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四話 判明

数ヶ月ぶりの更新になります。

「よかった、やはり妹さんはこの世界に転生しているのね」

 奏縁から先ほどの出来事を聞いたナノハが言った。

「しかもカトレア王国で転生者手続きをしてるなら、すぐ会えると思うよ!」

 ナノハは奏縁の顔色が良くなったことを何より安堵した。

 

 「ついたよ!ここがカトレア王国庁」

 カトレア王国庁。

 外観は古い木造の建築で、蔦が庁舎全体を不気味に覆っているが、中に入ると意外にも清潔で整然としていた。ナノハに案内されながら、奏縁は受付カウンターへと近づいた。

 

 受付カウンターの案内表示、立てかけてある看板、キャビネットに置かれた書類、書いてある文字は見たことのない言語なのに、その意味は分かる。奏縁はこの不思議な違和感に若干戸惑っていた。

「お名前をこちらにどうぞ」

 受付の女性にペンを渡される。奏縁のペンを持つ手が思わず震える。これは日本語で書いていいのか?

「もしかして、文字が分からないですか?ニッポン文字で大丈夫ですよ」

 女性は奏縁の様子を見て優しく尋ねた。奏縁は慌てて首を横に振る。

「あぁ……ありがとうございます」

 ペンを持ち直し、紙に名前を書くと、受付の女性がそれを確認し、手続きのためか小さなホログラムを展開した。

「あれ?」

 女性は首をかしげる。

「あなたの名前は既に登録されていますが……」

「どういうこと?」

 ナノハが奏縁の背後から声をかける。

「この方は既に転生者の登録済みです」

 女性の言い直したその言葉に、ナノハと奏縁は顔を見合わせた。

「そんなはずは……だって、転生してきたのはつい昨日よ?」

 ナノハは困惑しながら言った。


「少々お待ちください。」

 女性はそう言うと手のひらに別の小さなホログラムを展開し、何やら調べ始めた。

「あ!あなたの名前の登録先を特定しました」

 女性は奏縁にホログラムを見せる。そこには奏縁の名と顔写真まで載っていた。

「魔王族の転生者として登録されています」

 奏縁は眉をしかめた。

「魔王……?」

 奏縁の喉から漏れた声は、呆気に取られたというより、現実に追いつけていないという響きを帯びていた。

《異世界といえば魔王や勇者の存在》——そんなステレオタイプは、ただの空想だと思っていた。だが、その空想が今、自分の肩書きをつけた者として存在している。

「魔王族ってあの?」

 ナノハは首を傾げると、受付の女性が言った。

「はい。クリシュネ魔王の管轄です」

 奏縁は聞き覚えのある名前を耳にし、先程すれ違った幼女の姿を思い出していた。

「あの女の子…が…魔王なのか」

 奏縁は驚きと尊敬の声をあげた。

 と同時に、魔王様のおやつを台無しにした事を思い出し身震いした。

「なーんか聞いたことある名前だと思ったけど、まさか魔王様だったとはね」

動揺の只中にいる奏縁とは対照的に、ナノハはまるで時の流れから一歩離れた場所に立っているかのような冷静な口調で答えた。


 受付の女性は一枚の書類をカウンターに広げ、ペンで何やら書き始める。

「魔族ならともかく、魔王族として転生者を管理するなんて……」

 女性は呟いた。

「あのー……俺ってどうなるんですか?」

 不安になった奏縁は女性に尋ねる。

「とりあえずクリシュネ様にお伺いしてみます」


 2人はしばらく待つことになった。その間、ナノハに連れられ受付横の窓口に向かった。

「ここであなたの奇跡を調べましょう!」

 ナノハは隣の受付カウンターを指差した。

「自分の奇跡を調べられるのか?」

 奏縁が尋ねると、ナノハは頷いた。

「ええ、といってもざっくりとだけど」

 

 2人は窓口の白衣の男性に声をかけた。

「奇跡の判別ですね」

 男性は笑顔で答えると、カウンターの下から一枚のカードを取り出した。

「この台に手を置いてください」

 奏縁は頷き、右手を透明の板に乗せた。その上に男性が新たにカードを重ねた。するとカードが一瞬だけ白く光り、文字を浮かべた。

「あなたの奇跡は"炎"ですね」

 男性は淡々と言った。奏縁は自分の手をまじまじと見つめて言った。

「炎?」

 奏縁はずいぶんありきたりな能力だなと感じたが、炎を扱えるといういかにもファンタジーな能力を自分が持っていることに懐疑的だった。

「えぇ、炎です。私のカードで知れるのはあくまで奇跡の表面部分だけです。あなたの炎がどのような見た目、威力を持つのかまでは知ることができません。」

 男性はカードをカウンター下の引き出しにしまいながら言った。

 

「櫻井様ー!櫻井奏縁様ー!」

 受付の女性の声が聞こえた。

「呼び出しだ」

 2人はカウンターに向かった。

「あなたを登録したクリシュネ様と連絡が取れました。正確には彼女の執事と、ですが」

 女性は続けた。

「登録した理由などを説明するため、奏縁様を魔王城へ招待したいとおっしゃっているのですが……」

「魔王城に!?」

 2人は同時に声を上げた。

「ええ……しかしすぐにとはいきません。なにやら準備をしているとの事ですので」

 女性はそう言うと、奏縁に一枚の紙を渡した。

「ここに魔王城の地図が書いてあります。」

「分かりました」

 奏縁は紙を受け取った。

「それでは、お気をつけてお帰りください」

 女性は2人を送り出してくれた。


「いろいろ急展開だったな」

 奏縁はナノハに言った。

「それに……クリシュネ魔王がなぜあなたを魔王族として登録したのか」

 ナノハは考え込む。奏縁も考え込んでいる。

「ま、考えたって分からないものは分からないし、今日は休みましょ!招待されたのは明後日だったよね?」

「あぁ、そうだな。」

 奏縁はもっと考え込みたかったが、わからないことは明後日直接本人に聞けばいいと、思考を放棄することに賛同した。

「明後日に備えて準備しましょ!」

 2人はカトレアの町を歩き回り、替えの下着や護身用の小刀等の必要なものを買い揃えた。その後ナノハの家に戻った2人は、疲れからかすぐに眠ってしまった。

 

 翌朝 目覚めたナノハが朝食を作っていると、窓から一羽の小鳥がやってきた。鳥には何やら手紙がついている。

「なんだろう……これ?」

 手紙を開封して中を見る。そこには地図と一枚のカードが入っていた。

「招待状?もしかして……」

 ナノハが呟くと、鳥は再び窓から飛び去っていった。

「奏縁に見せなきゃ」

 ナノハは部屋を出ると、隣の部屋のドアを叩いた。

「どうした?」

 気の抜けた声が部屋から聞こえ、しばらくすると寝癖がついたままの部屋着姿の奏縁が出てきた。

「さっき届いた手紙だけど……魔王城への招待状だって!」

 2人はお互いの顔を見つめ合った。

 突然の出来事にただただ驚くばかりであった。

かなり展開が急で強引だなと自分自身も痛感しております。

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