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1-1



 僕の頬を撫でる潮風に少し鬱陶しいと感じつつ、この街の中でも高い位置にある時計台から街全体を見下ろす。

 


「シアーン!見えたぁ?」



 間の抜けた声に少しうんざりしつつ、「嗚呼。」とだけ返事をした後、時計台の屋根から展望室へ飛び移る。



「どうだったぁ?…終わりそうな感じぃ?」



 彼は、預けていた僕の上着を差し出しながら、そう声を掛けてきた。



「…終わった。チュンはもう休んでていい。」



 そう返すと、彼…チュンは「そっかぁ。」と言って、僕の肩に手を置いた。

すると、見慣れた姿へ戻る。

ベースは白、羽の先はピンクに染まった綺麗なこの小鳥が、僕の相棒である。


 彼が僕の肩に乗ったことを確認するれば、目的地へ急ぐ為、時計台から飛び降りた。重力に逆らうことなく地面へ向かっていく為、ぐんっとスピードが加速していく。身体に纏わりつくような風に対し、人差し指を立て、クルリとえ小さく円を宙に描く。


 すると、地面にぶつかりそうであった身体は、ふわりと綿菓子の様に軽く浮かび、ゆっくりと着地した。


 ふぅ、と一つ息を吐くと、ざわざわと周りがうるさいことに気づき、目を向けた後、しまった、と後悔するが遅い。

またリーダーに怒られるなと、先程トは違う息を吐く。



『カスタァに怒られるねぇ。まぁ、オレェはぁ、飛ぶの好きだからぁ、いいけどねぇ。』



 「チュンチュン」としか周りには聞こえない相棒の言葉に、心の中で『うるさい。』と返すと、「チュチュッ」と短く鳴いた後、定位置である僕の肩に、羽休めに降り、丸くなった。


 今日の僕の任務は、行方不明になった女性の捜索、とシン国からの攻撃がないかの監視だ。捜索は、先ほど居場所を特定した為、それを報告すればいいだろう、と思いながら、「ルリアン」の本部へ足を進めた。


 二つ目は、敵国であるシン国の監視、これは常に課せられている。…僕のせいでもある為、眠っている時でも分かるよう、夜はチュンに頼んでいる。


―――


 僕たちの住む場所は、フルール地区にあるルリアン本部近くにある塔だ。

見晴らしがよく、チュンが「高いところの方がぁ、落ち着くよねぇ。」と言うのと、監視しやすくもあった為、ここに決めた。


 最初のうちは、僕も夜の見張りをしていたが、任務中に怪我をしたしまった日から変わった。特に大きな怪我ではなかったが、寝不足による集中力低下が原因だとチュンにバレてしまい、「オレェがぁ、するねぇ。」と言い始めたのだ。



『オレェはぁ、眠くなんないからぁ、だいじょーぶ、だいじょーぶ。』



 心配してくれているのは分かっていた。だが、ヘラリといつもの笑みを浮かべて言うチュンの目は、明らかに寂しいと語っていた。そんな相棒が心配で、結局、毎晩ギリギリまで傍に居る。


 チュンに寄り添う様にいる僕に、お休みとだけ言って笑うチュンを見ると、大丈夫か、と内心呟き、少しの安心と、同時に寂しさを感じる。…要は、互いに寂しがりやなんだな、と小さく苦笑が零れた。



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