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よくある婚約破棄物の物語に悪役令嬢として転生した私が無事エンディングを迎えられた理由

作者: くりゅ~ぐ


終わった……。


何事も無く、無事卒業パーティーを終える事が出来た……。

婚約破棄等の騒動も無く、私は無事乗り切る事が出来たんだ。


私は転生者で、何百回と小説やアニメで使われた設定でもあり、最早テンプレの殿堂入りしたと言っても過言では無い悪役令嬢婚約破棄物、それに転生してしまっていた。


親の顔より見ただとか、お手軽簡単に使われる乙女ゲーム系の王道でもある、悪役令嬢婚約破棄物に転生するというベッタベタな事にまさか自分が、私が転生するなんて気付いた時には渇いた笑いが出たのは仕方ないだろう。

それとて自分の中では今や笑い話になっているが、初めてそうだと気付いた時には笑うしかなかったなぁ……。


でも婚約破棄の舞台でもある、学園の卒業パーティーの直前に気付くよりはマシなんだろうけど。

本当に本当に本~当に! 気付いたのが学園に入学する日で良かったと思う。


もし、もしも断罪寸前であったならシャレにならない所だったと思う、何故なら私では、そんな絶体絶命の状態からの大逆転なんて出来ないのだから。そう考えれば私はまだ運が良かったのだろうと思う。


さて、この世界が何百回と観たし読んだりされている、テンプレ王道の乙女ゲーム系であり、姉や妹が遊び、そして観て読んでいた世界だと気付いた私であるが、私も姉と妹に勧められ、いや、あれは新興宗教の勧誘のごとく勧められ、そして触れる事になった訳だけど、今にして思えば姉と妹よ、本当にありがとう。なので私の買って来たタルトタタンを勝手に食べてくれちゃった件は許そうではないか。


お陰様で大変助かったよ。しかもこの世界の事を聞いてもいないのに、延々と語ってくれた事も私がこの世界で生きて行く事の助けになったし、勝手に食べてくれちゃったタルトタタンの件は許す。ただし私がニ時間並んで買ったフルーツたっぷりロールケーキ一本丸々と、三時間半並んで買ったガトーショコラのホールを二人で勝手に食い散らかした件は許さない。家族で食べようと思って買って来たのに……。

そう言えばやけ酒ならぬ、やけケーキをしようと思って買って来たザッハトルテのホールを二人で食べられた事もあったっけ?


そんなんだから二人共彼氏が居ないんだし、年齢=彼氏居ない歴なんだよって言って泣かせたなぁ……。やられたらやり返す。精神攻撃は姉妹喧嘩の基本だ。とは言えもう二度と姉妹喧嘩は出来ないんだけど……。


とまぁそれは良い。それよりヒロインだ。

私が前世の記憶を思い出し、そしてヒロインの事を、足取りを調べた件がやっと分かった。違うか? 終わったと言うべきか。


何故かヒロインがこの学園に入学して来なく、更に足取りが消え、もしやヒロインも転生者かと思ったがどうやら半分正解、半分ハズレだったらしい。


ヒロインはこの学園に特待生で、そして平民として入学が決まっていた。だけど結局は入学はせず、入学前に消えた。私はヒロインが転生者でチートを使い冒険者になるか、前世の知識を使い商品を開発でもして大儲けでもしようと思っていたが、ヒロインの名どころか存在自体を完全に消しており、人の居ない僻地でスローライフでもしようと思ってるのかと思ったが、それにしてはどれだけ調べさせても足取りが掴めなかった。


学園に入学していないからと安心し、ヒロインを放置出来る程に私はおめでたい頭をしていない。少なくとも居場所やこの世界におけるヒロインの目的や、立ち位置を知っておきたかった。出来ればヒロインの考えもだ。


もし私と敵対するつもりも、逆ハー狙いの脳内お花畑のおバカちゃんでは無いのなら、手を組むとは言わないが、住み分けは出来る。私そう思って、自分自身の安全とこの身を守る為に密かに調べさせていたのだが、やっとヒロインの居場所を掴んだ。

分かる訳が無い。隣国どころか、四つも離れた国に居たのだから。居たのは神殿の療養所、しかも精神を病み、神殿の療養所の中でも厳重に隔離されている精神病棟的な所に居た。


精神を病んだ者にもランクがあり、軽い者なら拘束される事も無く、穏やかに過ごし暮らす事が出来る。だけどヒロインが居るのは完全に隔離され、厳重に監視された場所だ。


四つ向こうのその国は宗教国家であり、この世界の主神でもある女神を奉る国で、女神教の総本山であり、病人を受け入れる国でもある。


はい、ヒロインさんそこのお世話になっていました。


ヒロインは生まれ故郷でもある我が国の孤児院出身で、成人である十三歳迄その孤児院で育ち、成人後はお勉強しつつ院の運営のお手伝いをしその院で生活しながら卒園後も生活して居た。 役職的には、孤児院運営の助手をしていた訳だけど、ヒロインは学園に入学し、卒業後は良い所に就職して自分が育った孤児院に援助したいと言ってたらしい。


これはあのゲームの設定と一致する。だからおかしい事は一切無い。だけどヒロインが学園に学費無料、学園に在学中の生活費諸々援助される特待生に合格してからおかしくなる。


正確に言えば、学園に特待生としての合格通知が届いてからヒロインがおかしくなった。


これは調べさせた者からの調査報告からだけど、調査させていた者いわく、学園への合格通知が届いた時にヒロインは、いきなり倒れて三日間意識が無くなったらしい。


合格にかなり喜んでいたらしく、周りに居た者達も嬉しさのあまり倒れたのだろうと思ったそうだ。

とは言え三日間も意識が戻らなかった為、周りは心配もした。だけど倒れてから三日後、ヒロインは意識を取り戻す。

でも倒れる前と意識を取り戻してから、ヒロインは明らかに変わったらしい。


何時もニコニコと花が咲く様な笑顔で居たけど、意識を取り戻してからは一切笑わなくなった。そして暗い顔でブツブツと独り言を言う様になったそうだ。

そしてヒロインだとか、逆ハーとか、乙女ゲーだの、そんなのは嫌であったり、そんな事はしたくないとかの独り言を言う様になった。

しかも独り言にしては誰かと話している様な、それでいて説得する様な様子でブツブツと独り言を言ってたらしい。


そしてヒロインは誰も周りに居ないのに、出ていってと、叫んだりし始める。

最初はやや離れた場所や、遠くに居た者に言っているのかと思ったけど、違うらしいというのは周りも気付いた。そうなれば院に居た者達はヒロインを心配し始める。当然だ。ヒロインは院の皆に愛されていたのだから。


だけどヒロインは周りの者に何を言われても、大丈夫としか言わない。だけどその内に独り言を言う頻度が増え、声も少しずつ大きくなっていく。


ヒロインの言う内容は同じだ。

「ヒロイン」

「乙女ゲー」

「逆ハー」

「そんなのは嫌、そんな事はしたくない」

「早く私から出て行って」 等々。


これに関しては、ヒロインが四つ向こうの国に居る事が分かり、その事を院に居る人達に伝えて初めて分かった。

何故隠していたかと言うと、ヒロインの事を守る為だったらしい。

そんな訳の分からない事を言っているのがバレちゃうと、学園の入学を取り消しされるかも知れないし、ヒロインの将来に悪影響を与えるだろうと思い箝口令を敷いたと……。


私に言わせれば、学園に入学せず、失踪した段階で言ってくれればと思うけど、院の関係者からしたら又ヒロインが戻って来るかも知れないし、試験を受け再入学する事になったら、ヒロインがその様になってしまった事は言うべきでは無いと判断したそうだ。


それに学園に入学しないとしても、ヒロインの将来を考えれば黙っている方が良いと判断したらしい。


あーねぇ。うん、ヒロインちゃんの醜聞だと思ったんだね。だから黙っていたと。

気持ちは分からないでもないよ。でもそれをもっと早く言っていればまた違った結果になってただろうにね。今更遅いけど。


そしてそのヒロインちゃん。孤児院の人達に何も言わず失踪し、現在四つ向こうの国である神殿の総本山で保護されている訳だけど、調査させている者が接触しました。そして分かった事は、ヒロインは完全に壊れてしまっていた。


だからと言ってこの世界に対しての影響は無かったりする。

何故なら魔王も居なければ、将来魔王的なモノが出て来る事も無いし、当然復活するという事も無い。

そしてこの世界は悪しき瘴気も無いし、これから先その様な物な出る予定も無い。但しそれはゲームの世界の話ではあるけど。


だからヒロインちゃんが聖女にもならず、数々の困難を乗り越え、王子様と結ばれずとも全く問題は無い。もしあったとしても私が何とかする。


それに今更な事でもある。だって学園に入学していない時点でそれらの未来は全て絶ち切られているのだから。


私や他の悪役令嬢達が、ヒロインと攻略対象者達と学園で交流と言う名の浮気も無く、青春と言う都合の良い名を借りた不義理と契約違反も無かった。それはつまりヒロイン様や攻略対象者様達が、それ等自分達に都合の良い困難とやらと言う名の(たわむ)れも無かったのだから。


それ等を恋のスパイスだとか言う()れ言も聞かずに済んだのだから問題は全く無い。


そんなお馬鹿な事とは言え、それ等の経験を経て最終学年の時に聖女へ覚醒する。だけどヒロインはそれ等の経験をしていないから聖女へ覚醒する事も無いだろう。

神殿でもまさかああなったヒロインちゃんが聖女の素質ありと把握していないし、出来てもいない。

数々のイベントを経て、その上で聖女の素質ありと分かるのだから。ならば今は只の精神を病んだ娘でしかない。


それにしても……。


聖女とは言え、平民と結ばれた後の政治や何かの諸々をどうするつもりだったんだろう?

婚約と言う最も大事な契約を破る者に王の資格無しと、そう思われるだろうに。それこそ貴族だけでは無く、平民であってもそう思われる。だって子供の頃からの婚約者を捨て、簡単に乗り換える者に信用とか信頼を抱かれる事何て無いのに。それこそ平民のおばちゃん達や、既婚者達からの信用や信頼を得るのは無理だ。

貴族平民問わず、簡単に女を捨てると思われたら不信感を抱かれるだけなのにな。


多分ゲームの世界では、婚約破棄後の治世は難しい舵取りの連続だったんだろな。国が荒れた可能性大だよ。


報告書をもう一度読んでみる。

ヒロインは今も独り言を言い、この世界の人達には分からない事を言ってるらしい。


そして明らかに日本の事と思われる事や、日本語らしき物を居ない誰かに、他の人に見えない何かに向けて言葉を発している。

今では絶叫しながら居ない誰かに向け、言葉を発し、出て行けと、私の中から出て行けと。


『乙女ゲーム』何か知らない。


ヒロインが日本語の様な言語で発する言葉の一つだ。後は『逆ハー』だとか意味が分からない等を言ってるらしい。

ヒロインが発する言葉は不明瞭な事も多いけど、誰も知らない言語、これは調べさせた者から直前聞いたり、報告書から私が推測した物だ。


私は初めてこの報告書を読んだ時ゾッとした。何故ならあのヒロインちゃんの現状は、私がそうなっていたとしてもおかしくは無かったから。私のもう一つの未来であったかも知れないのだから。


多分であり、これも私の推測だけど、ヒロインの中には転生者が居る。但し私の様に元の人格と上手く融合出来なかったのだと思う。


私の場合は融合か、もしくは前世の私の人格が上手く上塗り出来たからこそ、だからああはならなかったのだと思っている。


恐らくヒロインの人格は、転生者と融合も上塗りもされてはいない。元々の人格が勝り、転生者は身体を得る事が出来なかったのだろう。


その結果どうなったかと言うと、完全には乗っ取る事が出来なかったけど、残滓と言うには多く、乗っ取りと言うには言い過ぎな、中途半端な状態の身体になったのだと思う。これもあくまでも私の推測であり、単なる私見でしか無い。でも間違ってはいないと思う。少なくとも可能性は大きいはず。


ヒロインちゃんは常に誰かに言われ続けられていると思われる。

時には囁かれ、時には大声で喚き散らされ、そしてこれも私の推測でしかないけど、ヒロインの中居るもう一人は多分ヒステリックに喚き散らしている様な者だと思う。

それこそ分別のつかない小さな子供の様な、それでいてワガママいっぱいに育てられた子供の様な者が、そんな者がヒロインちゃんの中に居るのだと思われる。


しかもその中に居着いて居る者は多分考え無しの馬鹿。間違いなく前世では愚か者と言われて居たのだと思う。

それに加えて自分の意見を通す為なら何でもやり、大声を出せば通ると思っている人間なんだろう。


相手を思いやり、相手の気持ちを尊重し、人に普通に気を遣える人間なら、もしそうならヒロインが狂うまで追い詰めたりしない。


それが復讐なら分からないでもない。でも自分勝手な欲望の為に相手をそこまで追い詰める何て、普通の神経の持ち主ならまずやらない。


前世でたまに居た厄介な、実際厄介者扱いの関わりになりたくないそんな人間だったのだろう。


本当にゾッとする。私の中に入ったのがあんな者なら、もしそうなら、私も家の(はな)れに幽閉か、ヒロインと同じく神殿のそう言う所に入っていたかも知れないのだから。


もう一つの可能性。そして最悪の可能性として、家の名誉を守る為に突然病死していたかも知れない。

例え今世の家族に愛されていて、大事にされていたとしても、あのヒロインの様になって居たら、もしそうなら泣く泣く我が家のお父様やお母様は、私にせめて安らかに逝ける様に、そして私は人生最後のワインを口に含む事になっていただろう。

当然王家には話を通した上でだ。事情が分かれば王家とて仕方なしとして許可を出していたはず。

本当に良かった、ああならなくって。


常識、恥、人として当然持っている心。人として当たり前にあり、持っている善悪の判断と教え。それ等を持ち合わせていたヒロインのあの子は、それ故に狂った。私が知るヒロインのあの子は、基本的にではあるが人並み以上にそれ等の当たり前の心と常識を持っていた。だからこそ耐えられなかったのだろう。


とは言え婚約者を蔑ろにし、あまつさえ浮気を純愛や真実の愛と(のたま)()()達と愛を育むはずだった訳だからどうかも思うけど。

多分()()達の悪い影響を受けたせいかも知れない。

付き合う人間により変わる人間って居るのだから。


一応まともな常識と心を持っていたら、そりゃああなる。

四六時中訳の分からない事を言われ続け、自分の常識と善性と真逆の事を言われ続けられたら気が狂ってもおかしくはない。むしろ当たり前の事。

そう考えればあのヒロインの子はまとも過ぎた故に狂ってしまったんだろうな……。


どれだけ否定し拒否しようとも、受け入れられず、只々自分の欲望の為に意に沿わない事をやれと、四六時中言われ続けた結果がコレ。


一番の不幸は、自分自身の善性かと思うと他人事ながらやりきれなくなる。


ヒロインちゃんはこの国に帰る事を極端に嫌がっているらしい。我が国に帰るか? そう聞いたらしいけど、それを聞いたヒロインはそれこそ手が付けられない位に暴れて拒否してるそうだけど、私はこれ以上の事は何も出来ない。何故なら本人がそれだけ拒否しているのだから。

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― 新着の感想 ―
孤児とはいえ、一人の少女の人生が、 『終わってしまった』 ………南無……、(◞‸◟)
なんとなくヒロインちゃんの中の転生者は主人公の元姉妹と同じタイプの人間だと思います。人の物を勝手に奪って、何回もやめてと言ったのに食い散らかしたくせに逆ギレのは婚約者のいる男を狙う行動に似てますので……
ヒロインちゃん可哀想…。 もう乙女ゲーストーリーは卒業で終わっちゃいましたよざまあ!とヒロインちゃんの中の転生者に言ってあげられたら何かが変わるかもしれないですけど、そこまでの義理も主人公には無いです…
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