、そして15はSINGLEに確実に決め、そしてSINGLE BULL3本のHATでFINISH。
「いやぁ強いなぁほんま!ありがとうございましたぁ!」
「……………序盤は本当に危なかったよ。とにかく、お疲れ様でした。」
次のLEGを取れると1回戦突破だ。
試合後の透を3人で出迎える。
「いやぁさすがですね!そういえば先程新聞部員の方がお見えになってましたよ。注目されてますね。」
「透は相変わらず有名人だね!!」
「馬には流石に何回も見てるけど痺れた。」
あの決めた後のコクッと僅かに頷くのがクールに決まっていた。正直女子たちの声援を一身に受けていたのが妬ましく斬りかかりたいくらいだったが。
次の試合では俺と透のタッグでの501。
「……………それじゃあ行こうか。」
「…よしっ!それじゃあよろしく!」




