1-5
「・・・連れて行け。」
王は僕にもう一度視線を遣った後、誰も居ない空間へそう告げた。殺されるんだろうな、と内心呟いては、本当の両親と育ての両親の顔を思い出した。・・・僕の思い浮かべた
四人ではあったけれど、泣いてくれる人は一人もいなかった。
王の一言に、兵士の様な二人がこちらに向かってきた。特に抵抗するほど、生きたいとも思わなかった為、指示される通りに連れて行かれた部屋で立って待つことにした。しばらくすると、城門前まで連れて来てくれたジハード家に仕える男性が部屋へ入ってきた。
「シアン様、こちらに最低限の荷物をこちらに置いていきます。その他のものはまた別で送らせていただきます。・・・それでは、失礼いたします。」
・・・荷物?どうしていいのかも分からず、「あ、はい。」とだけ返事をした。それから、すぐに入れ替わる様に、黒のローブを来た大柄の男性が入ってきた。
「・・・シアン=ジハード殿。本日、軍への入隊が国王陛下より許可されました。今から、案内する寮で過ごしていただきます。」
「・・・分かり、ました。」
理解が追い付いていない頭をどうにか動かし、陛下からの許可で軍へということだけを頭に残し、自分の荷物を持つ。足早に部屋から出る黒のローブの男性の後を、おいて行かれない様に小走りで向かう。
案内された寮の部屋は、どうやら一人部屋らしかった。六歳の子供には勿体ないと思うのはおかしいだろうか?それより、軍では、新入りは雑魚寝するような部屋を与えられるということを聞いていた為、この部屋は間違いじゃないか、と声を掛けようと黒のローブの男性へと視線を向ける。
「あの・・・。」
「これは、ジハード家ということと、陛下からのお達しだ。・・・それに、お前のその潜在値では、新人どもが可哀想だ。」
少し困った様な笑みを零すこの黒のローブの男性は、「名前がまだだったな、クダンだ。宜しく頼む。」と僕の目線に合わせてしゃがんでくれた。
「シアン、です。宜しくお願い致します。」
“ジハード家”だから、か・・・。重いそれに、はぁ、と小さく溜息が零れた。
それから、戦闘部隊に配属されたことを知った。しばらくは、クダン隊長が教育係として、いろんなことを教えてくれるらしかった。
寮での生活や訓練方法など簡単なことから、現場に出る様になると、チームで連携しながら戦うことや戦闘時は計画を立てることが必須であること、常に冷静でいること、自分だけで対処をしないことなどを教えてくれた。