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12.「ワインレッドの想い出」「泣けぬ女」「熱視線」「偶然という必然」
「ワインレッドの想い出」
初めてルージュを買ったのは
忘れもしない十七の秋
制服姿の帰り道
吸い込まれるように
惹きつけられた
深い深い深紅色
けれど
何度ひいてもひきなおしても
どこかそぐわず、首を傾げた
その理由も
大人の女を必死に生きる
今ならわかる
濃い紅をひくにはあまりにも
肌は瑞々しく、若く
なによりその口唇のワインレッドで
キスを重ねるには幼過ぎたあの時代
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「泣ける夜」
泣きたい
泣きたい
泣いて溶けて
なくなってしまいたい
けれど
独りで泣くのは
惨め過ぎて
泣けぬ女が
今宵も一人
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「熱視線」
泣いてしまう
見つめられない
あなたの視線に
瞳、射られて……
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「偶然という必然」
私たちの出逢いは偶然だった
されど
惹かれあったのは必然だった