合格発表
「【地裂】」
広場の踏み固められた地面に深い裂け目が走り、四つ目の的を飲み込んだ。
「ふぅ」
四属性上級、全て使ってみせた。これで試験内容は終わりのはず……。
が、試験官が何も言ってこない。
「あの、試験官さ……」
絶句してた。
口をポカンと開けて、目ぇかっ開いて白目剥いて……。魂が口から飛び出てポワポワと浮いているのが幻視できそうだ。
……というかコレ、絶句じゃなくて気絶してね?
句が絶えるんじゃなくて、気が絶えてら。
え? マジウケるんですケド。何で気絶してんのww
……ヤベェ、三十路のおっさんがJK言葉を口にしてしまった。
まあ見た目年齢5歳なのでセーフだろう。
それより、何でこんなビックリしているのだろうか。最初に全属性上級を扱えるって言ってあったし、それが本当かどうか確かめるためにあんな試験を出したんだろうし。
そもそも、あの天才くんの人位級の方がよっぽどびっくりしただろうに。
もしかして、15歳(?)の人位級よりも、5歳の上級の方がインパクトがデカかったのだろうか。
……やっぱ俺ってばすごいやつなのかもしれない。ふふふ……。
「…………何を、しているのかね」
ヒィッ!
突如、背後から聞き覚えのある声がした。
この、聞く者全てに緊張感を与える声は……。
「……っ!? げ、ゲオルグ教頭っ!」
も、片眼鏡っ!
俺の背後にいたのは、あの皮肉な一つ目の悪魔だった。ビビらせんなよこんちくしょう!
……この皮肉屋のことだ、今度は一体何を言われるのだろう。ああ恐ろしい!
そんな俺の戦慄もそっちのけ、片眼鏡は試験官氏にぐちぐちとお小言を言い始めた。
「たかだか上級程度でこのザマかね。全く、先が思いやられる」
「め、面目なく……」
試験官氏はひたすらへーこらしている。そういえばさっきも教頭とか言っていたし、モノクルは結構なお偉いさんだったようだ。
しかし、そんな人が俺みたいな平民の応対なんてするのか……?
というか、もう帰っていいだろうか。試験も終わったことだし。
そんな事を考えながら、足で砂をいじっていると、キラリと片眼鏡を輝かせながら片眼鏡がこちらを向いた。
ややっこしいなコレ。
どうやらお小言の矛先が俺に向いたようだ。果たして何を言われるのか。的めっちゃ壊しやがって? それとも訓練場めちゃくちゃにしやがって?
「ふむ。まぁ、よかろう。今日は帰って良いぞ。合格発表は明日だ」
あるぇえ?
もっとこう、ぐちぐちねちねち言われるものだと思っていたのだが。いやもちろんそんな事を言われるような心当たりはないが。
「あ……そすか」
何だか拍子抜けしてしまった。色々言い訳とかも考えていたのだが、無駄になってしまったようだ。
……まあ、帰っていいと言うのならありがたく帰らせて頂こう。
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翌日──
「この辺りも、変わらないわね……」
王都中心街の街並みを眺めて、レイチェルがしみじみと呟く。
「そうなの?」
街なんて何年か経てばガラリと変わるものだと思うのだが。久しぶりに故郷の田舎に帰ってきても、『ああ、変わらないなぁ』なんてことはないのだ。
「ええ。最後にここに来たのは…………10年くらい前だったかしら」
へぇ。案外昔だったようだ。まぁこの世界じゃそんなに交通も発達してないし、旅行するという事も少ないのだろう。それとも貴族的な用事とかがあって来たのか。その頃はまだ、結婚していなかったようだから。
ちなみに、今回の用事は合格発表である。保護者同伴なのは、合格していた場合すぐ入学手続きやら何やらをするからだ。
つまり不合格だった場合は、来ただけ無駄になるのだが……。
おそらく合格しているだろうから、その心配はないだろう。
多分、おそらく、きっと…………合格している、はずだ。合格していないと困る。
いやでももしかしたらアホみたいなケアレスミスしてるかもしれないし……。
……これ以上考えるのはやめておこう。
今となっちゃどうしようもない事だ。なるようになるさ。
◇◆◇
「あ、学院が見えて来たわね」
しばらく歩くと、前方に学院の門が見えてきた。そこには試験の合否が書かれた紙が貼り付けられていて──
「スゴイじゃない。合格してるわよ!」
「な、ナンダッテー!?」




