第16話 『ミユキ サエキ』
学校の校門に人気アイドル・・・イベントで事件に遭い療養中の『みーたん』が居た。
シンはしまったと思った。最近では裏門から帰るのがバレてしまった為、更にもう一つの小さい西門から帰るはずだったが、今日は合宿の説明会があり、その後に女子と話し込んで流れで正門まで来てしまった。みーたん避けを忘れていたのである。
「シンくん本当にひどい!!電話も着拒したでしょ?!全然つながらないんだから!仕方ないから非通知でかけても出ないしっ!!」
みーたんはアイドルらしさを忘れずにプンプンと可愛く怒る。
現在は他の部活動ももう下校しているから、門の周りの生徒は先ほど逆方向へ向かった女子生徒たち数名だけだ。とはいえ、パーカーのフードを深めに被っただけのこのアイドルは人目を引く。シンが大層面倒臭そうに言う。
「あの、迷惑です」
「ハッキリ?!?!」
キツネが驚く。しかし
「ねぇ?!さっきの女の子達が言ってた合宿ってどこに行くの?!ってか何部なの?!男女混合?!それって文化部って事?てかあの女の子達さぁシンくんに凄く色目使ってたように感じたんだけど?!ねぇ!どう言うこと?!」
シンの話しを一切聞かない上に彼女面してみーたんが怒り始めた。
「・・・この間握手会に行ったアイドルか」
ここでスズが会話に入ってきた。
「みーたんか・・確か本名は、”みゆき さえき”だったか?」
「何よその名前も苗字みたいなの!!”深雪 紗衣”よ!!!」
「では深雪さん、さよなら」
「みーたんって呼んでよ!!あっでもそれもちょっと新鮮かも・・・」
みーたんがうっとりとした隙を狙った。
「スズ、走って逃げよう」
「アッ!ちょっと待ってそれ反則だから!シンくん足速いから逃げちゃ駄目っ!!!」
みーたんが言い終わる前にシンが走り出す。そして、それに続いてスズも走る。二人とも足がとんでもなく速い。
お陰でシンの腕を掴もうとしたみーたんの腕は空振りをした。
「あああああーーーーー!!シン!!待って!!僕をシンの服に掴まらせてーーー!!」
キツネも間に合わずに自力で飛ぶ羽目になった。
ーーー・・・
「君!それ以上は公務執行妨害になるぞ!!」
街中で穏やかじゃない言葉が響き渡る。
もう梅雨明け宣言がまだなだけで実質夏。そう思う程の痛い日差しが降り注いでいる。太陽が頭上の真上にあるこの時間帯。つまり昼時だ。
試験期間中のシンだが、街中におり、文房具店へと来ていた。大きなショッピングモールの中の文房具店だ。他の店で何か起こったらしい。
いつもは明るいBGMがかかり、五月蝿いくらいに賑わっている建物内が、酷く緊張をした空気を醸し出している。小学校や中学校の夏休み入りがまだ先なだけあって子供が殆どいないのが救いだろう。
そんな中、隣のマッサージ店で警察官の声が響き渡った。そして、店内から男性と警察官が出てきた。
「シン!!なんか起こってるよ!!」
「・・・またか。最近多くないか?」
シンはここ最近毎日続けて何かしら騒動を目にする。自分がいるところで問題が起きるようになっているのか、はたまた自分が問題に呼ばれているのか・・・どの道、目の前の怒りを封印することに違いはない。
モールは人が多い。確かにみんな今は警察官と問題の男性しかみていないから見られる心配はない。せっかく手に取った新しいシャーペンの芯や消しゴム、合宿であった方が楽かなと自分のために買おうとしたバインダーなどを持っていたのに少し邪魔だなと思いながら片手を開けた。
みーたんの次を出してはいけない。
周囲に悟られないように何とか騒動の核である男性の顔がわかる所、且つ棚に隠れながら始める。
「早くしないと!あの男の人がお巡りさんに手を出しちゃったら逮捕になっちゃう!!」
「わかってるよ」
「逮捕されて相応の罰を受けりゃ良いんだよ。それに懲りたら二度目はやらないだろう」
冷たい声と言葉が聞こえた。シンとキツネが振り返るとそこには甲斐 操が居た。
「・・!甲斐!!」
「甲斐くん久しぶりだっ!!」
「ほら、早くしないとマッポに手を出すぞ」
「・・・」
今自分で罰を受ければ良いと言ったばかりなのに、施錠を促された。相反することを言っている甲斐に疑問を持ちそうになったが、優先すべきは男の施錠。特に何も言わないが、甲斐が小さい体ながらに周りからの盾となってくれた気がした。
「《表印・・・》」
見慣れた星印が今日も浮かぶ。商品を持っていない方の手を目にかざして、対象の男性を印の中に収める。
「《強制制御》!!」
視界は真っ黒になり、また建物を貫通して青白く雷が男性に落ちる。
【ガシャンッ!!!!!】
この現象はまだ少しだけ見慣れない。そして、もう一つついでに見慣れないものがあった。
「・・っ?!なんか、男の周りにモヤが見える・・・?」
「濃さはどれくらいだ」
「男が見えなくなるほどじゃないが・・・」
「じゃぁ、そこそこの怒りだったんだろうな。人を殺す程だった場合は真っ黒のドス黒い濃いモヤで本人が視認できなくなるくらいだからな」
シンの質問に甲斐が答えてくれた。
つまり、その話が本当なら、みーたんを刺そうとした男性を施錠した時、そのドス黒いモヤが出ていたと言うのだろうかとシンは考えた。
「待て?なんで今になってモヤが・・?」
「お前ここ最近、毎日施錠をしてるんだろ?」
「なんで知ってるんだ?俺たちしばらくは会ってなかっ・・・君も俺のストー」
「殴るぞ。施錠の音は遠くに居ても俺には聞こえる。毎日大体この時間帯に聞こえてた。つまり、学校終わりに連続でずっと使い続けたからお前の授かった力が鍛えられて増幅したんだろう。施錠し過ぎるなっつたろーが」
力の増幅。初めて聞いた。シンはキツネを見た。
「知らない!!そんなの知らない!!」
顔をブンブンを左右に振る。
「だから言ったろ。そんな可愛い見た目をしたマスコット的サポート役なんて意味ない。大体そう言うのは裏切り者だって」
「もー!!本当に酷っ・・・あー!思い出した!ただ使った分だけ力が増幅するんじゃない!継続して使い続ける事で力が増幅するの!そうすると、何か威力が上がるっていうよりか、いろんなものが可視化できるようになるの!!」
「RPGやってんじゃないんだけど」
「それ!経験値的なね!!」
「・・・そもそも、なんで甲斐はそんな事知ってるんだ?前世のバチ当ての時の知識か?でも」
「お前とりあえずその手に持ってるもの買って来いよ。騒動も収まったんだ。未会計の商品は店外に出た瞬間に万引き、窃盗になる。今度はお前が警察に世話になることになるぞ」
店舗の際にいたシンは、もう緊張が解けて雰囲気が変わったモールに気づいた。とりあえず無言でレジに向かった。
問題の男は一旦警察官と署に向かうことになった。施錠されてからは大人しく警察官の指示に従っていた。その様子を見てシンも一安心した。おそらく施錠前に最悪な被害は出ていないだろう。店内の見えないところで起きたことは想像しかできないが。まぁ、店員のトラウマにならなければ良いがと思いながらも自身の気になる事に思考を持っていく。
「・・・聞きたい事が山ほどあるが、どれから聞こうかな」
「悪いがもうここを出る。買い物も済んだし」
「今日は何の習い事?!」
「習い事じゃねぇよ。警察署に連行される男がどこの誰かを調べねぇと後日”解除”ができねぇだろ?」
「・・・身元を自分で調べて後日解除してるのか?」
「ただの女子中学生だ。それしか方法がないだろう。親が警察官のお偉いさんだったら勝手にPCとか漁ったり『娘です』って言って無理やりなんとか情報を強奪しようとも思ったがウチの親はただの金持ちなだけだ」
「・・・凄い嫌味」
キツネが感情を乗せない顔で言った。
「この後署に行って終わるのを待ってたら時間遅くなるだろう?!家は厳しいんだろう?」
「たまにくらい許されるさ。そのための、緊急時ではない日はしっかりと親の言いつけを守ってるんだ。こう言う時のためにな。行っておくが、お前は来なくていい。男女で夜にうろついていると補導対象になる。俺一人なら習い事の帰りだとか誤魔化せる。女子中学生が一人で夜歩いているのは心配の対象にはなるが、警戒の対象にはならないからな」
「うまく使ってる・・・!」
「中身はおっさんだ。ちゃんと危ないやつの嗅ぎ分けもできるから問題ない」
「でも力は女子中学生だろ!!」
「!!」
当たり前の事なのだが、意外な事を言われたかのように甲斐 操が驚いた。
「今の!!今のシンの言葉に!今の性がキュンとしたんじゃない!!??」
「日頃、か弱い女子中学生の扱いを掃いて捨てるほど味わってるわ。なんだキツネ、お前の毛を全て毟り取ってやろうか?」
「ぎゃぁああああーーー!!甲斐くん怖いっ!!!」




