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11.屋台飯は一回三つまで

「お嬢、これ食べたい!」

「スピカ、三つまでだよ」

「むうっ……」

「おなか痛くなったら嫌でしょ」


 馬車を降り、降りた町で一泊した。

 そして朝になってようやくビリーの言っていたことを理解した。


 スピカが食べる量は勇者達三人が食べる量と同等だったのだ。


 夜はすでに屋台が閉まっていたから我慢していたそうで、宿で出してもらった朝食がなくなるのは一瞬だった。夜も朝も私の分を分けてあげたのだがそれでも足りず。スライム狩りの前に町の屋台で買い食いをすることに決めた。


 メイン通りにはずらりと並んでおり、それらの店全ての前で「食べたい」と声をあげるのである。


 確かにどれも美味しそうだ。だが全てを食べることは出来ない。

 いくらスピカがたくさん食べるとはいえ、食べたいだけ食べてはおなかが痛くなってしまう。



『屋台のご飯は一回につき三つまで』


 それが出かける前、スピカがビリーとした約束だった。


 一カ所で買う量は私に任せてもらっているので、多めに買う予定ではある。だがスピカはどれも食べたいようで頬を膨らましながらむくれている。


 そんな姿も可愛く、道行く人々が屋台飯を手に微笑ましそうに眺めている。


「帰ってきたらまた三つ食べられるから」

「……じゃああれ食べる」

「ラップサンドね。何を巻いてもらう?」

「お肉」

「ジュースもつける?」

「うん!」


 ジュースの一言でスピカの機嫌はすっかりと治ってしまった。

 そのうちにラップサンドを四つ購入する。一つは私の分で残りはスピカだ。

 ある程度おなかが満たされれば残りの二つも決めてくれることだろう。


 その考えは正しかった。

 近くのベンチに腰掛け、ラップサンドを食べながらじいっと他の店を眺めていた。そして食べ終わった頃には食べたいものを二つ、ぽんぽんとあげてくれたのだ。


 ……どれもがっつりとした肉料理だったが。

 それだけおなかが空いていたのだろう。帰ってきたらたくさん食べさせてあげよう。今度から気をつけないと。



 スピカが食べている間に昼食用のご飯を買っておく。

 それから保存食とドライフルーツ、飲み水もマジックバッグに大量に入れた。今まで買っていたのと同じくらい。いや、それよりも少し多めに。



「じゃあ行こうか」

「うん!」


 手を引いて、二人で草原の方へとずんずんと歩く。

 そして途中で冒険者ギルドの看板を見て、ハッとした。


「そういえばスピカって冒険者登録してる?」

「ぼうけんしゃとうろく? なにそれ?」


 お父様用の素材採取がメインだったからだろう。

 ビリーが冒険者登録をしているので、余った素材はビリーがギルドに持ち込んでいたのかもしれない。


 討伐依頼のように冒険者として仕事を受けるのであれば注意されるが、素材を売るだけならかなり緩いのだ。身元がはっきりとしているというのもある。


 だが旅の資金を考えると、冒険者としての仕事を受けておきたい。


 私はすでに登録を済ませているが、旅の途中は勇者パーティとして仕事を受けていた。

 勇者はどこの国でも知られているし、個人で仕事を受けることがないので、パーティとしてカード一枚で事足りた。それに私が身分を隠すにはちょうど良かった。



 なので個人での活動に含まれず、八年間仕事をしていない私の冒険者登録は凍結してしまっている。


 解除料金を払って解除してもらわないと。

 一緒にスピカの登録もささっと済ませてしまおう。


「じゃあ先にギルドに行こうか。ついでに仕事もいくつか受けておこう」

「お仕事?」

「そう、お仕事。といっても簡単な討伐だけど」


 登録したばかりの冒険者が受けられるのは簡単な薬草採取と討伐だけ。

 慣れないうちに実力よりも高い仕事を受けるのを防ぐ役割と、仕事に慣れる役割の二つを担っている。


 そのため仕事を何度かこなしてランクを上げないと、同ランクの冒険者以外とパーティを組むことが出来ない。


 討伐出来る魔物はスライム・コボルト・ゴブリンの主に三種類。大体どこの地方にも生息しており、数も多く、あまり強くないのが特徴だ。


 ただしコボルトとゴブリンは気をつけないと同じ群れに上位種がいる可能性がある。慣れないうちは注意が必要だ。


 といってもコボルトとゴブリンは上位種を含めても売れる素材はほとんどない。あくまでも討伐して数を減らすことがメイン。


 最上位種や魔法を使ってくる種でもない限りさほど強くもないので報酬も低く、受けるのは冒険者になったばかりの者くらいなものだ。


 私もこれらの討伐依頼を受けたのは冒険者になったばかりの頃だけ。


 スピカの冒険者登録が済んでいない理由の一つがこれなのだろう。

 一つ一つ段階を踏ませるのは効率が悪い。ビリーが登録しているのも不要な素材を売るためで、依頼はほとんど受けていない。


 依頼を受ける目的もお金ではなく、カードを失効させないため。

 討伐依頼を受ければ、討伐証明として素材を回収されることも少なくはないからだ。


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