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顔を上げると、いつの間にか城に到着していたらしい。城で働く人々は、魔力が強いことはある程度、予想はしていた。城の至る所から感じる魔力に、戸惑いを感じつつも、一つ大きく禍々しい魔力を感じ、戸惑いの感情から恐怖に変わる。
城門前で迎えに来た近衛兵に「こちらです。」と案内を受けつつ、謁見の間に通された。城に通されたのは、僕一人だけだった。城門前で感じていた禍々しい魔力は、だんだんとこちらに近づいてきている。恐怖は更に膨らみ、身体の震えが止まらない。
止めないと止めないと、とギュッと右手で腕を掴み、爪を立てる。少しの痛みを感じると、恐怖に震える身体が止まってくれた。
それにホッと息を吐いたところで、重い扉がギシリと音を立てた。そちらに視線をやり、入ってきた人物に、バクリと胸が鳴る。治まっていた身体の震えがまた戻ってきた。恐怖からなのか、心臓をギュッと掴まれるような感覚に、どうしていいか分からず、一ヶ月前から教え込まれた通りの挨拶をすべく、右膝を地面に着き、上げろと言われるまで頭を下げたままにする。
謁見の間の中央にある玉座に座るのはただ一人。その人物は、明らかにこちらに視線を向け、眺めるというより、舐めるような視線で観察している様だった。我慢しないと、とギュッと目を瞑り、声がかかるのを待つ。その時間は数分だったが、長い時に感じられた。
「・・・上げろ。」
そう告げた声は、低く、何とも重い感じの声であったが、なんの感情も感じられなかった。掛けられた声に、顔を上げて従った。すると、ニヒルな笑みを浮かべたシン国、国王がそこにいた。
「名は、何言う。」
「・・・シ、シアン=ジハードと、申します・・・。」
「・・・嗚呼、そう言えば今日だったか。」
王はそうボソリと呟くと、玉座から降り、こちらに歩み寄ってくる。王が近づいてくる度に、恐怖が広がっていく。それを、無理矢理抑え込むが、身体の震えは止まらない。そんな僕の様子を見て、クッと小さく笑みを零していた。その小さな笑みにさえも、恐怖を感じる。ギッと奥歯を強く噛むと同時に、視線が強くなる。
それを睨まれたと感じた王は、無を崩し、怒りを面に出し、空を掴む様な動作をすると、その手には電気を帯びた何かが握ってあった。王はそれを槍の様な扱いで、こちらへ投げてよこした。強い雷を防ぐため、大理石で作られただろう床に手を着く。
『盾に・・・。』
あとは僕の思うように、思い浮かべるだけ大理石だったものは、僕を覆いかぶさるような壁が作られる。咄嗟に、防御と反撃を思い浮かべた為、作り出した防御壁から石の刃が作り出され、王へ向かって飛んでいく。それに対し、少し驚いた様子を見せた王は、すんなりと刃へ手を翳し、灰へ変えてしまった。その事に今度は、僕が目を見開き、驚きを隠すことが出来なかった。