転生
なんだか、ゴワゴワした感触のものに包まれている。
これが天国の感触なのか?
……いや、天国の感触ってなんだよ。
それに、俺が行くなら地獄だろ。ロクな奴じゃなかったし。
地獄だとしたら、このゴワゴワに包まれるのが罰なのだろうか。そうだとしたら、しょぼすぎる。
……俺は相当パニクっているらしい。こんな馬鹿な事を考えるくらいには。
まさか、死んだ後も意識があるとは思わなかった。そういえば、触覚もあった。どういう事だ? 身体が無いと触覚もクソも無いと思うのだが。
まさか。
まだ俺は生きているのか?
半信半疑で、自分の体の感覚を探っていく。
手は……ある。しっかりと動く。少し動きが鈍いか?
脚も……ある。少し重い。
目を開ける。全体的にぼやけていてよく見えない。
知らない天井だ。……いや、見えないからよく分からんけど。
病院だろうか。それにしては部屋の色が白っぽく見えないが。
どちらかと言うと、いや、言わなくても普通に茶色だ。多分病院では無い。
だって、茶色いし。病院なら白いはず。白い巨塔って言うくらいだし。
じゃあ、ここは何処だ?
体を起こそうとするが、腹筋に力が入らない。それどころか、首さえ起こせない。事故の怪我のせいだろうか。
そうだ、人だ。人を呼べばいい。医者とか、誰かしらいるだろう。
「うぅあ」
しかし、俺の口から出たのは、意味のない、ただの呻き声だった。
事故で声帯もやられてしまったのか!? それとも脳の方?
……ボロボロだな、俺。
「ーーーーー? ーーー、ーーー?」
俺の声が聞こえたのか、明るい茶色ーー亜麻色というのだったかーーの髪をした女性がこちらを覗き込んできた。
綺麗な緑の瞳と目が合う。
結構可愛い。
……いや、そうじゃなくて!
誰だ、この人。医者か? それとも看護師か? どちらにせよ、外国の人とは珍しい。
つーか、何言ってんのかわからん。日本語じゃないし。
「ーーーーーー? ーーーーーーー?」
何事か言いながら、女性が俺を抱き上げる。
うん……? 抱き上げる!?
おかしい。なんかおかしいぞ。俺の知る限り、成人男性をこうも軽々と抱き上げられる女の人は、そうそういない。赤ん坊なら問題ないが。
つまりだ。俺は……。
そんな俺の思考は強制的に中断された。
女性の行動によって。
彼女は。
恐ろしいことに。
俺のオムツを脱がそうとしているのだ!
あっ、おい! や、やめっ! まだ俺は催して無い! 漏らしても無い!
俺には露出癖なんて無いんだああぁぁぁぁああああ!