第0話:李俊轩
1995年8月6日、これは新宿歌舞伎町のとあるラブホテルの一室での出来事…。
真夏の輝きがピークを迎えようとした時にソレは起こった。
「あっ…あぁ!イイ!そこっ……あぁん!」
「はぁ、はぁ、もう出るっ……!」
ギシギシとベットのスプリングの音と共に両者の喘ぎ声が部屋に響き渡る。
そして男は絶頂した。
男性器を女性器から抜くと溢れてくる、小さな泡が立った白濁液。
襲いくる射精後の倦怠感。
萎む男性器。
だが男は止まらなかった。
「おいっ早く咥えて勃たせろ!早く!」
「ちょっ、ちょっと私まだイケてないんだからねっ」
「うるさいっ!黙って咥えろっ!!」
「グフッ!」
男は焦っていた。
まるで何かから追われているかの様に。
「チッ、もっと舌動かせよー!」
「…………」
女は苛立っていた。
なんで自分だけ満足しているんだ、なんで私はこんな男の言いなりになっているのだと…。
だが男はそれ以上に苛立っていた。
「あー!もう下手くそ!」
(ガッ)と男は女の頭を鷲掴みし、乱暴に女の頭を振った。
「ぐっ…オエッ」
喉の奥に亀頭の先が当たる。
女は嗚咽する。
そして粘液性の強い唾液が胃から上ってくる。
男の性器は満足したかの様に硬くなった。
「よしっ、じゃあケツこっち向けろ」
女は渋々と尻を男の顔の方へと持っていく。
「いい子だ……それにしてもヤリマン癖に綺麗なまんこだな」
「うっさいわね、あんただってジジイの癖にチン毛剃ってんじゃないわよ」
「俺はまだ31だ!」
男はジジイ呼ばわりが気に食わなかったのか、女の陰核に齧り付いた。
「キャアァァア!!」
女は叫び、ベットに沈み込む。
痛みと少しの快感を感じながら。
「ちょっ、やめてよ!」
「………」
男は黙ったまま、陰核を齧り舐め続けた。
「ちょっ、ほんとに……ダメっ……イクっ!」
女は絶頂した。
絶頂時に出た愛液が男の顔にかかった。
粘液と尿が混じった少し塩っぱい液体…。
すると、(ガリっ)と肉が千切れる音がした。
「痛っ…」
女は自身に襲いかかった激痛の正体を確認しようと男の方へと振り返る。
そして振り返った先に居たのは……自身の陰核を舌の上で転がし、不適な笑みを浮かべた男だった。
(コロコロ…チュパチュパ…チュウチュウ…)
自分の一部が男の口内で不快な音を立てている。
「いやぁぁぁああ!!」
女は叫んだ。思いきり。
「なっ何でッ……誰か助け……」
「ごめんなぁ…俺さぁ…女のクリ噛みちぎるの大好きなんだよ」
男の性器は先程よりも大きく凛々しく脈をうっていた。
この男が言っている事は事実なのだと理解できる。
(チュパチュパ…………ごっくん)
「あ゛ー…ご馳走様でしたー」
女の陰核は男の食道を通り、胃の中で男が先程居酒屋で食べたレバニラと混ざり合った。
「いっ、嫌!何なのあんた!絶対許さない!彼氏に言って殺してもらうから!」
その時!
女は男の逆鱗に触れてしまった!
「………おい、今『殺す』って言ったか?」
「えぇ言ったわよ!私の彼氏、ヤクザの先輩と仲良いんだから!アンタを殺すのなんてすぐよ!」
「あっあぁ……あぁぁぁあああー…ぁあああ!」
男は頭を抱えたままうずくまった。
まるで、その姿はイジメを受ける子供の様だった。
「あぁダメだ!ダメだよ!……ママっ!ダメだよ!ママー!!!…………」
男は本当の子供の様に母を叫び続けた。
うずくまる男は全身震えていた。
「なっなんなのよ……イミフなんだけど、キモいわね」
「うわぁぁぁあああ!!」
「えっ?」
男は女に飛びつき、女の両の手首を押さえつけベットに押し倒した。
女は抵抗した、全身を唸らせ、足をバタつかせた。
だが女の抵抗は虚しく、男はただじっと女を見つめていた。
「っ……なっなによ!」
「うぅっ……ごめんママ、ごめんなさい」
「キモいのよ!はなせ!」
「うぅっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「ッー…謝るならっはなせ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいー!!!」
男は自身の頭を女の頭に(ゴンっ)と叩きつけた。まるで土下座でもしているかの様に。
そして。しだいに女の額は紅くなる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいー…!」
(ゴンゴンゴンッ!)
男の『ごめんなさい』の数だけ女の額に衝撃が走った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
6回目の頭突きで女の額から血が滲んできた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃ!…………」
それから男の訳の分からない謝罪は1時間続いた。
頭突きが終わった後の女の額は、肉が剥がれ、頭蓋骨が露出し、ヒビから脳汁が溢れていたという……。
当然女は絶命し、帰らぬ人となった。
享年は17歳だった。
「うぅっ……イクッ!」
男は最後に死体の中に証拠を膣内に残して部屋を出て行った。
部屋の料金は8000円だった。
15分後、当ラブホテルの清掃員の発見により事件が発覚した。
警察は殺人事件と断定し調査を始めた。
幸い防犯カメラには犯人の男の顔がしっかりと映っていた。
警察はこの映像から犯人を特定した。
調べたところ、犯人の名前は[李 俊轩]。近頃、歌舞伎町で行われているビル工事をしている在日中国人だった。
警察はすぐさま男は逮捕した。
男の過去を調べてみると他にも同じ様な事を起こしていた事がわかった。
事情聴取で男は言った。
「だって仕方ないじゃん、母国じゃあんな事出来ない。最近じゃ監視カメラが増え続けて更にやりづらくなった。だから日本に来た。
日本はまだカメラ少ないからバレないと思った。
人を殺したのは初めてだ。
案外悪くなかった。
10年そこらの刑期が終わってシャバに出たらまた女殺したいよ」
これから始まるのはこの男が出所してからの物語。