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相談

 一週間が経った。


 あれから魔法陣の実験はかなり進み、色々とわかってきた。

 

 例えば、六芒星の効果。

 それは、『大気中からの魔力の抽出』だ。

 色々試してわかったことなので、多分間違っていないだろう。

 

 これがあれば、魔法陣の消費魔力の一部を大気中の魔力で代用できるので、魔力が節約できるだろう。

 実際に、教科書に載っているいくつかの魔法陣にも組み込まれていた。


 五芒星の効果も『魔力の固定』だと分かったのだが、それをどう利用するのかはさっぱりだ。


 それ以外にも、芒星はさまざまな効果を持っていた。

 例えば、七芒星は魔力を土属性のものへと変換するし、九芒星は風属性へ、十芒星は火属性へ、十一芒星は水属性へと変換する。

 正直、芒星なんて五と六しか知らなかったのだが、頑張って書いたのだ──と、言いたいところだが、普通に魔法陣に描いてあった。

 俺がやったのは、ただそれだけを取り出して、魔力を流してみただけ。

 『芒星』ということに気がつけば簡単だった。


 だが、十一より前の芒星にもいくつか抜けがあるし、十一以降のものは形さえわからない。

 魔法陣にかけらも載っていなかった。


 まだ穴だらけだが、魔石回路と魔力回路の対応表なんてのも作ってみた。


 まぁ、これまでに分かったことでも十分に魔法陣を描けるはずだ。

 ──ということで、とりあえず描いてみたのだが……。


「燃えるなぁ……」


 そう、燃えるのだ。魔法陣が。

 

 ちなみに、作ってみたのは火を出す魔法陣。【灯火(ライト)】とほぼ同じ効果だが、こちらの方が若干火力が強い──はずだ。

 【灯火(ライト)】が『明かり』を目的とするものなら、こちらは『温もり』を目的とするものだ。

 つまり、【灯火】を白熱電球とすると、こっちのは電熱線みたいなもの。熱に変換される魔力の割合がこちらの方が大きいのだ。


 多分座標指定が狂ってしまっているのだろう、魔法陣の上に展開されるはずの魔力回路が、魔法陣が描かれた紙と重なって展開されてしまい、紙が燃えてしまうのだ。

 これでは完全に失敗だ。


 そもそも、座標指定をする部分がどの魔法陣の魔力回路にも見当たらない。

 手詰まりだ。


 やはり一人でやるのには限界があるな……。


 聞きに行くか、クリスに。


 いくら現代の知識を持っていても、術に関しては素人なのだ。

 ここは熟練の術師であるクリスに聞くのが一番だろう。

 なにも、全て一人でやらなければならない訳ではないし、俺は天才ではない。たった一人の凡人の発想では絶対に限界がある。

 意地を張っていても、なんの得もないのだ。


 紙を丸め、小脇に抱えて持っていく。

「母さん! ちょっとクリスのとこ行ってくるね!」

 庭で土いじりをしていたレイチェルに行き先を告げ、外へと駆け出す。

「気をつけて行くのよ」

「うん」


 クリスの家は村のはずれ、森に程近いところにある。それほど遠くはない。

 子供の足で歩いて30分程だ。


 

 着いた。

 いくら近いとはいえ、子供の足で30分は流石にきつかった。

 大人の近所は子供の遠方だった。

 

 ともかく。さっさと聞こう。


 ドアをコンコンノックする。

 しばらくして。


「はーい!」

 そんな声と同時にバタバタと音がして、扉が少し開かれる。

 

「あら、アルベール君。いらっしゃい、ミーティアに用事かしら?」


 扉から顔を出したのは、優しげな顔立ちをした茶髪の女性だ。

 彼女はミーティアの母、カティ。

 正直言ってミーティアとはあまり似ていない。クリストフの遺伝子が強すぎたのだろうか、共通点といえば翠玉の瞳くらいだ。


「いえ、今日はクリストフさんに少し聞きたいことがあって」

「あら、そう? まぁとにかく上がって」

「どうも、お邪魔します」

「クリスは居間にいるわよ」

「ありがとうございます」

 居間へと向かう。勝手知ったる──というほどでもないが、この家にはちょくちょくきているので、間取りくらいは把握している。

「失礼しまーす」

 一応声をかけてから居間の扉を開く。

「ああ、アルベール君。どうかしたかい?」

 クリスは本を読んでいたようだ。本から顔を上げ、こちらを認めるとそう声をかけてきた。


 本の題名は──「父親必携! どこぞの馬の骨を追い返す百の方法」。

 ……なんつーモンを読んでんだ。


「少し、聞きたいことがありまして」

 クリスが座っている方へと近づきながら問いに答える。

「ふむ?」

 そんな俺の様子から何かを感じたのか、クリスは本を机に置き、居住まいを正した。

「この、魔法陣を見てほしいのですが──」

 紙を広げて机に置く。

「【灯火(ライト)】かな……? いや、違うな」

「これは【灯火】ではないです。えーと、名前は特につけてませんが、それよりも火力を強くした術の魔法陣です」

「詠唱の次は魔法陣か……。君には本当に驚かされるな」

 そんな言葉とは裏腹に、クリスの表情は落ち着いていた。

「いや、まだ未完成なんです。魔力を込めると……ほら」

 クリスの目の前で魔法陣に魔力を込めて見せる。が、案の定紙まで燃えてしまった。

「うん、燃えるね」

「はい、燃えます」

「どうしてだろうね」

「どうしてでしょう」

「えーと、つまりその理由について聞きにきたってことでいいのかな?」

「おお、珍しく察しが良いですね」

 少し感心してしまい、言葉が口をついて出てしまった。

「珍しくって……。でも、僕は魔法陣なんてさっぱりだよ? 多分、というか普通に君の方が詳しいと思うけど」

「だからです。下手に先入観があって思考が固まっている僕には思いつかないような、そんな発想が欲しいんです」

「なるほど……。まぁせっかくの弟子の頼みだ、せいぜい考えてみるとしよう。じゃあ、まず君の推測を聞かせてくれるかな?」

「はい。僕が思うに、魔力回路の座標設定が──」

「ちょ、ちょっと待ってくれるかい? 魔力回路ってなに?」


 ああそうだ、魔力回路は俺のオリジナル用語だったか。本当の業界じゃなんていうんだろう。


「えーと、魔力回路というのは僕が勝手に名付けたんですけど、詠唱とか、魔法陣とかを使った時に現れる魔力の形、ですかね……?」

 自分で言ってて定義に自信がなくなってきた。

「そんなものがあるのかい!? 知らなかった……」

 驚いた様子でこちらに身を乗り出してくる。そしてその存在を知らなかった事にショックを受けたのか、少し俯いてしまった。

「まぁ、魔力は目に見えないんで知らなくて当然ですよ」

「じゃあどうして君はその存在を知っているのかな?」

 やはりこの質問が来たか。

「見えるからです」

「魔力が?」

「はい」

 隠していても話が進まないので、この際思い切ってバラしてしまう。

「ふむ……。魔眼の一種かな……? ……まぁ良いや、続きをお願いするよ」

 

 今とっても気になる言葉が出てきた。やっぱ魔眼ってあったのか!

 良いよね、魔眼。


 

 とりあえず、クリスに今わかっている魔法陣についてのことを全て伝えた。


長くなりそうだったので途中で切りました。

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