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試金石5

とっても遅くなりまして申し訳ございません。


 


「こっちだ!!」


 トロルに軽く術を当て、ジョシュアとモルガンから離れた方へと誘導する。戦闘の余波で死にましただなんて、シャレにならん。


 倒れた2人には脅威はないと考えたのか、すんなりと誘導できた。


 


 

 醜く太ったトロルと正対する。こうやってみると、なかなかに太々しい顔をしている。さんざつついてくれた羽虫もあと1匹、そんな感じだろうか。

 まあ、他2人と比べても俺は飛び抜けてチビだからな、舐められるのも仕方ない。だがね、背丈と術の上手さは比例しないのだよ。そういうことをきちんと教えてやらなくっちゃ。

 さっきは不覚をとったが、もうあんなことはない。油断はしない。驚きもしない。ただ、こいつを叩き潰すことだけを考える。時間稼ぎだなんて小賢しい真似をしていたら早晩負けるだけだ。そんなものが通じるような相手でもないことはよーく分った。


 だから、もう、全力で行こう。出し惜しみなんて無しだ。




 とりあえずの覚悟は決めた。あとはやるだけだ。



 そんな殺意が伝わったのか、トロルは手のひらに魔力を集め、術で棍棒を形作ろうとする。


「発動がァ……遅い!!」

 ついでに注意がおろそかだ。

 そんな絶好の隙をミスミスと見逃すようなことはしない。間合いを取るために後ろに下がりながら、即座に魔法陣を展開する。


 ──水斬(ウォータージェット)


 岩をも砕く超高圧の水流が、トロルの脂肪を削り、筋肉を削り、そして内臓にまで届く。

 トロルは“ぐほぉっ“と息の抜けるような悲鳴をあげ、腹を抱えてうずくまった。水斬は未だ持続していたが、うずくまった拍子に頭に当たり、ブ厚い頭蓋骨に阻まれてダメージを与えられない。とはいえ衝撃は通っているだろう。脳震盪くらいはしていてほしいところ。


 このまま追撃をかけようとして、しかし、慌ててその場から飛び退く。直後、さっきまでいた地面からバンっと土の槍が生えた。危ない。


 トロルが何事もなかったかのようにムクっと起き上がる。こいつ、すでに回復していた癖にうずくまってやがったのか。小賢しいことをする。


 トロルがやっとこさ生成した棍棒を地面に叩きつけた。魔力回路が地面に奔る。


 ボガガガガッ!


 「よっ、ほっ、とっ」


 地面から立て続けに生えてきた石の棘を横っとびに回避する。が、避けても避けても足元から生えてくる。

 それを避け続けるうちに自然と、トロルの周りをぐるぐると回るような形になっていた。


 埒が明かん。


 回避を続けながらも魔導書をめくり、足元に魔法陣を展開、トロルの術式を上書き、石柱を生やしてその上にヒョイっと着地した。

 そして、ふぅっと一息……ついたところを攻撃してきた棍棒を跳び上がって避け、バック宙をしながら──こんな動きができるのに自分でも驚きだ──トロルの顔面に適当な術を一発お見舞いする。

 下級程度の術とはいえ、目眩し程度にはなったようだ。トロルが目を瞑った。その隙に後退して距離を稼ぐ。


 が、距離が空くと即座に牽制の術をばら撒いてきた。飛んでくるのは主に岩砲弾(ロックシェル)だが、その未熟さを表すようにところどころ出来損ないが混じっている。

 すぐに結界を展開して体を覆い、術を弾く。


「うっ……?」

 そうして術を維持していると、目の前が一瞬歪んだ。それに伴って集中が乱れ、結界が不安定になる。


「──ッ!」

 たちまち結界が破れた。石の塊が身体中を乱打し、痛みと共に身体が吹っ飛ばされる。


「くは……っ!」


 地面に背中から叩きつけられ、衝撃で肺から息が抜ける。

 息ができず硬直した身体を気合いで無理やり動かし、横に転がる。その体躯からは想像できないほどの俊敏さで跳躍したトロルが、その手に握った棍棒で叩き潰そうとして来たからだ。


  右腕を覆う魔力回路に魔力を流し込み、無理やり跳ね起きて距離を取った。

「うゥっ……?」

 着地した拍子に、左脚と左肩に激しい痛みが走る。見ると、左脚はズボンが破け血が滲み、じんじんとした激痛が絶え間なく走る。力も入らないし、多分骨折れた。

 左肩は脱臼したのかうまく力が入らない。それ以外も、破片が当たって出来た擦り傷が沢山だ。


 腕はともかく、足は治さないと戦闘ができない。兎にも角にも治そうと、魔導書を開こうとして愕然とする。


 魔導書のど真ん中にどでかい穴が開いていた。


 多分さっきの術の一つが直撃したのだ。まあ、バラバラにならなかっただけマシなのかもしれない。

 しかし、これでは魔導書ではなくタダの紙の塊だ。

 ダッテ、多分魔法陣全部ブッ壊レテル。


 最悪だ。怪我よりも最悪だ。怪我は術で治せば良いが、魔導書は今すぐ直せない。その上俺の戦闘力はガタ落ち。今気が付いたが、魔力もヤバい。上級をあと1回撃ったくらいで打ち止めだろう。

 身体強化を使いすぎた……。

 魔力残量を把握できない術師は三流だ。そんな言葉が脳裏に蘇る。


 頭からサァッと血が引いた。痛みも最早気にならない。


 もしかして、詰んだ?








 ──いや、まだだ。諦めるな。まだ魔力はある。まだ動ける。まだ術は使える。


 まだ、どうにか出来る。

あと二話くらいで2章は終わるはずです。長くなってごめんなさい。ちょっと私のプロットが大雑把すぎて……。

次はもっと早く載せられるように頑張ります。

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