表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/87

身体強化

今回は早くかけました。

ヴァルターの話を要約するとこうだ。


 この世界には剣術は一つだけで、質問してみたところ、○○流とかは存在しない。

 剣士には強さによる階級があって、下から下級、中級、上級、人位級、地位級、天位級、神級らしい。つまりは、術の区分けと同じだ。きっと、作ったやつが新しく考えんのが面倒で同じになったのだろう。知らんけど。

 

 こちらも術と同じく、人位級辺りが大体の人間の限界で、それ以上はほんの一握りの天才だけが行ける領域らしい。

 ちなみにヴァルターは人位級らしいが、そこら辺で頭打ちになってしまっているらしい。

 

 そこまで話したところで俺の息も整い、素振りをすることになった。


 俺の手には木剣。なかなか重く、これを振り回せるかどうか心配だ。


「じゃあまずは基本から……。よく見てろよ」


 ヴァルターは剣を構え、振り上げ、そして袈裟懸けに振り下ろした。明らかに手加減していると分かるゆったりとした動作だったが、同時に鋭さも感じられた。


「とまぁ、振り下ろすだけだ」


 え、それだけ?


「えと、コツとかは……?」

「コツ? そうだな…………しっかり両手で握ることと、出来るだけ真っ直ぐ、速くすること、くらいか」

「なるほど」

「ああ、基本だからと言って舐めるんじゃないぞ、これが出来ないと何もできないし、これを極めれば岩だって鉄だって斬れる」


 岩が斬れるらしい。なんてファンタジー。


「ふゎぁぁ……!」

 隣のミーティアが憧れの視線でヴァルターを見ている。


「えーとその、なんだ? 見たいか?」

 照れたのか調子に乗ったのかわからないが、ヴァルターが言った。

 

「うん!!」

「そ、そうかそうか。じゃあ張り切っちゃおっかな〜」


 ヴァルターがノリノリすぎてキモい件。コイツ果たして大丈夫なのか。


「じゃ、あの岩を斬るぞ」

 そう言ってヴァルターが指し示したのは、長年俺の術の標的にされていた庭の大岩。

 かなりデカいが、本当に斬れるのだろうか。

 

 ヴァルターは手に持っていた木剣を置き、腰に差していた長剣をシャランと音高く抜いた。


 無骨な長剣を片手に提げたまま、大岩の前までスタスタと歩いてゆき、振りかぶって、気負う様子もなく一閃。


「なっ!」

 

 大岩に真っ二つに線が入り、砂埃を立てながら割れるが、俺が驚いたのはそこではない。


 一瞬、本当に一瞬だけだが、ヴァルターが剣を振り下ろす瞬間に、白い魔力の光が見えたのだ。

 つまり、あのおかしい威力の斬撃には何かしら魔力的な要素が関わっているわけだ。

 つまりそれは、魔法陣に起こすことだって出来るはずで──


「あ、おいアル! どこ行くんだ!」


 そのことに気づいた俺は、剣の修練中だと言うことも忘れて部屋へと走っていた。


 玄関のドアを蹴り開け、部屋のドアを蹴破り、部屋に飛び込むと、紙とペンと魔石を引っ掴んで庭へととんぼ返り。


「お、戻ってきた。なんだった──」

「さぁ父さん! さっきのぶわぁってのをもう一回やって!」

 ヴァルターが何やら言っているようだが、気にしない。

「──んだ、っと。ぶわぁっての? …………もしかして、『気』のことか?」


『気』? またまたファンタジーな。


「えと、多分それ」

「別にやるのはいいが、何でまた……? というか何で知ってるんだ……?」

「まぁいいからとにかく」

「……おぅ」


 ヴァルターは目を瞑り、身体を少し強張らせた。

 すると、白く輝く魔力の線がヴァルターの身体の周りを巡ってゆく。


「なるほど、関節部分に集中しているのか……」

 俺は魔導書製作時に培ったスキルで、紙にその形を速記して行く。魔力回路は立体なので、ヴァルターの後ろに回り込んだりしながらだ。

 ヴァルターの頭が、周りをチョロチョロ動く俺を追おうとするが、


「ああ、動かないで」


 押しとどめる。動かれてしまうとどこまで描いたか分からなくなるのだ。


 

 5分ほどして記録は終わった。それほど複雑ではなかったのでこの程度で済んだが、もし上級レベルの複雑さだったらもっと掛かったことだろう。


「もういいよ。ありがとう」

「やっとか……。うぅーん……」

 ヴァルターはゲンナリした表情で伸びをする。五分間同じ姿勢で立っていたせいか、体の節々からポキポキと音がした。


「それで? 何だったんだ?」

「もうちょい待ってて」


 伸びをするヴァルターを横目に、俺は記録した魔力回路の形を魔石回路──つまり魔法陣に起こしていた。

 

 十分ほどして、その魔法陣は完成した。

 魔力回路の時には気が付かなかったが、かなり新しいタイプの魔法陣だ。

 中央にでっかい魔法陣があって、その周囲に小さな魔法陣──小魔法陣とでも言うべきか──があり、それが相互に接続されている。

 

 魔法陣全体を眺めて、齟齬がないか確認する。


「OK、かな……。清書しよ」


 ペンで書いた線の上を魔石で辿ってゆく。こちらはなぞるだけなので、1分もかからずに済んだ。


「できた……!」


「お、終わったか」

 俺が魔法陣をいじっている間、どうやら素振りをしていたらしい。ヴァルターとミーティアが手を止めてこちらを見る。


「うん、できたよ」

「で、何を作ったんだ?」

「まぁ、見てて」

 陣を見た感じ、大体の効果は予想がついている。特に危険なものでもないので、試してみようと思う。


 紙を持って庭の真ん中辺りまで行き、紙に手をかざしてお決まりの呪文を唱える。


「《我が身に宿れ叡智のかたち》」


 魔法陣が淡く輝き、俺の身体に白く輝く魔力が纏わりつく。

 これは放出系の術ではないし、照準をする必要もないので、手のひらではなく身体に座標設定をした。


 そして、身体全体に魔力を流す。と、身体の周囲に無数の白い線が走り、幾つもの魔法陣が展開される。そしてしばらく経つと、輝く粒子を散らして消えてしまった。


 これで術が発動したはず……。


「おいアル、何も起こらないが」

「これは目に見えないやつなの。いいから見てて」

 と言って、一歩踏み出──


 浮遊感。そして鈍痛。


「へ?」

 空が見える。雲一つない快晴だ。

「へ?」


「おいアル、何もないとこですっ転んで、何してんだ?」

「あははっ! 変なの!」


 どうやら転んだらしい。どうりで痛いわけだ。

 立ちあがろうと、地面に手をつくが──


 浮遊感。


「ぐへっ」

 

 そして半身に痛み。


 地面と頬が引っ付いている。

 どうやら横に吹っ飛ばされたらしい。


「お、おい本当に大丈夫か? さっきから自分で吹っ飛んでるが……」


 自分で? そんなに力入れてないし、そもそもそんな力はないはず……まさか!?


 術のせいか!


 今回使った術は《気》の術──つまり、《身体強化》の術だ。

 俺がさっきから自爆しているのは、この術が原因だろう。

 《身体強化術》は、主に二つの機能からなると、魔法陣から分かっている。


 一つ。『身体能力強化』。力とか、敏捷とかを強化する。

 二つ。『身体強度強化』。丈夫さを強化する。


 今回は、『身体能力強化』の方が問題なのだろう。

 考えられるものとしては──


「お、おい大丈夫か? ずっと転がってるが。頭、打ったか?」

「ん、だいじょぶ」


 全身の魔力回路への魔力の供給を切り、身体強化を解除し、立ち上がる。今回は普通に立てた。

 身体を見下ろすが、土で汚れている以外に怪我などはない。身体強度強化のお陰だろうか。


 今回の失敗の原因は、おそらく二つ。

 一つ。急激に向上した身体能力に脳がついて行かなかった。

 動きは何倍にもなっているのに、脳はそのままなので、バランスなどを取る反射が間に合わないのだろう。これはもう元々の反射を速くするしかない。訓練あるのみだ。


 二つ。身体強化の度合いが場所によって違った。

 この術は腕とか足とか個別に魔力を送り、その量によって強化の度合いが変化する。

 俺の魔力制御が雑だったせいで、例えば右足だけめっちゃ強化されてたりして、バランスを崩してしまったのだろう。これも練習あるのみだ。


 ヴァルターに聞いたところ、『気』も上級剣士でやっと使いこなせる程度らしい。下級にさえなっていない俺では無理なわけだ。


 明日からはちゃんと剣術やろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ