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やまい  作者: 片坂
2/3

2.1s(仮)

よろしくおねがいします。


 トンネルを抜け、山中に出る。

 先にある踏切の遮断桿が森の木々に遮られ立入禁止のコーンバーの様になっている。その左側の道路の電柱付近に彼はいた。位置関係がおかしかったが、彼女が説明しやすいように錯覚させていたのだと勝手に理解させた。

 …あの手の消え方の原因を突き止めるだけだ。その手掛かりを探す。だからあの駅の仕組みの内にいるであろう彼に接触する。それが目下の優先事項。

「だとしても、だよな」

 直接ではないにしろ彼女に干渉すると。逃げ道を塞ぐと決めていても、選択肢を何時までも増やして安心しようとする悪癖が、今は恨めしい。

 彼が気付き、こちらを観察する。

 煙草は吸っていなかった。

「ん?」

「あの、すみません」

「君は?」

「えと、ここに迷い込んでしまった者です。伊佐貫隧道(すいどう)の方から来ました」

「どこに行きたい?」

「かた、…附代駅まで。お願いします」

「わかった」

 副流煙と古い車のにおいのする助手席に座り、首に手を当てて拍動の強さを調べ、早くなってはいないと安心する。

 間違えていなければこの人は次の行動に出るだろう。覚悟を伴わなければならないのは、何年経っても苦手だ。

「始めたか」そうなって欲しくなかったけれど、なってしまったものは仕方ないと鼓舞する。

 運転手の唇が動いていた。読唇術を持っているわけではないので何を話しているのかは解らない。

 全身が動かず指を動かしてすら筋繊維が千切れる様に痛み、寒気もしだした。

 この手の技術には明るくないのであくまで推定だけれど、指向性音波兵器に類似する機能を搭載しているらしい。本来であれば催眠ガス等を利用して昏睡させてから使用する機能だったのだろうが、通用しないのは自明だった。

 そして痛みも体性痛ではなく、意識、もっと表現するなら魂と肉体を分離する作業の一環、その拒絶反応としてヒトの感覚器官に無理矢理当て嵌めたのが痛覚だったというだけなのだろう。証左として駅構内にいた際、僕は肉体を所有していなかった。

 では何故それが判っていたのかは簡単な理由で、一度経験しているからだ。詳細は後々記述するとして。

 運転手、彼を破壊するべきか否か。

 彼と自動車がニコイチとして、車外に投げ出されてしまったらどこに向かうのか判らないし、機能停止をさせようにも仮に破損した場合その個所から二次災害が起こらないとも限らない。

「仕方、ないか」

 左手の人差し指を小刻みに動かし、魂と肉体ではなく肉体のみを切り取らせる。彼の攻撃を鋏、布を僕の肉体として、布を裁断している鋏が開ききったのを狙いそれを捻りリズムを乱して切取り易くさせる様なイメージだ。

 ヒトの、ましてや得体のしれない僕の脳をどうこうするんだ、最適な波長を演算をし直すなら時間が要る。ならば再照射する前に彼の持つハンドルを思い切り回せばいい。

「森の中だから成功はしたのだろうけど、自切はするもんじゃないな…」

 デフロスターの近くにあった指を拾い、ほこりを払って彼に飲み込ませる。こうすれば血中の精神防壁が働く間は彼の脳にアクセスし、ある程度の情報は得られるし、伸ばした芽(血液から延びていく神経接続器官)を吐き出させれば精神汚染も防げる。

 そうして這入ってきた最初の情報は彼女の親御さん宛になっているあの子の監視記録だった。

「妄想であって欲しかったな…」

 文構成が崩れてしまうけれど、ここで一度過去を回想する。読んでくださっている皆様への説明が一番の理由だけれど、久しぶりに使ったこの体質の遠因を顧みるべきだと思ったからだ。

読んでいただきありがとうございます。

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