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圧迫面接

「──1歳で初級の術を操り、3歳で全属性上級を習得、と。成程、ここに書かれているのが真実であるならば、確かに君はかなり優秀なようだな」

「では!」

「──だが、ダメだ」

「っ! 何故ですか? 僕が平民だから?」

「それも、ある。そもそも前例が少ないのだよ。平民が学院(ここ)に入学したというね。

 ……それ以上に、だ。推薦者、クリストフ・()()()()とはな……。これは、(かた)るにしてもやり過ぎであろう」


 フランメ? クリスに家名なんてあったのか?


「確かに、この紋章はかの一族のものによく似ている。だが、似ているだけだ。そもそも、クリストフ・フランメなどという者は、居ない。よって、この書状は無効。何の保証にもなりはしないのだよ」


 そう言うと、紹介状をビリビリに破いて捨ててしまった。


「あっ……」


 なんつーことだ。あの金髪、ニセモン掴ませやがった。くそっ!


 ……とは別に思っていない。

 あんなオタでも一応は師匠。弟子が師匠を信頼しないでどうする。

 おそらく、何かしらの手違いがあったのだろう。


「なに、こんな紙切れが無くとも、上級術が使えるとかいう天才殿にかかれば、この学院の試験など楽勝であろう。その実力が本物ならば、な。

 ……まったく、時間の無駄であった」


 片眼鏡(モノクル)の男は、嫌みたらしく皮肉げに言い、背を向けてドアに手を掛けた。


「ああそう、試験は明日、受験料は金貨1枚だ。なに、出願期間はとうに過ぎているが、私の()()でねじ込んでおこう。精々感謝するんだな」


 バタン!


 男は来た時と同じように、乱暴に扉を閉めて詰所を出て行った。

 詰所には、あちゃーと言うような顔をした守衛のオッサンと、呆けた顔をしているであろう俺だけが残され、部屋に静寂が漂った。


 …………………………いや、スゲェな。

 アレが貴族という生き物なのか。

 たかがガキ1匹にあれだけ嫌味になれるとは、色んな意味でスゲェわ。

 なんかもう、イラつくとか怒るとか以前に感心してしまった。息を吐くように嫌味やら皮肉やらが口から飛び出してくるものだから。


 にしても、一般受験か……。筆記試験って事だよな。まぁ、転生前の知識もあるし、転生してからもクリスに勉強を見てもらっていたから、多分大丈夫だろうとは思うが……。

 

 と、ポーッとした顔で物思いに耽っている俺を見て色々勘違いしたのか、守衛のオッサンが気遣うように話しかけてきた。


「あー、なんだ、その、ボウズ。学院に入るのは、やめといた方が良いんじゃねぇか? お前みたいな平民には肩身が狭すぎるだろ。先公も(しか)り、生徒も然り。なんせ、周りみぃんなお貴族サマだからな。さっきの先公なんてまだマシな方だぜ?」


 見た目にそぐわず、良い人のようだ。わざわざ忠告みたいなことをしてくる。


「平民はいないんですか?」

「そりゃ、な。学費も高ぇし、何より入学できるほどの教育を受けられるだけの金がない。なんにせよ、平民には金が足りねぇんだ。

 さっきも言ってたろ? 受験するだけで金貨一枚だって」


「まぁ、確かに金貨一枚は高……」


 えーと、この国の貨幣価値が、銅貨10枚でパン1斤──大体100円だから銅貨1枚を10円として、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚だから……。


 カチャカチャカチャ……ジャキーン!


「じゅうまんえん!?」


 高っ!

 確か、前世の大学の受験料でも2万は超えなかったはず……。

 どんだけぼったくってやがるんだ、この学院。


「……じゅーまんえんってなんだ?」

「ああ、お気になさらず。……もしかして、学費も高かったり……?」

「まぁ、そうだろうな。オレも詳しくは知らんが……。ああ、そういえばどっかにパンフがあったはず……」

 

 オッサンはそう言って、食べかけのパンやら何やらで汚れている机を漁り始めた。


「おお、あったあった。ほれ」


 ゴミの山の中からオッサンが引っ張り出してきたのは、『王立術科学院〜至高なる学び舎〜』なるタイトルの薄っぺらい冊子だった。


 オッサンがこちらに放ってきたそれを受け取り、パラパラとページをめくって学費について書かれたページを探す。流石に写真はないが、所々に挿絵が入っている、中々に手の込んだ冊子だ。

 半分ほど流し見たところで、目的のページに辿り着いた。


 おおう……。

 金やら銀やらという文字と0がずらり。授業料やら入学金やら何やらをもろもろ込み込みで……大体金貨50枚/年。

 10万円×50だから……?


「ごひゃくまん!?」


 あゝ、眩暈(めまい)が……。


 普通の大学に4年フルで通える額だ。それを1年で? 本当にボりすぎだろう。

 

 いや待て、流石にこの値段なら特待生的なのが……ない!?

 ……そりゃ平民が入れない訳だ。


 金貨50枚なんて家から持ってきた家財を全部売っ払ってもまったく足りない。

 そして今、我が家は全く収入がない。稼ぎ頭のヴァルトは行方不明。ついでにクリスも行方不明。

 いるのは身重な上に元貴族令嬢なレイチェルだけ。生活費で貯えは減って行く一方。そのうち生まれる弟だか妹だかの分も考えると、いま金を浪費するわけにはいかない。

 つまり。


「金がない!!!」

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