その後
大変遅れまして申し訳ございません。
お腹の上に、何か温かくて重いものが乗っている。
邪魔だなぁと思って、身じろぎをすると、キャウンという鳴き声がした。
なんだ……?
寝ぼけ眼を擦り擦り、ゆっくりと身を起こす。
ベッド脇の床を見ると、黒い毛玉がぐでーっと横たわっていた。
「お前か……」
どうも、俺の腹の上に乗っていたのは、このカールトンだったらしい。
コイツを拾ってからもう3、4ヶ月が過ぎたが、そんな短期間でもぐんぐんと成長し、すでにかなり重くなっている。結構大きくなる犬種だったりするのだろうか。
ベッドから出ようとして、脚が包帯に包まれていることに気がつく。
「……ああ、そう言えば……」
俺、トロルと戦って怪我したんだったっけか。
しかし、記憶にある怪我と今の怪我が一致しない。その上、痛みもあまり無い。
不思議に思ってよくよく見てみると、包帯と重なって微かな光の粒が見えた。
「ああ、なるほど……」
どうやら、ある程度は治癒術で治療されているみたいだ。多分、救援に来た教師のうちの誰かがやってくれたのだろう。
思えば、トロルの最後の一撃を防いだのもそうなのだろうか。
「うぅん……」
しかし、なぁ……。
何か引っかかると言うか、大事なことを忘れている気がするようなしないような。
「……ま、いっか」
ボソリと独りごちて、ベッドから抜け出す。
足元にじゃれついてくるカールをいなしながら、レイチェルたちがいるであろうリビングへ向かう。
一人息子が帰ってきたと思ったら、大怪我をして気絶していたのだ。きっと心配しているだろう。
◇◆◇
心配してる……よな?
リビングの扉の前、ドアノブに手をかけて、しばし硬直。
足元のカールが、開けないの、とばかりに見上げてくる。
ドアの向こう側からは、楽しげな談笑が聞こえてきていた。
もうちょっとこう、沈んだ感じだと思っていたのだが……。まあ、命に別状はないのだ、こんなモノなのかもしれない。
「……おはよ」
ドアを開けた。
部屋の中を見た。
「……」
驚いた。だって……。
「あ、アルおはよっ! もう痛くない? だいじょぶ? あのねあのね、実はね、昨日の夜ね──」
ちょっと思考停止していると、たちまちミーティアが寄ってきて、マシンガントークをおっ始めた。よほど俺に伝えたいことがあるのだろう。まあ、その興奮の理由も、内容も、この部屋を見れば大体は判るのだが……。
兎も角。
「おーけーおーけー、話は後で聞くから……」
なおも話を続けようとするミーティアをとりあえず脇へ押し退けて、俺の驚愕とミーティアの興奮の原因たる人物に話しかける。
「……お久し振りです。ちょっとやつれましたか?」
「まぁ、いろいろあったからね……」
その人物──クリストフは軽く苦笑して、ソファから立ち上がった。
一年前と大きな変化はない。さしたる怪我もしていないようだし、無事で何よりだ。ただ、少しやつれた感じがするのは気のせいではないだろう。少し薄汚れたローブがこの一年の苦労を物語っていた。
「……まぁ、君も色々有ったみたいだけれど」
全くだ。本当に、色々ありすぎたのだ。逃避行から始まり、やっと王都に着いたと思ったら次は入試のゴタゴタ、バイトに商談、さらには出産。挙げ句の果てには死にかけると来た。
本当に、大変な1年だった。
これにて第二章は終了となります。
このまま間章を投稿しながら3ヶ月くらい開けて第3章……と行きたいところなのですが、今年1年は私用でかなり忙しく、3章を投稿できるのは早くとも来年の6月くらいになりそうです。
今年は、時間があれば間章を更新しつつ、3章の構想を練っていきたいと思います。第2章のグダグダ更新はみなさんご存知の通りと思います。3章はそんな事にならないよう、入念に準備をしていきたいと思います。
ここまで拙作を読んでくださり、ありがとうございました。




