1話
自分が歪んでいるなんて分かっている。
しかし、それを今更変える必要は無いとも思っている。
結局俺は、変わらない。否、変われない。
仕事はとても優秀だ。しかし、周りから嫌われている。それはねじ曲がった性格故にだろう。
会社の嫌われ役だからか知らないがリストラ宣告も全て俺。
勿論、周りから恨まれていることも分かっている。
でも、それでも、もう変われないのだ。来るべき所まで来てしまったのだから。来月には三十歳になる。会社に務め始めてから時間が早く感じる。何故だろうか。
俺は、今日も定時通り仕事を終わらせ、駅のホームで電車が来るのを待っている。駅のホームに雨の音が鳴り響いている。しばらくすると電車が見えてきた。
電車が徐々に近づいてきている。俺は、危ないからと思い、一応黄色の線まで下がろうとした。しかし、次の瞬間、後ろに強い衝撃を感じた。
どうやら俺は、駅にいる人物に押し飛ばされてしまったようだ。しかも俺を押し飛ばした人物は、今日俺がリストラ宣告をした、社員だった。突き落とされ、地面に落ちる時間が何故か凄く長く感じる。
来世はあんなことしなくていい、自由な世界に生まれたい。そしたら、きっと優しい人間になれるはずだ。
(来世は絶対に優しい人間になってやる·····)
俺は、その願いを最後に身体が分裂するような痛みが走り、次に意識が暗転した。