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Name to
名前つけてやりなよ
真っ黒に塗りつぶされた顔のその人は、僕にそう提案した。
なにを偉そうに、と思ったが口にするほど世間知らずではない。
嫌だな、鬱陶しいな、と思う。
面倒なことは全部押し付けておきながら口出しをする。
一番嫌いな人種。
いや、そもそも好きな人間などいた試しがないけれど。
名前をつけて、たくさん呼んであげて
代わりに付けてくださいよ。と僕は答えた。
正直な所すべてが面倒臭かった。
しかし、その人は首を振った。
駄目だ、と。
いよいよ面倒な人だと思った。
どんな名前でもいいから君が付けて。
そうすれば、きっと君は可愛がる。
この子をちゃんと好きになる。
だから名前を付けて、とその人はもう一度言った。