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神業代行〜カミワザダイコウ〜 一章 施錠解錠(アンロック) 一部  作者: 杉崎 朱


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第54話 最終話『セイシュン』



 シンから出る金色の光の筋は通行人に無差別に飛んでいく。


 【ガシャンッ!!!!!】

 【ガシャンッ!!!!!】

 【ガシャンッ!!!!!】



「瀬条くんを破綻させない為の救済処置みたいなもの・・・!強運体故かも!!力を溜め込まないで、”本人の意思とは無関係に力を放出してる”!!暴走よ!!!」

「こんな勢いで施錠を掛け続けたら補充の力の勢いだって増すだろう!!そしたらシンの体はもう保たないぞ!!」


 甲斐の言葉で気づいた。施錠の力が自分から放出される度に、何か体が軋む感じがしている。国生が翳した両手が光った。それがシンに向かって飛んだが撥ね返された。

「ダメっ!やっぱり瀬条くんの力っていうか強運体の方が強いわ!!」


 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】



 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】


 力の暴走が早まる。施錠も止まらない。


「クソっ!!どうすれば・・・!!国生さん!!何か手は?!」

「本体から飛んで離れた力はそう遠くまで行けないわ!!人が少ないところへ行きましょう!!」


 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】


 その最中にも施錠が止まらない。

 通行人からすると、ただの学生三人が騒いでいるだけにしか見えない。しかし、起こっている事は一大事だ。


 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】


「あぁ!!甲斐くん!!あの人解除して!!この間の人みたいに蹲っちゃったよ!!!」

 キツネが指し示す先には施錠が掛かった瞬間に跪いた人がいた。

「ッチ!!心を無視してギリギリの生活を送りやがって!!」

 甲斐が急いで解錠の手印を結ぶ。そして指の輪を離して解錠した。


 ーーパキィイインッ!!ーー


 南京錠と文字の輪がより一層強く光ってから弾け飛ぶ。


「大丈夫ですか?!」

「・・・ッハ!やだ、貧血かしら・・・」

「少し歩くとベンチがあります。動けますか?肩貸します」

 国生が女性を助けに行った。程度が酷くなかったのかなんとか持ち堪えられた様子だ。


 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】


 ーーピシュンッ!!


【ガシャンッ!!!!!】


「シン!シンは俺と来い!おい国生!!お前鏡持ってこい!!」

「すぐ持ってくるわ!!」

 国生は女性をベンチへ座らせたら走って神社へ向かう。

「俺が神社へ向かった方が・・・!」

「ダメだ!神社までも道は通行量が多い!このままだと何人施錠してぶっ倒れるかわかったもんじゃねぇ!」

「でもでも!この後どこ行けばいいの?!ここ駅だよ?!」

「地下駐車場だ!」





・・・ーーー




 走って地下へと着いた。人も少なく安心出来そうだと甲斐が思った矢先だった。

「シン、ここなら人が少ない!あとは隅の方に居れば・・・シン!!」

「シン苦しそう!!」

 蹲るシン。息が荒い。走ったからではなく、体が力によって破綻寸前まできている。


「急に来たな・・・!!時間を止めて人抱えて走れるシンの体力だ。走っただけでここ迄息が上がるわけがねぇよな・・・」

「そうだ!!時間を止めればシンの痛みとか力の補充が止まったりしない?!」

「仕組みがわからねぇ。可能性はあるがもし逆に負担になったら国生が来るまで保つかどうかだ。シン、体の痛みは強いか?」

「全身っ!!脈打ってる・・・!!痛さは・・・わからないっ!!」

「ックソ!!」

 言ってる側からもシンからは光が発射されている。その光が甲斐に何度も当たるが、バチ当てと解錠の力の持ち主には施錠が出来ないと言われているだけあり、南京錠は現れない。




 ーーピシュンッ!!


 ーーピシュンッ!!


 ーーピシュンッ!!


 何もしてやれずに、ただ目の前でシンが苦しんでいるのを甲斐は見守る事しかできない。


 ーーピリリリリリッ


 機械音が鳴った。着信音だ。甲斐が携帯電話を見ると、国生からの電話だった。

「早いな!!」

「姉にバイクに乗せて貰ってる!」

「そうか!今地下駐車場にいる!!さっきの場所から一番近い入り口から入ったところだ!!」

「・・・ーーーザザッーー」

「おい!!国生!!聞こえるかっ?!」

「・・・ーーーザッーーザッーー」

「クソっ!!なんで深くもねぇのにこんなに電波悪ぃんだよ!!シン待ってろ!今国生迎えに行ってくる!」

「・・・すまない・・・頼んだ」





 甲斐が国生を迎えに行って2分程。コツコツと足音が聞こえて来た。

「甲斐くんとバチ当て様かもっ!!早いね!!」

 通行人の可能性もあるが、足音が少し小走りだ。戻ってきたのかもしれない。しかし、足音は一人分だ。



「やっぱり君だったか」


そこにいたのは甲斐でも国生でもなかった。


「えっ?!ナニっ?!誰?!」

「そっちの生き物は・・・バスを降りた時に一瞬だけ目にしたな・・・」

「僕のこと見えるって事は?!」

 シンはキツネの声に顔を上げた。ジャージを着た男子高校生。シンはそのジャージに見覚えがあった。


「旭…原、高校の…バチ当て、様っ!!」

「やっぱり君だった。合宿の時に見た顔だったから。女の子と変な雰囲気で地下駐車場に入っていくのが見えたんだ・・・施錠の力を撒き散らしながら」

「シンは特別だよ!!バチ当て様副総代の国生さんがついてるからシンに何かしちゃダメだよ!!」

 

「最近の施錠にはこんな変な動物がオプションでつくのか?もう邪魔だからコイツからやっちゃおう」

「全っ然!!話聞いてくれない!!」


 解錠の力の持ち主やバチ当て様からすると施錠の力は嫌われていると何度も甲斐に言われたシン。目の敵にされるとはこういう事なのかと思った。自身を見て”強運体”だとわからないバチ当てなら仕方ないとさえ思う。あとは甲斐と国生が到着するのを待つだけだ。そう思っていたが。



「体調が悪いところに畳み掛けるようだけど、君には痛い目を見て貰って、今後施錠を辞めて貰いたい」

「何するの!?辞めて!シンはもう施錠はしないって決めたんだよ!!」

 キツネが全部代わりに話す。シンも話たいが、体がいう事を聞きづらい。高熱が出た時によく似た症状だ。体が重く、節々が痛い。


「悪いけど、問答無用。いくよ」

 言うが早いかバチ当ての彼が手印を作った。甲斐の解錠でも、先ほど国生が行った手印とも違う。光ったと思った瞬間、光はキツネに飛んだ。


「んなぁああああああああーーーーーーッ!!」

 全身が光り、痺れるように痙攣したあとキツネが地面に落ちた。

「キ・・・ッツネッ!!」

「シン・・・逃・・げ・・・・て・・・」


 バチ当ては同じ手印をシンに向けた。そして光りを放った。



 バッチーーーーーンッ!!!


「何?!」

 シンに向かって放った攻撃が飛び散ったのだ。しかし、驚いてすぐにバチ当てがすぐに別の行動を取る。直接シンの元に走り、シンを蹴り飛ばしたのだ。


「悪いけど!!施錠を辞めて貰うために痛い目見て貰うよ!!」

「・・ぐはっ!!!」

「辞めてーーーー!!・・シンッ!!逃げてッ!!」


 その瞬間、今度はシンの体が光った。



 ーーードォオオオン!!!!!


【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

 一本の糸ではなく、近辺を蜘蛛の糸のように張り巡らせる形状で施錠の力が暴走した。もう目に見えないほど離れた人の、怒ってもいない感情をさらに施錠した音だ。


「なんていう酷いことをっ!!お前ェェッ!!許さない!!」

 バチ当てはまたシンを蹴り飛ばそうと走ってきた。しかし、今莫大な施錠を行ったシンは、少しだけ体が楽になった。さっきと違って小出しの暴走がなくなった。立ち上がって逃げることを決めた。


「逃がさない!!」

 追う、バチ当て様。

 逃げるシン。

 

 地下から出て地上に出る。いつものシンからしたら遅いが、それでも周りから見れば速く走っている。そのスピードのまま走り、人の多い駅ビルへと向かった。目的はビルの屋上だ。この寒くなった今の季節の夕方、屋上の小さい遊園地にいる人は少ないと踏んだからだ。

 ビルに入るまでの間、地上を走って、甲斐と国生にも見つけて貰いたい。そう願い走った。



・・・ーーー


「こっちの入り口ね!!じゃあ甲斐くん神鏡持って!!」


 国生と甲斐が地下駐車場へと向かおうとした。しかし、甲斐が途中で足を止めた。

「何やってんの!!刻一刻を・・・あら?なんか感じる・・・」

 何かを感じ取った甲斐と国生。


 ーーードォオオオン!!!!!


【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】


「嘘っ?!これ瀬条くんの暴走?!」

「規模がデケェんだよ!!」

 力の暴走は地下で発生したが地上にまで届いた。


そして、そのあと周囲の異変に先に気づいたのは甲斐だった。視界の端で猛スピードで走る学生。先を走るはシンだった。

「シンッ?!」

「えっ!?」

「シンが走ってビルに入った!追うぞ!!」




 シンとバチ当てがビルに入った。追ってきた甲斐と国生も続けて入ろうとした。しかし

「コラ!!危ないからダメだよ!!さっきの男の子たちと一緒に遊んでるのか?!君たちは入らせないよ!!」

 ガードマンに止められた。

「今それどころじゃねぇんだよ!時間がねぇんだ!!下手したらアイツ死んじまうかもしれねぇんだよ!!」

 甲斐が焦る。

「はいはい、あんな猛スピードで走ったら危なくて怪我しちゃうかもね。今他の警備員さんが止めてるから。君たちは外で待ってなさ・・・コラっ!!」

 甲斐は踵を返して隣のビルへ入っていった。国生も術具を持ちながら必死についていく。




「ちょっと!!瀬条くんがビルから出るかもしれないのに!なんで隣のビル入ったのよ!しかもどこまで登る気?!」

「シンの入ったビルは4階建てのビルで屋上が遊園地だ。そして、隣のこっちのビルは5階建て。屋上は駐車場だ。2階分の差があると思いきや、それぞれのビルの各階の天井の高さが違う。こっから飛び降りるのにちょうどいい高さだ」

「そんな事言ったって瀬条くんが屋上に来るとは限らないでしょ?!」

「アイツはくる。だから飛び降りるのが一番早い」

「・・・飛び降りるって・・・甲斐くん、人使い荒いわね」

 階段を走りながら女子高校生と女子中学生が話している。そして屋上についた。



「ほら、いた」


・・・ーーー



「・・・疲れてそうなのに、蹴りもしたのに、随分とっ体力があるんだね・・・」

 ついてきたバチ当ては疲労で息が上がっている。対してシンは、またも破綻寸前で体が痛み出した。あれから数分も経ってないのにもう力が溜まって、なお身体が限界を迎えたという事だ。


 また、シンの体が光った。



ーーードォオオオン!!!!!


【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】

【ガシャンッ!!!!!】


「施錠を止めるんだ!!なんでそこまで施錠をする!!」



 その言葉は隣の建物の屋上にいた甲斐と国生にも聞こえた。


「あの子・・・!指示書を落としたバチ当ての子だわ!気が一緒!!てかなんでココに!!」

「つか、暴走の範囲広がりすぎてるぞ。もうシンが保たねぇ。時間ない、行くぞ」

 甲斐が助走をつけるために下がった。

「ちょっ!!ちょっと早いわよ!!」

「シンの為だ、行くぞっ!!!」



 国生は持っていた術具・・・刀を包んでいる袋、鞘袋(さやぶくろ)を手早く外し、鞘を抜き日本刀を顕にした。

「重力解除!!」

 刀に唱えて、隣のビルの屋上で対峙しているシンとバチ当ての間に刺さる様に思いっきり投げた。刺さった刀を中心に周囲に結界が張られた。

 そして、結界が張られた瞬間、国生の隣を勢いよく走ってきた甲斐が駐車場の柵を超えて宙に飛び出した。






「これは?!バチ当ての術っ?!」

 旭原高校のバチ当てが降ってきた刀に驚く。驚いたのも束の間、降ってきた方向を見れば更に上から人が降ってきた。



 ーーードォオオオン!!!!!



 力の及ぶ範囲がついに4階屋上から地上まで届くほどとなった。無数の南京錠の施錠音が響き渡る。もうシンに残された時間は後数秒だ。



「シーーーーーーンッッ!!!!!」

「・・・甲・・斐・・?」

 上から甲斐が降ってきた。


「鏡に自分を写して、いつも通り施錠しろ!!」

 返事もできない程の状態のシン。最後の力を振り絞って甲斐が落ちてくるであろう場所まで移動した。


「お前!!まだ動く気・・・っ?!体が動かないっ?!お前!!何を・・・?!」

「邪魔しないで頂戴っ・・・!!」

 国生が術をかけてバチ当ての動きを封じた。


 シンに、夕陽に照らされた甲斐が見える。そして、甲斐の持っている鏡が自分に向いた。一瞬だけ夕陽が反射して信じられないほどの眩しさだった。

 そして、落ちてきた甲斐が刀を中心とした結界内に入った瞬間、落下スピードが緩んだ。



「今だっ!!!」

 甲斐の言葉は封印の合図だ。


 シンは神鏡に映った自分と目が合った。



「《表印(ヒョウイン)・・・》」


 声を出すのも一杯一杯。


「《強制制御(セイギョ)!!!》」


 瞳印と手印の中に映る自身。そしてそれを映す神鏡。

 

 印がいつもより光り輝き、術が発動した。





 シンは思い残すことばかりだと思った。

 キツネは大丈夫だろうか。ここで眠りについたら家族は心配するだろう。スズやオミも心配するだろう。誰があの二人の喧嘩を止めるのだろう。オミは落ち込んだりしないだろうか。文化祭の雰囲気を楽しみたかった。スズとオミと一緒に卒業をしたかった。文化祭の衣装を作ってくれた子に申し訳ない。文化祭に来ると言っていた白羽高校の人たちとはもう会えない。白羽高校のマネージャーは可愛い人だったな。アイドル深雪 紗衣の件は国生さんに丸投げになってしまった。クラスメイトはどう思うのか。不審に思われないと良い。同級生が昏睡だなんて誰かのトラウマにならないと良い。

 

 たった一瞬なのに色んな思考が駆け巡った。

 沢山思い浮かぶが、もう目が覚めたら五年後である。しかし、これは正常な自分を取り戻すために行わなければならない。シンは考えた。これは、軽はずみに施錠の力を受け取ってしまった自分への”罰則(ペナルティー)”なのだと。多くの人の心を施錠で制御してきた。その報いだと。自身の貴重な青春と共に、施錠を行った自分を正常に戻すための罰則。これから正常を取り戻して人生を再び歩むために、受け入れよう。

 眠る前に何か言葉を発したくて、でも何を言っていいかわからない。感謝なのか、悔いなのか。自分が一番大事だと思っていたことはなんだと考えて、自分もただの思春期の子供で、他の高校生と同じくだったんだなと気づいたシンが放った言葉。 



「さよなら、俺の青春」



 その言葉を言い終わった時、鏡に反射した自分と夕陽が見えなくなり



 目の前が真っ暗となった。




 【第一章 完】

封印が、開始された。


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