表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

1-3


―――

リーダー…カスターと出会ったのは、ルリアン本部のあるウタ国に敵対する“シン国”に所属していて、傍にチュンしかいなかった頃だ。

 軍事力で大国lとなり、好戦的な王が治める“シン国”。僕にとっては母国で、家族の代わりでもあった。もちろん愛国心は持っていたし、…戦闘が日常にあることにも、疑問を持ったことがなかった…と言えば、嘘になる。だが、強い豊かな国が長く続く為には、必要なことだと分かっていた。


 そんなシン国では、三歳になると魔力の潜在値を量るというのが義務付けられている。…僕の潜在値は人の十倍以上…数値化できない、という結果だった。

 国としては、受け入れ…いや、大層喜ばれた。…反対に両親は喜ぶ、何てことはなく、「化け物。」とだけ呟いて、僕を捨てた。…国に引き渡す、という形で。


 引き取られて、六歳ぐらいまでは自分が恵まれているとも感じていた。いい家に新しい両親、全てが綺麗で華やかで、僕の自慢だった。それが偽物で、綺麗なものでも何でもないと分かったのは、ある日、街で買い物に出掛けた際、生みの親と会ってしまったからだ。

 生みの親の記憶はなかったが、写真を持っていた。国に引き取られた時に、持たされたものだった。

 両親には、僕の後に二人の子どもが生まれたらしかった。母の手には女の子が、父の手には男の子がいた。四人は笑いあって、僕の前を歩いていく。

 …“幸せ”というのは、ああいったことを指すのだろうと思った。僕は今の両親と一緒に歩いたり、手を繋いだことはあっただろうか?全く記憶にない。

 …それにあんな風に笑いあったことなんてない、暗い感情が胸に広がったと同時に、快晴の空に黒雲が覆い被さる。闇が辺り一面を覆った。

 それは僕の感情とリンクしているらしく、涙が頬を伝うと、同じ様に雨が降り始めた。

 本当の両親や周囲の人々は、慌てて店や家に駆け込む。僕の世話役も「シアン様、車の中へ!」と大声で僕を急かす。それが本当の両親の耳に届いたかは分からない。

 大雨の中、ボーッと立っている僕は目立っていたらしくs、二人の視線はこちらに向いていた。…そして、目を見開き、嫌悪の色を露にし、子ども二人を庇うようにして、お店へと消えた。

 …このときに捨てられた、ということが、胸にストンと降りた。そして、僕はめぐまれてなんていない。恵まれているのは、弟と妹…いや、男の子と女の子の方だった。


 このあと、どうやらその場で意識を失ってしまったらしく、朝起きると、そのあとの記憶は全くなかった。ボーッとする頭で思った。倒れた僕を心配してくれる、傍に居てくれる人なんていなかった。それから、今の両親荷は捨てられない様に努力した。


 …でも、それも必要がなかったことに気付くのは、二年後の八歳になって、国王陛下に挨拶に行く日だった。

 一ヶ月前から基本的な挨拶の仕方からみっちりと叩き込まれた。そんな様子を両親は満足気に見ていたのを覚えている。


「では、行って参ります。」


 当日は、そう声を掛けて家を出た。…その時に見送る両親の表情は、どこかホッとした様子だったのを強く覚えている。それにえ、邪魔だったんだなと、内心呟いたと同時に、胸にぽっかりと空いていた穴が広がった気がした。


 用意されていた馬車に乗り、王の住む城へ向かう。規則的に響く馬の足音に、耳を傾けながら、ふと思い出す。…本当の両親の驚いたような、恐怖の色が前面に出た表情を思い出し、少し気分が落ちる。それを首を振って払い落とすと、恐ろしくも感じる王への謁見に緊張を高めつつ、ふぅ、と小さく息を吐いた。

 

 六歳だからと言って失敗する何て許されない。それがジハード家のルールだ。“自分のことは自分で”と言われたのは、この家に来て間もない頃だ。そのせいだろう、子どもらしくない子どもに育った。メイドたちからも可愛いげない、と言われているのも気付いている。

 …そんな嫌な記憶に、またしても首を振って払い落とした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ