表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

【4】

 ジェダが戸惑うのも当然。そのジェダと初めて出会ったのもコミケ会場だった。

 異世界から現代日本のコミケ会場に迷い込んだ騎士の格好をしたジェダのことを、あの時はただのコスプレイヤーだと思った。

  精巧なデザインの真鍮の鎧や風に靡く青いマントはどう見てもコスプレにしか見えなかったし、言葉を交わさなければジェダが異世界人で、元の世界に帰る方法が分からなくて困っていることも気付けなかった。

  私にとってコミケ会場はただの娯楽場、でもジェダにとっては大切な思い出の場所なんだろうな。


「どうしてそう思ったのか、聞いてもいい?」

「そんなの簡単だよ。だって私には才能が無いんだから。公募に出せばいっつも落選、同人誌は売れない。良いところは何も無いじゃない」

「それで最近は何も書いていないの? あんなに一生懸命書いていたのに……」

「そうだよ。あ〜あ、悔しいな。ジェダにも手伝ってもらったのに、何にも結果を残せなかった」


  公募の締め切り前は原稿に集中出来るように、いつもジェダは気を遣ってくれた。家のことを全部やってくれて、小雪の世話もしてくれて……。一人暮らしだったら、てんやわんやの忙しさだった。


「そんなことは……」

「そんなことより、早く食べよう? もうお腹空いちゃった」


 なんでもないように話して朝食を食べ始めても、やっぱりジェダは心配そうな顔をする。


「ジェダが作ると美味しいね。毎日だって食べたいくらい」

「ありがとう。でも俺はコトの料理が一番好きだよ」

「え〜っ。私なんて適当に作って盛り付けているだけだよ!」


 ジェダが作ってくれた朝食が美味しいのは本当のこと。それを言っただけなのに、困り顔で弱々しく笑わないで欲しい。どれも全て噓偽り無い真実なんだから……。

  どこか心が晴れないまま完食した後、ジェダはキッチンで後片付けをしながら何か考え込んでいる様子だったけれども、やがて覚悟を決めたのか、真剣な顔でやってくる。

 

「コト、お願いがあるんだ。今日の午後、俺に時間をちょうだい。どうしても会わせたい人がいるんだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ