命のやり取りの話
人は知らない世界で自分の知らない生物に襲われたらどんな反応をするのだろうか?どんな行動をとるのだろうか?これはたった1つの例。1人の少女が少女の知らない生物と対面する話。よく聞いておくように···
咲の前で白く光っていたものがおさまった。景色がよくわかる。
「森かぁー。」
そう、森だ。1面見渡す限り木しかない。
「あっそうだ。ステータスを確認しなきゃ。確か《ステータス》だよね。」
その瞬間、咲の目の前に水色の半透明の板が出てきた。此処にステータスが書かれている。
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名前:サキ サクラ
種族:人族
性別:女
LV:1
HP:10/10
MP:10/10
体力:35/35
攻撃:13
物防:104
魔力:18
魔防:68
速さ:41
賢さ:92
固有スキル:
スキル:
称号:
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「やっぱり、防御が一番高いか。」
前世の生活が反映されるだけあって日々暴力を受けていた咲の防御は強かった。
「HPと体力の違いは、生命力かスタミナかの違いって言ってたなぁー。」
「固有スキルやスキル、称号は持ってるけど教会に行って祈りを捧げないと見れないんだよなー。」
そう言いつつ、咲は1度周りを見回した。
「あった。」
咲は神が言っていた矢印の目印を見つけた。
「あっちね。」
咲は矢印を辿るように歩き始めた。
···しばらくすると近くの草が揺れた。そして1人の人が出てきた。
「あっこんにちは。」
「グギャグギャギャ。」
いや、人じゃないゴブリンだ。咲が初めて見る生物だ。咲の頭の中はどんな行動をとればいい、どうすればいいなどが蠢いていた。
「だ、大丈夫。まだ逃げれる。」
咲は逃げるという行動を選択した。何故ならゴブリンは剣を持っていた。だいぶ錆ているが、刃物は刃物だ。前世の記憶から逃れれず、《逃げる》という選択をしたのだ。
「大丈夫大丈夫···なんで?なんで足が動かないのよ!!」
咲は恐れたのだ。トラウマからの恐れが出たのだ。咲は前世の記憶がある限りトラウマからは逃れられない。段々息が荒くなっていく。呼吸がしづらくなっていく。
「ハァハァハァハァ···」
だが、まだ咲はほんの少しの希望を持っていた。敵は1体まだ逃げる大丈夫だと。
「よし、大丈夫、出来る。私なら出来る。」
その時であった。咲のほんの少しの希望が壊れたのは···
(ガサガサ)
「えっ嘘でしょ。」
ゴブリンがまだ居たのだ。しかも、囲むように。本来ならゴブリンはそこまで賢い魔物では無い。だだの偶然、いや、必然的なものだったのかもしれない。だが囲まれて逃げられないのは変わらない。
「嘘、嫌だ、嫌だ!嫌だ!!動いてよ!!私の足!!なんで!?なんで動かないの!?」
そんな咲の心の叫びは無慈悲なゴブリンには届かず、1歩また1歩と近づいてくる。そして、遂に······『咲は絶望した』
《絶望を確認。封印を解除。固有スキル拒絶を使用準備。完了。発動。》
明らかに不審な声が咲の頭に響いた。しかし、絶望して何も感じない咲の意識には届かなかった。咲の意識はただひたすらに何も出来なかった虚無感、覚悟を決めれなかった後悔、トラウマからきた強い絶望、そして何より死ぬことに対する強い拒絶が蠢いていた。なにも感じないぐらいに。それこそ周りのゴブリンが倒れたことすらも。
しばらくして感情の起伏に耐えられなくなった咲は地面に倒れた。
《敵対反応排除を確認。完了。封印を開始。完了。》
また不審な声が聞こえた。