亀裂 Ⅴ
翔と透は仲直りできるのでしょうか、翔視点に戻り、続きです!
あれから数日。俺が悪かった、と謝ればいいのにその言葉が出てこない。お互いに意見が食い違って激突していた方が謝りやすい。
しかし今回は明らかに俺が自分勝手な言動で透を傷つけたわけだ。しかしどう謝ったらいいか自分でもよくわからない。
「……………とりあえず5試合くらいMATCHしない?」
「あ……うん。」
透がやけに冷静でこちらとしてはもうビクビク怯えっぱなしだ。何を言われても返事が上滑っている感じがしてそれもまた俺自身を不安にさせる。
「……………CORKしよ?とりあえずコイントスで先に投げるのは僕みたいだから投げるね。」
BULLに入るも際だ。俺はいつもならなんなく入れられるBULLだが、いつもと異なりまっすぐに手が出ない。
BULLを大きく外してSINGLEの12に刺さる。
『701 GAME ON !』
髪を分けて透が目線を上げ、ダーツを構え―――
「!!?」
…ピュン『SINGLE 16』
…バギュン『DOUBLE BULL』
…ピュン『SINGLE 19』
616
御影 透 616 八神 翔 701
腕を上げて構えたと思った途端テイクバックを大きくとってそのまま投げた。つまり腕を上げてそのまま肩に手を引いて腕を止めることなく投げたのだ。勿論そういう投げ方で入る人もいるかもしれないが俺にはとても理解できない。
一度構えたところでしっかりとターゲットを視認し、その上でどう腕を伸ばせば良いかを考えてスローする、それが普通の投げ方だ。ターゲットを見ても、ユーミングや直前の構えがなければ狙った部分に刺さらないのはいうまでもない。
まあ、透はかなりの精度で投げ込んでいるが。
これが実力者の透だからこその感覚なのか、はたまた試合には誘ったが勝負を放棄…?俺のことを見捨てて勝負なんてしてやるかという怒りの表れ…?
…ピュン『SINGLE 3』
…パシューン『BULL』
…ピュン『SINGLE 1』
647
御影 透 616 八神 翔 647
俺は自分なりには投げるものの違和感が抜けない。この前の試合からずっとこの調子だ。
その後も透は同じ投げ方を繰り返し、俺はそれに対するべく投げ込んだ。しかし―――
『ROUND 8』
…ピュン『SINGLE 16』
…ピュン『SINGLE 8』
…ピュン『DOUBLE 4』
『COOL!!』
0
御影 透 0 八神 翔 196
一呼吸置いて危なげなく上がる。
「……………ここ数日投げてないでしょ?…っていうかこの前の団体戦の練習試合から投げてないでしょ?」
ギクッ。
まあ流石にバレているか。あれ以降、ダーツを握るのが少し怖くなった。自分が自分で無くなるような感覚が消えず、ダーツを握ろうという意志を持てなかった。
透から図星を突かれ、どう返せばいいかわからず逡巡していると…
「……………ユーミングないからびっくりしたでしょ?それでもある程度はBULLに入る。腕を考えずに出す練習。翔も苦しんでるみたいだし…少しでも支えになりたいと思ってね。」
「…!」
気づいていたみたいだ。スランプに陥って調子が完全に狂っていることを。そして腕が上がらずにダーツをうまく上に飛ばせていないことまで見抜いていた。
と、感心している場合ではない。あの時いくら気が荒んでいたとはいえ透に当たっていいわけなかったし、かなり傷つけてしまったに違いない。
「本当にすまなかった!!自分が実力不足なのに…当たって本当にごめん!!」
今俺にできる最大の謝罪。とにかく謝ってチームのために貢献する、それしか俺の道は残されていない。
とは言っても、透にあれだけのことを言ってしまったのだ。チームに残ってくれる可能性も決して高いわけではない。
透から頭ごなしに色々と言われて、透がチームから脱退してしまうことも考えていた。
「……………いいよ!ほら、さっさと試合やろう?個人のクラス内リーグ戦も始まるし。翔にクラス落ちされちゃうと寂しいからさ。
あ!虹渡とか樹とかもこのあと練習に誘いたいんだけどいいよね?」
やっぱり透には敵わない。技術も、メンタルも、何もかもやっぱり足りないことを突きつけられる。でもそれが今は何故だか心地よかった。
「本当に…大きいな……」
「……………?」
目頭が熱くなる。
でもこれを見せたら透も戸惑うだろうか。樹はなんだかんだで察してくれても、虹渡は透が何かしたとか言いだしかねない。その光景が目に浮かぶ。
だから今は―――
「今日はとことん練習しないと!やってなかった分取り返したい!」
「今日は時間の許す限り付き合うよ。」
この今にも決壊しそうな感情の波を鎮めるべく、俺はダーツを投げるのだった。
透の器の大きさには感服させられますね!さて、次回からは少し閑話も挟みつつ、新人戦トーナメントについて書いていこうと思います!お楽しみに!!!
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ではまた。




