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1章02 アリスと閃光

――――――――――――――――――――――――

〈2枚目の紙〉

さてと、帰ってきたが君はまだ寝ているようだ。街は魔物で溢れてるからそろそろ起きて物理行使ならぬ魔法行使してほしいのだが。

今記した通り街に魔物の群れが襲撃に来たようだ。

君を逃がすことはおそらくできない。

もちろんお前を肉壁にするつもりなんて無いしそしたら封書を書く意味も無い。

逃げるなんてことをしようものなら私も君もあの世行きだろう。


だから今街の魔法使いが大量の結界魔法をこの建物にかけた。中からは出れるが外からは入れないし壊せない。

そして市長の役目もあり私は避難誘導をしなくてはならない。


生きてたら、また会おう。

そして、今後私が死んだのなら、君が死ぬまで何も言えなくなる為最後に言おう。


私は君のことが異性として好きだ。

………おっと、告白してこれで終わりそうな雰囲気だったが少し言い忘れていたことがあった。

まず君はおそらく魔王に一度殺された。君の遺体は見つかったが勇者達の遺体はまだ見つかっていない。

そしてもう彼らのことは諦めるが吉だ。

君の遺体が発見された時君は木っ端微塵で残っていたのは真っ二つになった生首だけだった。蘇生には成功したがそれ故代償で記憶が無くなる可能性が高い。何故かといえば簡単な話だ。人は50%未満の死体しか残ってないと蘇生は出来ないとされるから。更には君が蘇生されてから1年近く昏睡状態だ。


そしてこの大陸は君を除く勇者一行が行方不明になったが故に魔王に支配された。


君を責めるつもりはない。そして、この街全員からの願いだ。


もしも君が目覚めたのなら、そのまま逃げてくれ。他の大陸まで逃げれば君は一生安全だろう。


では、神に願う事とする。生きて目が覚めた君と会いたい。その時は告白の返事をお願いしたい。


さようなら。そして、ありがとう

――――――――――――――――――――――――

読み終えた。


「……」


しばらくのあいだ、■は何も言えなかった。

口を開こうとしても、喉の奥に何かが引っかかったように声が出ない。

紙を持つ手も、ほんのわずかに震えていた。


魔物の襲撃。

突然の告白。


そして――■は、おそらく魔王に殺されたという事実。


頭の中で言葉だけがぐるぐると回る。

理解しようとしているのに、思考が追いつかない。


「……情報量、多すぎない?」


ぽつりと、小さく呟いた。

■はとりあえず、手に持っていた紙を机の上に置いた。

それは、告白魔――いや、市長が書いた二枚目の手紙だ。

改めて見ると、文字は整っているのに、内容だけがやけに重い。


「結界……魔物、魔王ってなんなんだろ」


声に出してみても、やはり実感が湧かない。

■■でも驚くくらい、言葉の意味がぼやけている。

単語としては理解できる。

しかし、そこにあるはずの現実感が、まるで霧の中にあるみたいに掴めない。

記憶が無いせいだろうか。

大事そうな言葉のはずなのに、どこか他人事のように聞こえる。

一枚目の手紙には、こう書いてあった。


【読めるなら安心してくれ】


■はその一文を、もう一度思い出す。

確かに、文字は読める。

文章の意味も理解できる。

つまり、知識は残っているらしい。

それは間違いない。

……でも。


「理解が、追いつかない……」


小さく息を吐いた。

頭の中が整理できない。

考えれば考えるほど、むしろ混乱が広がっていく。


だが――


とりあえず、今一番の問題がまだ残っていた。

■はゆっくりと体を起こす。

途端に、体の重さを実感した。

まるで長い眠りから無理やり起き上がったような感覚だ。

足元はふらついている。

それでも、壁に軽く手をつきながら歩く。

一歩、また一歩と、慎重に足を運ぶ。

やがて、カーテンの前まで辿り着いた。

厚い布が、外の景色を完全に遮っている。

■はその前で、少しだけ立ち止まった。

胸の奥が、妙にざわついている。

理由はわからない。

けれど、開けたら何かが起きる気がした。

それでも――

■はカーテンを掴み、ゆっくりと開いた。

そして。


__後悔した。

目の前に広がっていたのは、地獄だった。

街は、火の海だった。

赤い炎が至るところで燃え上がり、黒い煙が空を覆っている。

建物は崩れ、道には瓦礫が散乱していた。


そして。

異形の存在。

たぶん、手紙にあった【まもの】。


人の形をしているものもいれば、獣のようなものもいる。

腕が異様に長いもの、体が歪に膨れ上がったもの。

それらが、人間を襲っていた。

人々は必死に逃げている。


誰かが叫ぶ。

誰かが転ぶ。

誰かが助けを求める。


叫び声。

炎の音。

崩れる建物の轟音。


すべてが混ざり合い、街全体が悲鳴を上げているようだった。


「…ッ!!」


思わず息を呑む。

その瞬間、頭の中で仮定と結論が同時に浮かんだ。


__今すぐ助けなくちゃ。


考えるよりも先に、答えが出ていた。

この街から逃げるのに、何日もかかるとは思えない。

人々がまだ逃げているということは、

魔物の襲撃は、ついさっき始まったばかりのはずだ。


_つまり。


この手紙を書いたであろう、あの告白魔市長も――

まだ生きている可能性が高い。

胸の奥で、何かが強く動いた。


__なら、助けるだけだ。


迷いはなかった。

それはきっと、■のルールみたいなものなんだと思う。

理由なんてわからない。

記憶があっても。

無くても。


それだけは、変わらない。


助けられるなら、助ける。


ただ、それだけだ。


行かなければならないと決めた。行動はすぐにしなければならない。相手が告白魔だろうが、することは記憶がある頃と変わらない。

__あの呪いのような文字を服に刻んだ変態、呪服師だろうがする事は変わらない。


ベッドから立ち上がり前を見ると、それがあることに気づく。

■は意思を固め、恐怖の呪いの文字が刻まれた服を投げ捨てた。


さすがに■はシャツ姿でダラダラするおじさんではない。すぐに前方にあった、記憶があった頃に着ていたのであろう魔女っ子が着そうな桃色の服と水色の帽子__否、実際の話、魔王に生首の2分の1カットにされていたはずだ。だから服も破れていた事もまた確証のようなもの。


つまりこれは■が着ていた服ではなく、レプリカか、ここにいるであろう捨てられた服を作った呪服師が作ったものだと仮定する。


■は服をパサッと広げ、即座に着る。役に立つのかは分からないが、魔女の帽子らしきものも頭に被り__


「ていやぁぁぁぁ」


【15時6分】

時計を確認したあと、簡潔に言うと■は暴挙に出た。


誰が言おうがそれは馬鹿げた行為だ。■はおそらく建物の10階であろう部屋にいた。そんな部屋の窓から1階へ飛び降りる。もちろん飛び降りようものなら、一般的には2階から落ちれば骨折、3階以上から落ちれば基本死ぬ。というか死なない場合は■は人では無いともなる。


つまり10階から飛び降りるなんて暴挙に+αを加えたようなもので__刹那のことだった。


「風の微精霊よ!とりあえず集まってください!!風魔法!クッション!………ウィンドウォール!!!」


咄嗟に思いついた魔法。無演唱は記憶が無い為多分無理、ほぼ無い話だがあの手紙が嘘だった場合も、使えない。一応2つの可能性を同時に考えるのは大変だから■は記憶喪失だから使えないであろう理論を仮定に置く。


■は記憶喪失故に無演唱で魔法を放つとかは絶対にできない。だから、とにかく手紙にあった2つの演唱(典型文なんて分からないため適当)を即座に唱え__


「ビェァァァァァァァァァァァ」


悲鳴の通り、失敗だ。


【ウィンドウォール】

■は風をクッションにして少し浮いた状態で着地しようとした。だが魔法を放つのに使うとされる微精霊たちはこう判断した。


()()()()()()()()()()()()()()


そう考えたのだろう。


だからか理不尽にも■は1階に新たに設置されたトラップ【ウィンドウォール】で吹き飛ばされ、10階を越え屋上まで飛び__そして飛んだら落ちるまでが物理法則である以上、恐るべきスピードで地面が近づいていく。


「み、水の微精霊よ!!とにかく集まって!勘違いしないように言うけど水を地面に敷く感じ!ウォーター!!」


■は風魔法を放とうとするが、あの悲惨な事態はもう味わいたくない。水魔法を使用するにしろ、どこかのウィンドウォールみたいに悲劇__例えば建物を覆うくらいの水を出されたりとか__そんなことにならないよう、演唱と共に説明をして__


瞬時。


鈍い音が地面に響いた。__演唱をする場合連続使用は至難の技だった。


身体全身から血が流れ、■は地面の硬い感触を味わう。口に鉄の味が広がり、即座に浮かんだのは


【死】

【生きたい】


その2つだけだった。



さて、少女は知らないがこの世界では、死というものが完全な終わりとは限らない。だがそれは決して安全という意味ではない。


生命は死ぬと、まず1日は【初死状態】になる。

この状態では100%教会で蘇生が可能だ。


だがそこからが問題。

2〜5日目は【瀕死状態】。

生存率は60%。


そして6日目__完全な死。

生存率0%。


だがそれ以前に問題がある。


「あ゛ぁぁぁぁ!!!ぎぇ、あ゛ぁぁぁぁ、までぁぁぁぁぁ」


魔物だ。


魔物は歯が命。だから歯が折れないよう、柔らかい肉を好む。

つまり、まだ死後硬直していない■の身体は__


_ミディアムレアの食事。

魔物はそれに喰らいつく。

死体がなくなれば、蘇生はできない。


それがこの世界の現実だ。


__こうして■の人生は幕を閉じた。




__ただ、白い空間。


何もない場所を■は彷徨っている。

名前は■■■。市長の手紙を読み、窓の外を眺め、戦いの時刻と同時だと判断して飛び降りた。そして魔法に失敗し、落下し、魔物に喰われて死んだ。


【帰れ】


聞いたことのある無機質な声が空間に響く。


『………』


帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ


         【知れ】


「………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


目を覚ます。


最初に目に入ったのは真っ白な天井。

寝ていた記憶はない。あるのは魔物に噛みつかれた感触だけ。


助けられたのかと思い、■は顔を傾ける。

カーテン、その下の白い机、そして__


「手紙………」


そこにあったのは封書。


開こうとして気づく。

蝋で封がされている。


■は一度これを開けたはずだ。

なのに閉じている。


別の手紙かもしれない。そう思い、蝋を割り紙を取り出す。


そこに書かれていた。


〈一枚目の紙〉

さて、この書を読んでいる君に記憶があったのならばこの書は必要が無いだろう。


■は読むのをやめた。

すぐに手紙を閉じる。


記憶がある。だから読む必要はない。


そして■は理解する。


「死に戻り……」


白い空間で確かに言われた。

【知れ】


それがこれなら、これは


Mission1【隠されし能力を知れ】


■は■の能力を【死に戻り】だと仮定する。

死ぬことで時間が戻る能力。


「とてもチートな能力者が私、になるのか」


そう思い、思わず顔がほころぶ。


そして時計を見る。

15時16分。前回の死の10分後だ。


市長を救おうとした、その瞬間__


「!?」


カーテンの先に円形の光。


刹那。


白い閃光が■の身体を木っ端微塵に破壊した。




再び白い空間。


■はもう彷徨わない。

立ち止まる。


名前はアリス。

死に戻りに気づき、慢心し、そして殺された。


【帰れ】


また声が響く。


『貴方は、誰なの?』

『ねぇ!貴方は___』


全ての空気が凍る。


体が動かない。声も出せない。

足音だけが近づく。


背後で止まり、頬に触れられる。


不思議と安心感があった。


         【忘れろ】

         【見つけろ】


         【すまん】


「………!?」


目覚める。いつも通りの真っ白な天井。いつも通りのベッドの感触。


白い閃光。

撃たれた方向は分からない。


何かを言おうとしていた気がする。

だが思い出せない。


覚えているのは2つの言葉_


【見つけろ】

【すまん】


その言葉から、■は一つの結論を出す。


Mission2

【白い閃光を撃った者を見つけろ】


そしてこれは最初のステージにして最初の戦場、この闘いに名を付けるなら__


【15時16分の闘い】


そう、15時16分の闘いはもう、始まっていた。


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