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神業代行〜カミワザダイコウ〜 一章 施錠解錠(アンロック) 一部  作者: 杉崎 朱


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第49話 『ヒキガネ』



「おい、シン。あいつは施錠をしないほうが良いぞ。多分ヤバい」


 甲斐の目がいつもと違う。面倒だとか、し過ぎるなとかそういう雰囲気ではない事にシンは気づいた。しかし。


「いつもいつも・・・!!どいつもこいつも私を陥れようとして!!これ以上どうしろって言うのよ!!」

 憔悴している女性が、自宅の玄関の近くに置いてあった鉄パイプを握った。商売をしていた時に使っていた設備の一つだろう。解体されて処分もできずにずっと置かれていたものだと見て取れる。


「・・・流石にもう施錠しないわけにはいかないだろ」

「ダメだ。やめておけ。シン、お前の為じゃない。彼女の為だ」

「何言ってんだ?!このまま放置した方が怪我人も出るし、本人だって捕まったらその後の人生が・・!」

「施錠すれば助かるって保証はない」

「何言ってんだ?!あるだろう!」

 シンは甲斐が言っている事がわからない。キツネも甲斐の言葉に疑問を持つ。そんな間にも彼女は鉄パイプを構えて向かいの婦人を殴ろうとしていた。




「なぁ、シン・・・」


「《表印(ヒョウイン)》」

 甲斐がシンを止めるが、シンからすると一刻を争う状況だ。躊躇わず瞳印と手印を重ねて唱えた。


「心を思うままに、自由にしてやるって、大事なんだ」

 静かに続きを言った。


「《強制制御(セイギョ)》」

 甲斐の言葉届かず、シンは施錠をした。



【ガシャンッ!!!!!】



 蒼白い雷が目の前の女性に落ちる。そして、金色の南京錠が出現した。ここまではいつも通りだ。その先がいつもと違った。最近では、施錠時に見えていたモヤは大体が同じ濃さの程度であったが、今回は非常に大きく多く噴射されるかのようにドス黒いモヤが現れた。今までで一番の規模だった。

 施錠をされた彼女はその場でしゃがみ込んだ。そしてそのまま倒れ込んだ。カラン・・・と鉄パイプがアスファルトに落ちた際に悲しい音を響かせた。

「握手会の時みたいに、異常に感情が昂ってたから反動か?」

「違う」

 甲斐が冷静に、少し悲しそうに言った。


「見てみろ。意識はちゃんとある。でも、目が定まってない。もう、自分の意志で体を動かせないんだ」

「施錠の力をかけた人は、握手会の人以外倒れた人なんていなかったのに・・・」

「年取ってるとか、若いとか関係ないんだよ。シン、少し真面目な話をしよう。俺が今言える範囲のことだけだけど」

 もっと怒られるものかと思ったが、甲斐はいつもの覇気はなくとても静かにシンを誘導した。そう、中学生の彼女の後ろ姿を見ているのに、シンは大人の男性の後ろ姿を見ている気がした。

 女性は取り押さえるも何も、眠ったように動かない。暴力沙汰と警察を呼ばれていた。そして、あまりにも動かない彼女に警察も不審に思い、次は救急車が来た。担架に乗せられて去っていった。

 まだ商店街に人が足を止めている。騒動はもう終わったのに、何かがあったと野次馬のように商店街の入り口に人が集まる。商店街から離れるように反対へ歩みを進めるのは今の所、シンと甲斐だけだった。


 人がいなくなった所でシンが口を開いた。

「・・・気持ちの抑えによる反動じゃなきゃ今のはなんなんだ?」

 先ほど、女性が怒ってから倒れるまでの一部始終をずっと見ていたシン。握手会の時ともまた違う現状に少し戸惑っていた。


 一呼吸置いて、甲斐が話始めた。

「・・・なげぇけど話すぞ。俺がシンに『施錠をしすぎるな』って言う理由の一つだ。お前は施錠をしてその人が怒りに飲み込まれなければ体が悪くなることはないって言ってたな。確かにそういう見方や意見もある。実際、ストレスを抱えていない人はどんなに酷いと言われてる生活習慣だとて、立派だと言われる生活習慣の人間よりも健康に関わる数値が良いとされる事もある。

 でもな、施錠をすると感情が落ち着いてその事柄に対して気持ちがどうでも良くなるんだ。その件に関して怒るどころか関心をもなくなるケースだってある。好きだから、興味や関心があるからそれほどまでに熱くなるのに、熱くならないなら興味も関心もないと思う間違った自己認識だ。つまり、問題が起こらない事と同時に、自分の気持ちにも気付けずに本人の中で気持ちの『ズレ』が生じる。


 人間は自分の気持ちを偽って生き続けることはできないんだ。自分の体に入ってる自分の心が体を動かす(もと)であり原動力だ。自分の心に素直に従うと体が動くんだ。()()()()()()()()()()()()では自分の体は()()()()。それはもう()()()()だからだ。自分の体を動かすには自分の心が必要なんだ。よく年配が言うだろ?『年取ると体が言うことを聞かない』って。社会の常識や変な規則、偏見、他人の視線、他人の意見を”生きる分だけ多く知る”事になるとな、結局『人から見られた時』の自分をどうするかとか他人目線で自分の心を決めるんだ。他人の目線や意見で構成されてしまった()()()()()()()()()じゃ体を動かすことが出来ないんだよ。年寄りは生き抜いてきた時に勝手に身についてしまった”他人の意見で構成された心”で生きている人が殆どだ。だから年取るとどんどん体が動かなくなるんだよ。

 逆に年取ってても元気な人の大体は、人に何言われても気にしないで好きなことして楽しんでる人だろ?『年取ってから新しい事始めるなんて』って言う人の意見は聞かねぇんだ。”新しい事をやりたい”っていう自分の気持ち、心で生きてるからちゃんと体も動いて元気なんだよ。

 あぁ、これは”バチ当て論”な。バチ当てはみんなこの教えで行動をしている。世の中の医者や学者がどう診断や判断するかはしらねぇけどよ」


 施錠をすることで波及するという話は以前キツネとした。海に浮かぶブイに例えた事を思い出した。やはり、少なからず何か影響が出るという事。しかし、シンは今回の甲斐の話は影響というよりも副作用とも感じられた。施錠をした副作用。


「やっぱり、副作用あるんじゃないか・・・」

「・・・あと、その件に関してどうでも良くなるってことはそれ以上深く考えないこと。つまり、間違いや別の視点の考え方やものの見方があることに気づくチャンスを潰してるって事だ。施錠した人間のその後の成長や伸び代を奪ってるんだよ施錠の力は。だからバチ当ても解錠も施錠が嫌いなんだ。力の存在が嫌いなだけでお前の事を嫌いって言ってるわけじゃねぇからな」

「あっ!出た甲斐くんのツンデ」

「今日は許さねぇっ!!」

「イダイッ!イダダダダダダ!!!!!」

 左右の耳をそれぞれ外側に引っ張られた。




 ここまで聞いてシンはやっとわかった。

「・・・じゃあ、さっきの女性が動かなくなったのは・・・」

「普段からああやって商店街の人間に色々言われてたんだろ?それに、私生活も本人的にはかなり大変だったってのは見て取れる。まだ若そうなのにあの身なりだったもんな。人の意見に左右されて、人の言葉に必要以上に傷ついて。好きなこともできないで。暴力だろうとなんだろうと、自分の意思でやっと行動したのが『攻撃という名の防御』だったわけで・・・それをシンが施錠して制御しちまったから、もう何一つ自分の心が無くなっちまったってわけだ」

「・・・俺が、あの人をそうさせたのか・・・まさかずっとあのまま動けないんじゃ」

「大丈夫だ。多分病院で診察されて然るべき処置をされる。メンタルケアもしてもらえるだろう。あそこまでいけば誰か専門的な人間がつけば多少は回復するだろう・・・せめて、いいメンターに当たると良いな」

「俺、さっきの人がどこの病院に行ったか知ってる人がいないか聞いて・・!!」

 踵を返して商店街に戻ろうした。


「シンのせいじゃない」


「でも!!」

「シンのせいじゃない。あの女の人の引き金を引いたのは確かにお前だったかもしれない。でも、考えてみろ。お前は強運体だ。彼女はお前の邪魔をしたわけでも危険に巻き込んだわけでもない。きっと、良い医者とメンターが着く。そうすれば、時間がかかるかもしれないが結果今よりも良い生活と人生になるかもしれない。病院は探して俺が解錠をしておく。この辺で受け入れられる病院は大体知ってる。大丈夫だ」

「そうだよ、きっとあの女の人にとって良くなるよ!!シン、今日はこのまま帰ろう?」

 言われるままに今日は大人しく帰路に着いた。



 しかし、シンは施錠の力に対して不信感を持った。


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