17.手紙
「あ、そうだ。手紙書かないと」
「ビリーにお手紙?」
「そうそう」
「書く!」
レターセットを取り出し、スピカにも便箋を二枚渡す。近況報告はスピカに任せ、私はダンジョン産野菜と神様からのギフト、それから神様からのお言葉についてサラサラと書いていく。
またスライムの粘液は瓶に入っているため、野菜箱ではなくポーション保管用の木箱に入れた。ダンジョンのドロップ品で瓶に入った液体が出ることがたまにあるので、一応いくつか空箱を持っていたのだ。
こちらの瓶も野菜ダンジョン産なので、料理に使って欲しいと書き加えておく。本当にざっくりとした説明だが、ビリーも鑑定が使えるので分からなかったら鑑定をかけることだろう。
二つの箱を一回り大きな箱に入れておく。
便箋を封筒に入れて。スピカのお手紙が書き終わるのを待つ。
「出来た!」
「じゃあこれに入れて〜」
封筒に入れてもらい、魔法で封をする。便箋の端っこに『魔封』と書くのも忘れない。見た目は封蝋と変わらないのだが、こちらは送った相手以外の人が開けると魔法が発動する仕掛けとなっている。
信書なんかに使われるのが一般的とされるが、冒険者の中には封蝋を買いに行くのが面倒だからという理由で使う者も多い。郵便物をあまり出さないならなおのこと。
それにいつもそうやって出していればどの手紙が重要なものなのかが判別しにくくなる。自衛の一種でもあるのだ。
もちろん箱にも同じく魔法で封をして、完了だ。
それから二人でお風呂に入り、スライムパックをする。昨日はそこからすぐに寝たが、今日の私はやりたいことがある。
「あの爆弾、私でも作れるかな」
ダンジョンで見た錬金術師が使っていた爆弾を作ってみたいと思ったのだ。私が魔王討伐の最中に作っていたものの多くがサポート系のアイテムである。それ以前も爆弾はお父様頼りだったので、あまり作ったことがない。
ただ爆弾にも属性があって、組み合わせが重要視されることだけは知っている。変なものを組み合わせ、意図しないものが出来上がると使用時に危険を伴う。想定通りの効果を生み出すのは大変なのだ。
特にダンジョンのような閉鎖空間でも使える絶妙な威力に調整するのは至難の業である。野菜ダンジョンが広めとはいえ、空気の流れだって外とは異なる。
例の錬金術師は何種類かの爆弾を使い分けていたようなので、やはり下層に行くごとに影響が変わってくるのだろう。私はまだそこまで詳しいことは考えられない。だが威力を最小限に抑えたものであれば作れる。
ちょうど手元にいくつか魔石と爆弾に使えそうな材料がある。試しに作ってみることにした。
「時間かかるからスピカは寝てていいよ」
「ううん、見てる。錬金術楽しいもん」
「かき混ぜてるだけだよ?」
「色とか匂いとか変わるよ? 楽しい」
「そっか。危ないから、ベッドに座りながら見ててね」
「うん」
幼い頃、私も父に似たようなことを言われたな〜。そして同じような言葉を返した。スピカには錬金術の才能があるかもしれない。
ぐるぐるとかき混ぜることしばらく。
ぷかぁと赤い球体が浮いてきた。素早く引き上げて水気を拭き取ってから鑑定をかける。
「下級投擲用爆弾。えっと威力も二、三体弱い魔物を倒せると。うん、問題なさそう」
表示された文字を目で追いながらウンウンと頷く。想定通りのものが出来上がって良かった。野菜ダンジョンならこのくらいの威力で十分だ。
マジックバッグの中で誤爆しないよう、ロックがかけられるようにした。ツマミを捻るだけなので使用時でも困らない設計だ。
「よし、同じのをもっと作ろう」
「爆弾いっぱいだね」
「下層に進めば他の冒険者もほとんどいないし、練習にも持ってこいだから」
「スピカも投げたい」
「いいよ。二人で投げよう」
その後も釜からいくつもの爆弾を掬い上げ、合計十個の投擲用爆弾が出来上がった。『投擲用』とわざわざ表示されるくらいだから『置き型』とか『括り付ける用』とかそんなのもあるのかなぁなんて思いながら、ロックをかけてからマジックバッグに入れる。
道具を片付けてから振り返る。スピカの瞼も限界に近かった。今日はよく動いたし、疲れてしまったようだ。
「待たせてごめん。寝ようか」
「おお〜」
ウトウトとしながら天井に拳を突き上げる。可愛いスピカを支えながらベッドに横にさせて、上から布団をかける。私もスピカを見ていたら眠くなってしまった。隣のベッドに入ればすぐに眠りの世界へと落ちていくのだった。




