本当の0(ゼロ)? って、なに…?
「ねえパパ。0って、<無い>って意味だよね。でもそこから更に数を引いてマイナスになるっておかしくない?」
ある時、いつものようにパパのお膝でゲームをしながら、最近、どうしても気になってることを訊いてみた。算数やってる時になんか気になっちゃったんだ。『無いものをさらに引く』ってなんなの?ってさ
するとパパは、すぐに答えてくれた。
「う~ん。何て言うか説明が難しいんだけど、マイナスっていう考えの時の0って本当の0じゃないんだよな」
「本当の0? って、なに…?」
パパの言ったことがピンと来なくて、そんな風に訊き返しちゃった。だけどパパはイライラしたりもしないで答えてくれる。
「たとえば、気温の<零度>ってあるだろ? 零度より気温が低くなるとマイナス何℃になるってやつ」
「うん。あるね」
「だけどあの場合の0って、本当の0じゃなくて、<水が凍る温度を摂氏零度とする>っていう意味だから、<無い>っていう意味じゃなくてあくまで<基準点>でしかないんだ。だからその基準点より下になったらマイナスになるっていうだけのことだよ」
「…あ、何となく分かる…かも」
「だろ? ちなみに絶対零度って呼ばれる摂氏マイナス273.15は、ケルビンっていう温度の単位では0で、これは本当に<温度が無い>っていう意味での0なんだ。だからケルビンではマイナスがない。温度が無い状態より低い温度は有り得ないからね」
「…ちょっと難しい」
「そっか。これは余談だったか。まあいいや。これについてはいずれまた勉強するだろうから置いといて、算数とかに出てくるマイナスにおける0っていうのは、<0(仮)>っていうことで取り敢えずいいと思うよ」
「分かった。気温の0より上か下かってことでいいんだね?」
「学者とかの専門家の人に言わせたら違うのかもしれないけど、僕達が日常で使う分にはそういう認識でいいんじゃないかな。
じゃあ、美智果、たとえば100を0(仮)とした場合の、98はマイナス何になる?」
「…マイナス2……?」
「その通り。ちゃんと分かってるみたいだね」
「ありがと、パパ」
「どういたしまして」
って感じで、パパは私の質問にちゃんと答えてくれる。分からないことは『分からない』って答えてくれる。メンドクサイからって『自分で考えろ!』とか言って突っぱねたりしない。だから私も、パパの言うことを聞こうって思えるんだ。
ただ、
「美智果は可愛いなあ」
とか言って抱き締めてこられると、
「もう、パパ、邪魔。ゲームできないよ」
って言うけどね。




