最終話 君達は、友達。
「おい、純哉! ひどいぞお前! でもサンキューな!」
あ、もうバレたか。いや、昨日のうちにバレてたよね、きっと。
朝とか昼休みとかだと、他の人目があるから。
きっと、放課後まで話すのを待ってたんだろうな。
そうか。
教室になぎさがいないのは、わざと、かあ。
「いいじゃん。たまにはライバル同士できちんと話せて、良かったんじゃない?」
わざと、少しだけふざけた感じで言ってみる。
「ああ、まあ、な。お前と三人、一緒の高校! って改めて誓ったよ。んで、来週、二人で遊びに行ってくる。電車乗って、あの街。本屋も行くから、参考書、欲しいのあったら言ってくれ」
良かったね。
二人で、だ。もちろん、邪魔はしないよ。
「買ってきてくれるの? さんきゅ。レシート取っといてね? ちゃんと払うから」
「ああ、まあ、うん。……それより、たまにはお前も俺ら以外と遊びたいだろ? 暇なら、誰か、誘えよ!」
……遊び、って。何で、そうなるのかな。
二人、デートじゃないの? お膳立てとか、色々した僕の立場は?
もう、いいや。
「二人以外とは遊びたくはないけど、お言葉に甘えて、たまにはお守りから解放させてもらおうかな」
「お守り、はねえだろう? まあ、でも今回は本当に助かったし……じゃあ、その次は俺達三人でな! なぎさも喜ぶぞ!」
へえ、二人も、僕と遊びたいんだ。嬉しいな。
「了解。あ、なぎさだ。早く行ってやれよ、ばーか」
そう。早く、いっちまえ。
「お、お前、親友に、ばーか? いや、理科は純哉がダントツ1位だしなあ。国語も。だから、いいのか? そうだ、社会は、お前かなぎさ……」
本当に、頭いいのにおばかだな、泰斗。
そんな僕達の会話を楽しそうに聞いているなぎさ。
教室の扉を半分開けて、こっちを見ている。
……ああ、なぎさはやっぱり、かわいいな。
そして、かっこいい。
『ありがとう』
こっそりと、だけど。なぎさの口は、そう伝えている。
『どういたしまして』
背中を向ける泰斗には、なぎさの姿は見えない。
かっこいいのは、泰斗も同じだ。
僕から見た二人は、あの頃からずっと、きらきらしてる。
「じゃあ、帰るか。ほら、お前も」
泰斗の声。なぎさも、うんうん、って肯いている。
「あ、今日はちょっと、図書室に寄りたいんだ」
僕の声。
わざとらしく、ないよね?
「そうか、じゃあ、明日な」
「分かったわ。またね、純哉」
「うん、泰斗、なぎさも、また、明日ね」
良かった。僕、不自然じゃなかったみたいだ。
そう、二人は。君達は、僕の友達。
大好きな、大切な、友達だから。
「早く、言っちまえ。それで、とっとと、くっついちまえ。ばーか」
大丈夫。
僕の本当の気持ちは、しまっておける。
誰もいない、教室で、呟くだけだから。
なぎさ、僕はね。
『君と友達で、いたくない』
……なんて、ね。
そんなこと、言ってやらないよ。
泰斗も、なぎさも。
大切で、大好きな、友達同士だから。
君達が、友達同士から、変わっていっても。
僕達は、友達。
……これからも、ずっと。
だから、僕は。
二人を、見ているよ。
ずっと、隣で、ね。