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神業代行〜カミワザダイコウ〜 一章 施錠解錠(アンロック) 一部  作者: 杉崎 朱


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第28話 『シュウギョウシキ』



「はい、じゃあ事故のない楽しい夏休みを」

 教室で先生がホームルームの締めの言葉を発した。その後、号令が掛かる。



 シンの学校は本日が終業式だった。

 朝から体育館に全校生徒が集まり、生活指導の先生の長い話と、校長先生の短い話があった。他にも夏休み中の校舎の利用についてなどの説明はあったが、例年通りの内容である。

 その後各クラスでホームルームが行われ、今下校の時間となった。生徒たちの纏う雰囲気は更に明るく軽いものになっていた。生徒が散り散りになる。


 すぐに帰る者。

 部活動に向かう者。

 友達とこれからどこに遊びに行こうかと話し合う者。


 もう、自由である。


 シンは、携帯電話を見た。ネットのニュースを確認する。アイドルの深雪紗衣の続報を探すが特にない。依然として状況は変わっていないという事。つまり、まだ意識不明の重体だ。一応、昨晩も電話を掛けた。勿論出なかった。

 仕方ないにしても、もしバチ当て様の関係に巻き込んでしまったのならとシンも流石に少しは申し訳なさを感じていた。しかし、バチ当て関連と決まったわけでもないと自分に言い聞かせ、鬱蒼とした気分を無理やりにでも気分を明るくする。


 そんなシンを、スズが後ろから見ていた。スズも深雪 紗衣とは一言交わした。シンを追ってきて学校まで来た事を知っている。シンを思い、何か話題はないかと思い先日の合宿の事を思い出して話し掛けた。

「シン、夏休みの合宿の手伝いは興味あるか?今度は一週間だが」

「・・・今回は良いかな。気分転換にはなるだろうけど遠慮するよ」

「そうか」


 あの時のバチ当て様がまた来るかもしれない。そんなところに自分からのこのこと行けないとシンは思った。それに、『バレー部だけなのか?』などと聞くのも面倒だと感じ、手伝い自体を遠慮した。


「シンは俺とコレから飯食いに行こうぜ!!」

 オミがやってきてシンの肩に腕を回した。この二人は不器用ながらにシンを気にかけているのだ。


「二人とも優しいよね」


 キツネが自らサブバックにモゾモゾと入りながら言った。




・・・ーーー



「それでよ?姉貴はもう何日も仕事休んでんだわ。何してるかって、みーたんの病院探してそこでずっとスタンバってんだってよ。犯人らしき怪しい奴を見つけたらその場で制裁だとか言ってた。あの熱意は恐ろしいわ。って事で、ファンは落ち込むどころか殺気立ってて結果元気だし?皆んなみーたんを信じて待ってっし?大丈夫だ!ラーメン食いに行こうぜ!」


 蝉の声が聞こえる通学路。オミが気を遣って話す姿にシンは元気を見せる。


「ありがとう。もう大丈夫だ。今日はオミのリクエストのラーメンで良いよ」

「っしゃ!!早く行こうぜ!混む前によ!」



 歩いて大通りに出てラーメン屋を目指す。国道で大きな道路のため、交通量が多い。トラック、ダンプ、バス、大型車両も多い。その時、目の前に一台の見慣れないバスが通った。市営などではなくどこかの学校のバスだ。


 学校によって終業式の日は異なる。もう夏休みに入っていて部活で練習試合だったり合宿が始まっている学校もあるだろう。そう思いながら、首を上に向けてバスの窓を見ていた。生徒がたくさん乗っている。

 先日、数日間の合宿で多くの学校のジャージを見てきた。もしかしてその時に居た学校だったりしてなど、どうでも良い淡い期待をしながら窓から見える少しのジャージを見る。


 ネイビー色に、黄色とオレンジ色が入ったジャージだった。

 合宿で会ったバチ当て様が着ていたジャージと同じ配色だ。


「・・っ!!」

 ”心臓が音を立てて鳴った”というのはこう言う事かと感じたシンは、驚きながらもバスに書いてある文字を見ようとした。部活のバスなら学校名と何の部活かが書かれている事があるからだ。少なくとも学校名は一般的に書いてある。ネイビー色のジャージの学校なんて幾らでもあるだろう。しかし、可能性があるならと必死で落ち着かせて読む。アルファベットだ。



「あさ・・ひはら・・・ハイスクール。旭原高校?」

 思わず声に出して読み上げたシンにオミが反応した。

「あぁ、旭原高校のバスか。あそこサッカー強いんだよな。付属中学も強くて何回か試合で当たったけど勝ったり負けたりだったわ」

「・・・東京の学校か?」

「いや、山梨」


 いくらインターネットが発達したからと、誰かが情報をまとめてくれない限り学校のジャージの色だけを頼りにバチ当て様を探すのは無理だと思っていたシン。一から自分で探すなんて骨が折れるだけで済めば良い話だ。それに、もし学校のジャージの色などをまとめているサイトがあったとしよう。教育委員会などの公式の団体以外がそんなもの作成したならばきっと警察にマークされるに違いない。つまり、そんなものはないに等しい。


 突然の幸運だ。恐らく合宿の時に出会ったバチ当て様のいる学校は、その旭原高等学校で間違いないとシンは確信した。欲しい情報が向こうからやってきたのである。ただ、そのバチ当て様が何の部活動なのかはわからないままだ。しかし、学校が判っただけでも自分の行動範囲を広げることができる。


「ラーメン食べにきて良かったよ・・・」

 珍しくシンが勝気な笑顔を見せた。

「まだ食ってねぇけどなんでそんな満足した顔してんの?」





・・・ーーー





「ほぉ、でかした。山梨の学校だったか・・・。部活やってんだったらそれ以外で東京うろつく時間も取れないだろ。良かったな。・・・てか山梨から東京にきてわざわざバチ当ての(ごう)をやってくってのもなんか腹立つな。なんか陣地を侵されたみてぇで」

「バチ当て様の管轄とか決まってるのか?」

「ねぇよ」

「じゃぁ良いじゃないか」

「コレでシンは割と自由に動けるね!」

 シンの自由を嬉しいとばかりにキツネが会話に割って入ってきた。

「東京にもまだバチ当ては居るんだ、シンは動いても良いがお前はカバンの中に入ってろ」

「・・・それじゃつまんなくて反論したいけどシンの迷惑になるから仕方ない」

「そんなに外行きてぇなら単体でいけ。ほら、早くみーたんの病院行けよ」

「みーたん、まだ目覚めないんだってね」



 蝉の数も増え、家の玄関や窓を開けると大合唱が大きく聞こえるようになった七月末。今日はシンと甲斐が会う日だ。先日オミと出かけた際に掴んだバチ当て様が通っている学校がわかったシンは、待ち合わせの公園に着いて早速甲斐に報告をした。



「隠してる可能性もあるな。あえて報道しないとか」

「なんで!!ファンが心配しちゃうじゃん?!甲斐くんて勘ぐりすぎるよね?!色々!勘ぐりすぎてなんかいつも話難しくてややこしいもん!」

「ウルセェぞ裏切りギツネ!!シン、コイツ役にたってんのか?」

「え?うん、まぁ。それなりに」

 記憶がイマイチ曖昧なキツネだ。頼りにはならない。


「シン”それなり”ってナニ?!っていうか!甲斐くんシンの事名前で呼んでるー!!」

「ウルセェなテメェに関係ねぇだろ。”シン”って良い名前だろ?俺は息子が生まれたらシンって付けたかったんだよ。昔は”シンノスケ”とか”シンザブロウ”とかメチャクチャ長いからよ。どうせ呼ぶ時は”シン”って言うんだしもう”シン”で良いじゃねぇかって言ってたんだけど結局娘しか生まれなくてな。つけたかったとずっと娘に言ってた」

「別に女の子でも”シン”で良いじゃん」

「女だったらそれはそれで付けたい名前があったんだよ!!」

「だったら娘が子供産んだ時に・・・えっと、つまり甲斐くんの孫が男の子だったらシンにしても貰えば良かったじゃん!」

「何世代にも渡ってしばらく女しか産まれなかったらしい」

「それは残念だね!!」


「そんな話はどうでもいい。で、シン。また来週ここで会うがそれまでに施錠をし過ぎるなよ。良いな。あと、施錠したらどんな奴だったか報告しろ。後日俺が解錠する」

「解錠しちゃったら意味ないんじゃ・・・」

「その場の怒りさえ治りゃ良いんだよ!!人の感情を勝手に操作するもんじゃねぇつってんだろ?!クソガキがっ!!」

「もう本当に口が悪いなぁ」

「説明したってまだお前みたいな平々凡々の平和に暮らしてる坊ちゃんにゃわかんねぇってんだよ!!」

 制服を着ていない、可愛い夏服の女子中学生から出る言葉ではなく、なんともアンバランスである。


「そんな事ないかもしれないだろ?話してくれたら何か少しはわかるかもしれないだろ?」

「・・・ふんっその時が来たら言ってやる。おい、とりあえず腹へった。飯なんか付き合え」

「甲斐くん時間かなりお昼前だよっ?!」

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