進歩
「どうだ? 驚いたろ。これは火術と言うんだ」
火術? 魔術じゃないのか?
「ちょっと、クリストフさん! 子供の前で火を使わないでください。危ないでしょう!?」
レイチェルはご立腹な様子だ。
子供の前で火遊びをしたイケメンーークリストフというようだーーが許せないらしい。
「す、すまない」
さっきからこいつ、謝ってばっかじゃね?
知的イケメンの称号は返上だな。
それはともかく。
魔術だ。魔術!
魔術とは言わないらしいけど。
ま、何もないところから火出すんだから魔術でいいよね。
クリストフはあの火を出すのを火術と言っていた。
てことは、水術とか風術とかもあるのだろうか。
とりあえず、魔術は覚えたい。
ロマンがある。
現代科学知識でチートとか!
教科書的なのはないだろうか。
後で探してみよう。
クリストフに教えてもらうのが一番早いだろうが……。
それは最終手段かな。
教えてくれるか分からんし。
それに、0歳児が普通そんなこと言わないだろう。
ある程度、不自然じゃないくらいに成長するまでは独学でいこう。
「おっと、もうこんな時間か。帰らないと。……それじゃ」
クリストフは帰るようだ。
レイチェルが、俺を抱えて玄関まで見送りに行く。
クリストフが手を振ってきたので、こちらも振り返してやった。
クリストフが見えなくなってから、家に戻った。
「アル、疲れたでしょう。お昼寝しましょうか」
そう言って、俺をベビーベッドに寝かすと、その隣に椅子を持ってきて座った。
そして、一冊の本を取り出すと、読み聞かせを始めた。
「昔々ーー」
絵なんてほとんどない字だけの本だ。
彼女はこれを0歳児に読み聞かせて、理解できると思っているのだろうか。
まぁ、俺は理解できるのだが。
言葉の勉強にもなるので良い。
そんなことを考えているうちに、瞼が重くなってきた。
全く、この体はすぐ眠くなるなーー
「ふふっ、おやすみなさい。アル」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
半年後ーー
やっと固形物を食べられるようになった。
薄味のお粥とはおさらばだ!
半年の間に色々進歩があった。
まず、ようやく歩けるようになった。
立てる、ということがこれほど素晴らしいことだったとは……。
立てるようになったことにより、今まで届かなかったドアノブに手が届くようになった。
つまり、部屋の移動ができるようになったということだ。
そしてとうとう……。
魔術の教科書を見つけた!
やはり火術以外にも水術やら風術やらあるらしい。火、水、風、土、治癒、結界、召喚の7冊があった。
他の本は少ないくせに、魔術関連だけやけに充実していた。
明らかに不自然だが、まあいい。
それがあるということが重要なのだ。
早速、読んでいこうと思う。




