私の兄がこんなに腐っているわけがない

ある日、ふと学校帰りに立ち寄った本屋さんで『５分で分かる！　兄の生態！』という本を見つけた。

気になって少しだけ読んでみると、『お兄さんは見られくないものをベットの下に隠しています』と書いてあった。

……気になる。

「ただいまー」

「おかえりー、今日は遅かったね」

家に帰ると満面の笑みで兄が出迎えてくれた。

「うん、ちょっと寄り道してたの。お兄ちゃんこそ早いんだね」

「今日は部活休みだったからね、寄り道するのはいいけどあんまり遅くなったら駄目だぞ？」

「分かってるって」

「偉い偉い。俺ちょっとコンビニ行ってくるけどなんかいる？お菓子とか……」

「んーん、いい。それにあんまり妹を甘やかしちゃ駄目でしょ」

「お前からそんな言葉が聞けるなんて……」

「いつまでも子供扱いしないでよね！」

思わず思いっきり兄の足を踏みつけた。

「悪かったって、じゃ行ってくる」

「行ってらっしゃーい」

兄は優しく私の頭を撫でるとなぜか嬉しそうに笑いながらドアを開けて出て行った。

自室に鞄を置き着替えると、私は兄の部屋の前に立った。

目的はもちろん今日見た本に書いてあった事を調べるため。

扉に鍵を掛かっていない。

思い切ってドアノブに手をかけてから逡巡した。

やはり妹といえど兄の部屋に勝手に入るというのは如何なものだろうか……

ああ、でも早く調べないと帰ってきてしまうし……それに……

「兄の事を調べるのは、妹の義務だよね！！」

ドアを開け放つと視界に飛び込んでくるのは普通の光景。

ベットに机にぬいぐるみに制服に楽譜……そっか、高校では陸上やってないんだっけ……昔は陸上やってるお兄ちゃんのほうがかっこよかったんだけど最近では今のお兄ちゃんもかっこいいとか思ってたりする。

ふと机の上を見ると、積み上げられた何冊かの本が崩れそうになっていた。

なんとなく気になって表紙を見る。

妹もののマンガ（Ｒ－１８指定）

お兄ちゃん……っ！　どうして机の上に堂々と置いちゃうの……！？

せめてブックカバーぐらいかけようよっ……！

見なかったことにして、そっと一番上の本をひっくり返した。

ちょいちょい女子力高いものを見つけつつ本命のベットのもとに辿り着く。

「もう何がきても驚かないんだからね……！」

気合いを入れてそっとベットの下に手を入れた。

指先に触れる紙の感触。形状からして恐らく本と思われる。

多分男の人なら必ず隠し持ってるって聞くあの本かな……？

そんな本を持ってるっていうのはちょっとショックだけど、普通だよね。

しっかりと心構えをしてから一息に取りだす。

ホモ漫画（Ｒ－１８指定）

「私もうお兄ちゃんが分からないっ！！」

心構え空しく思わず叫んだ。

どうしたの！？　一体お兄ちゃんはどこに向かっているの！？　そしてやっぱりブックカバー掛かってないの！？

もう少し奥まで探るとまだあることが分かる。

「お願いだからえっちい本でありますように……！」

願っていること自体がおかしいのは分かっているけど願わずにはいられなかった。

掴めるだけ掴んで思い切ってベットの下から取り出す。

ホモ漫画（Ｒ－１８指定）×５

「別の意味でえっちい本だよっ！　私が望んてた本と違うよっ！！」

これ以上ベットの下を調べたくなかった。

「何やってるの？」

「ぅえっ！？　お、お兄ちゃん！？」

いつの間にか部屋の入口に兄が立っていた。

「いや……これは……その……お兄ちゃんの部屋が、見たく、て……」

恐る恐る兄の顔色を窺いながら呟く。怒られるよね……でもまだ兄は私があの漫画を見つけたと気付いていないらしい。

ならきっと慌てて私をベットの前から動かして部屋を追い出そうとするに違いな――

「なんだ、それなら言ってくれればいつでも入れてあげたのに」

せめて動揺して！？　隠してること自体忘れてるの！？

それともこれは別の家族の誰かが入れたとか……？　それなら慌てないのにも納得がいく。

ええいっ！　思い切って聞いちゃえ！

「ねえお兄ちゃん、この本なんだけど……」

「あ、それ？　もしかして俺床に置きっぱしてた？　確かベットの下に入れてたと思うんだけど……」

兄のでした。

「もしかして本棚のほう？」

まだ持ってるみたいです。

「それとも……」

「もういいからっ！　何も言わないで！」

思わず叫んでから、思わず呟いた。

「私の兄がこんなに腐っているわけがない」

---

思わず書いちゃった第二段ｗｗ

オチがありきたりになっちゃったかなーとちょっぴり後悔。

ご感想お待ちしております！！