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16.神様からのギフト

 第三、第四と下りながら素材を集める。

 大豆豚は多めに、ブロッコリー羊やにんじんウサギなどスピカが倒してくれている。私はそれを拾いながら近くに生えた野菜を採取していく。


 道中、何人もの冒険者を見かけたが、中でも一際目立つ人がいた。


「あの爆弾、どうやって作ったんだろう」


 ソロで散策を続ける錬金術師である。

 爆弾を放り投げ、大量の魔物を一掃する姿は惚れ惚れとする。見慣れない爆弾はどんな魔法と素材を組み合わせたのか。


 あまり見ていると悪いとそっと目を逸らしながらも、爆発音が聞こえるとつい目で追ってしまう。すると彼もこちらを向いた。そして何か言おうと口を開いた。


 けれどその声よりも先にスピカの声が響いた。


「お嬢、階段見つけた!」

「今行く」


 スピカの方を見て返事をする。視線を戻したときには彼は姿を消していた。何か言おうとしていると思ったのは私の気のせいだったのか。気を取り直してスピカの待つ階段へと向かう。


 下に降りていくと、何度も彼を目にした。

 私が見てばかりいるからか、はたまたあちらも私達が気になるのか何度も視線が交わった。


「お嬢、お腹すいた」

「ご飯にしようか」


 近くの魔物を倒してから保存食を取り出す。それからドロップ品で手に入れたトマトも。魔法で軽く洗ってからスピカに渡す。


「パン買ってくればよかったかも」

「スピカ、このお肉いらない」

「保存肉は嫌?」

「おいしくない。トマトはもっと欲しい」


 保存肉は塩が多めに塗り込んである。人間でもちょっと塩味を強く感じるため、獣人のスピカにはキツかったのかもしれない。


「ごめんね。きゅうりもあげる」

「ありがとう」


 じゃばじゃばと洗った端からスピカがシャキシャキと食べていく。途中で採取したレタスも一緒に載せれば、それもパクパクと。保存肉には一切手をつける気配はない。


 遠くの爆発を眺めながら、私も遅れて野菜に手を伸ばす。

 同じ野菜でも味が全く違う。レタスに鑑定をかけると『ヒラヒラしているものが美味しい』と出てきた。二度目に潜るときは鑑定をかけながら進むのもいいかも。



 休憩が終わってから散策を再開。

 最下層まで近づくと冒険者はほとんどいなくなっていた。


 他のダンジョンだと泊りがけで潜る冒険者も多いのだが、野菜ダンジョンではどの階層でも出てくる魔物はほとんど変わらない。ダンジョンでお馴染みの宝箱もほとんど取られているらしく、最下層のボスを倒す以外では下まで潜るメリットはあまりない。


 この階層にいるのは、私達と例の錬金術師くらいだ。彼は淡々と魔物を狩っているようだが、何か目的があるのだろうか。


 気になるが、私達の目的は神様からのギフトである。


「何があるかな〜」

「ね、楽しみ」


 スピカと二手に分かれて『何か』を探す。

 この階層は魔物はあまりおらず、野菜が大量に生えている。この野菜の中に特別な野菜があるかもしれない。ということで二人で採取をしながら捜索していく。


「やけにかぼちゃと甘芋が多いような?」

「ビリーがいたらお菓子できるのに……」

「第一階層にお菓子作ってる店あったかな」

「食べられる?」

「持って帰って聞いてみようか」

「うん」


 そんな話をしながら探していると、視線の先に野菜以外のものがあった。だがギフトというよりもこれは…….。


「野菜箱、だよね?」


 第一階層の買取カウンター裏にあったものとよく似ている。箱に赤字で『鮮度命』と書かれているところ以外は同じである。第一階層の屋台横に置かれていたらスルーしてしまいそう。


 だがここは最下層。間違って持ってきたとは思えない。わざわざマジックバッグに入れて持ってくるようなものでもないし……。


 鑑定してみると表記上に『神からのギフト』と出てきた。

 見た目はまんま野菜箱だが、この箱に入れれば時間を止めることができるとのこと。つまりダンジョン産の野菜も外に持ち出すことが出来るようになる。


「これは冒険者だけじゃなくて貴族も欲しがりそう……」


 食べ物の劣化を防げるのはもちろん、素材の劣化も防げる。錬金術でも採取時間が重要視される素材は多い。需要はかなり高いはず。


 今まで最下層まで来て野菜を採取する人はいなかったのだろう。

 宝箱に入っている訳でもなく、ただ普通の箱が野菜の中に埋もれているので分かりづらい。


 私も神様からのお言葉がなければ気づかなかったことだろう。


「これに芋とかぼちゃを入れてビリーに送るようにってことかな。スピカ、今まで神様に野菜を使ったおやつって捧げたことある?」

「かぼちゃと甘芋」


 見事にここにある野菜である。ちょうど採取したものがあるので、それを隙間なく詰めていく。上の階層で取れたにんじんも一緒に。


 パンパンに詰め込んでから、マジックバッグに入れた。



「あとはボスを倒して帰ろう」

「おやつ食べる!」

「ハンバーガーも頼もうか」

「いっぱい! スピカお腹減った」


 ダンジョンボスは今までの階層で出会った魔物が混ざったような魔物だった。案外固く、倒すとゴロゴロと野菜が落ちてきた。


 それを集めて下ってきた階段を登っていく。

 スピカの要望でトマトときゅうり、レタスを沢山採取しながら。


「嬢ちゃん達、たくさん取ってきたか」

「たくさん取れた! 今からいっぱい作ってもらうの!」

「おやつを作ってくれるお店ってありますか?」

「ああ、そこの赤い看板が立っている小屋がデザート専門だからそこにいくといいぞ」

「ありがとうございます」


 教えてもらった店と、朝に寄った店に野菜を持ち込む。調理待ちの間に残った野菜を持ち込むとかなりの額になった。野菜ダンジョン専門で潜り続けても良い生活が送れそうだ。



 ご飯をたらふく食べてから宿へと戻る。部屋に戻ってから錬金アイテムの『隠し布』を取り出す。

 これはお父様が作ったアイテムで、認識阻害の効果がある。


 大切なものを隠す時や暗殺から身を守る際などに役立つようにと開発したものだ。

 存在を公にすると何かと厄介なので、いざという時にしか使ってはいけない約束となっている。


 今回は神様からのギフトを隠すために使用するのでお父様も許してくれるはずだ。

 野菜を詰めた箱をこれで包んでから、明日ダンジョンに行く途中に郵送を頼むつもりだ。

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