図書館・続き
短いので今日はもう1話投稿します。多分17時くらい。
「ないなぁ……」
見える範囲の棚をあらかた探してみたが、人位級以上について書かれた本は見つからない。上級まではゴロゴロ転がっているのだが。
「何を探してるの?」
そこらへんで、適当な本をパラパラめくりながら「ほー」とか「へー」とか気の抜けた声をあげていたユリアーナが聞いてきた。
「人位級以上の術について書かれた本です」
「へー……って、人位級!? そんなの探してどうするの?」
「どうって……。普通に習得するんですよ」
「人位級を? 無理じゃないかなぁ……」
む、諦めたらそこで試合終了って誰かが言ってたぞ!
「きっと出来ますよ。だって、あの辺境の天才とかいう人も使ってましたし」
「モルガン様? あの人は特別だよー。だって、天才だもの」
ユリアーナの憧憬と諦念のこもった言葉に、心を抉られる。
「……そすか」
ここまではっきり『お前は凡人だ』と言われると、流石にへこむ。そりゃまぁ、前世知識でどうにかやっている凡人ではあるが、そんなはっきり言わなくても……。
「あ、あとここの棚にはないと思うよ?」
「えぇ!?」
じゃあどこの棚にあると?
「多分、別の書庫にでもあるか、そもそもないとか、じゃない?」
「何故です? 危険だから?」
「違う違う、人位級以上の術は、教えられないからよ」
「えっと、仰ってる意味がよく分からないのですが……」
「だって、人位級以上の術は、それぞれの流派に弟子入りしないと教えてもらえないでしょう?」
なんだそりゃ。
「初耳なんですが」
「うそ、常識じゃないの?」
あなたの常識は私の非常識、これ常識。
「まったく。……でも、何でです? そんな、わざわざ隠すような……」
「そりゃあ……。……なんでかしらね?」
をい。
まぁ、そんな術師の常識を教えてくれなかったクリスを信用できるのかどうかはともかく、術の秘匿はクリスが言う流派間の不仲によるものだろう。術が他流派に知られない様に、というのもそうだろうが、おそらくは才能ある人間を取り込むのが狙いだろうか。弟子入りするとは、つまりそういうことだ。他の流派への鞍替えは難しい。
できればそんなドロドロには巻き込まれたくはない。それに、そのシステムだと一つの属性の術しか習得できない。どうにか裏道は無いか……。
いや、待てよ。
「学院では教えてくれないんですか?」
術師を養成する機関だ、そのくらいは教えてほしい。
「うーん、どうかしら……」
返答ははっきりとしない。
これでは、大金払ってここに来た意味がよくわからなくなってしまった。そもそも、上級までしか習えないのなら、なぜクリスは俺をここに通わせようとしたのだろう。上級までは完璧に使えるのだから、意味がないと思うのだが。
あいつの意図が分からない。
まあ何にせよ、まだ授業も受けていない。案外再発見があるかも知れないし、上級までとはいえこれだけの本は貴重だ。そのうちクリスを問いただせば良いだろう。
ああそういえば。マティアスが人位級火術師だとか言っていたっけ。媚び売りまくったら教えてくれたりしないだろうか。
気は進まないが、それも一つの選択肢に入れておこう。




