亀裂 Ⅲ
練習試合の続きです。
なんでだ…Aクラスなのに本当に不甲斐ない試合だった。俺らしい試合ができずに、しかもチームメイトまでも劣勢に立たせてしまった。
「本当に俺は…くそっ…」
嫌な思考が少しずつ心を蝕んでいく。調子が上がらないことなんて今までもあったというのに、切り替えられないことで自己嫌悪する悪循環。
個人戦ならば俺の調子が悪いですぐ割り切れるが団体戦となるとそうも行かない。
試合ならではの緊張感と、自身に無意識のうちに課していた重圧に、まだ1LEGしか戦っていないというのに心身共にかなり疲弊してしまっていた。
「……………どうしたの?」
「ん…あ、あぁ。大丈夫!次も頑張ろうぜ!」
次のゲームはDOUBLES STANDARD CRICKET。メンバーは俺と透だ。
「んじゃ頑張ろう!」
無理矢理テンションを上げているのは透はおそらく気づいているだろう。半ば自分自身に言い聞かせているというのも。
「……………うん。」
そういったものを全て理解した上で、透は余計な言葉をかけなかったのだ。
「…?何か言った?」
「……………いや、なんでもないよ。そう言えば作戦はどうする?」
「うーん…エリアをどんどん閉めてくるのはある意味嫌だからOPEN先行で行けるのが理想かな。」
「……………了解。」
相手チームは西園寺と有栖川が組むらしい。
『STANDARD CRICKET GAME ON!!』
さっきのLEGと先攻後攻を入れ替えての試合になる。後ろが西園寺と透のファンで少し賑やかになってきた。
「……………プレーで語らないとね。」
各NUMBERのTRIPLEに入れるイメージをはっきりと作り…スローに入る。
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…ピーピーピー『TRIPLE 18』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
『WHITE HORSE』
※ 20
※ 19
※ 18
17
16
15
BULL
御影 透 有栖川 実風
0 0
八神 翔 西園寺 昴
「「「うぉおお!!」」」
モニターに白馬が駆け、会場がどよめく。
こくりと透が頷く。これは自分の中で納得いくプレーができた時にしばしば見せるアクションだ。対する後攻の有栖川。
…ピー『SINGLE 17』
…シュッ『SINGLE 2』
…ピー『SINGLE 17』
※ 20
※ 19
※ 18
17 X
16
15
BULL
御影 透 有栖川 実風
0 0
八神 翔 西園寺 昴
「くっ………」
まずまずだが圧倒的に西園寺のチームは不利だ。しかし初心者にしてはしっかりと投げられている方だと思う。体の軸や関節に無駄がかなりあるが、初心者でもここまで伸ばしてくるとは、さすが西園寺だ。
互いに0点とはいえ、チーム“KNIT”の持つNUMBERは3つもある。20を閉められても19と18は残ってしまい、加点に繋げられてしまうわけで、1投目から加点されるのを防ぐ手段は再びWHITE HORSEを打つ他ない。西園寺がどう出るか注目だ。
『ROUND 2』
…ピー『SINGLE 17』
…シュッ『TRIPLE 3』
…シュッ『TRIPLE 2』
「……………どんまい!大丈夫!」
透の励ましも虚しくここで俺自身の何かの糸がプツンと途切れ、そのあとは総崩れ。
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…ピー『SINGLE 17』
…ピー『SINGLE 19』
『 ※ / / 』
―※―20―※―
※ 19 /
※ 18
17 ※
16
15
BULL
御影 透 有栖川 実風
0 0
八神 翔 西園寺 昴
少しずつ閉めて19と18へのCLOSEまで見せてプレッシャーをかけてくる。
―※―20―※―
※ 19 /
※ 18
/ 17 ※
16
15
BULL
御影 透 有栖川 実風
0 0
八神 翔 西園寺 昴
その後透が19、17、16で連続してTRIPLEに入れ、8MARK。かなり調子がいいらしい。それに対し、西園寺は15を敢えて開けておき、有栖川に繋ぐ作戦に出た。15の3MARK止まりとはいえ、次から加点できる圏内に相手も入ってきた。
『ROUND 4』
…ピー『SINGLE 15』
…シュッ『SINGLE 2』
…シュッ『TRIPLE 10』
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
…ピー『SINGLE 15』
…ピーピー『DOUBLE 19』
『 ※ / X 』
―※―20―※―
―※―19―※―
※ 18
―※―17―※―
※ 16
15 ※
BULL
御影 透 有栖川 実風
57 60
八神 翔 西園寺 昴
西園寺が冷静に15を決め、そして19を閉めてくる。まだかろうじて3点しかリードされていない分、こちらは15を閉めて18や16にSINGLEでも入れれば得点OVERができる。
しかしこんな有利な状況だというのに、俺はかつて感じたことのないプレッシャーを感じていた。
もう自分ではどうしようもできない。どんな風にグリップしても、ダーツを飛ばせるイメージを作ることができない。無理やり投げても思うように飛ばない。少しずつ自分の思考の全てが墨で塗りつぶされていくような、うねる波に少しずつ飲み込まれていくような、そんな感覚に陥る。
どこで間違った?
なんでこんなことになる?
自分の自信にひびが入り、瓦解する。
『ROUND 5』
…ピーピーピー『TRIPLE 18』
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
…バギュン『DOUBLE BULL』
『 ※ X X 』
―※―20―※―
―※―19―※―
※ 18
―※―17―※―
※ 16
―※―15―※―
X BULL
御影 透 有栖川 実風
57 60
八神 翔 西園寺 昴
「透すごい!!翔!あとBULL1本だよ!大丈夫大丈夫!!」
「本当に途轍もなく頼り甲斐がありますね…見ていて少し怖いですよ…でもいつかあのような美しいプレーがしてみたいです…!」
後ろのチームメイトの応援に、かろうじて際限のない負の思考のスパイラルに飲み込まれまいと踏ん張る。
相手の有栖川はBULLを入れられずに俺に回ってくる。
…シュッ『SINGLE 12』
軽く深呼吸。
…パシューン『SINGLE BULL』
『WINNER 御影 透 八神 翔』
「……………お疲れ様。」
「透ってすごいな。ごめんね…全然ダメで…俺いなくてもあっさり勝ててるじゃん…」
「……………そんなことないよ。正直翔が決めてくれると思ってるから頑張れた、みたいなところあるし…」
「っていいつつ実力アピール?やっぱり実力者は違うよ!俺みたいなお荷物に絡まれてなければもう少し楽に試合できたかもね。」
「……………っ!」
これ以降俺は透やチームメイトと一言も口をきかなかった。
いや、きけなかった。
完全にスランプに陥った翔とチームメイトの間に入った亀裂…この先どうなっていくのでしょうか?お楽しみに。
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