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魔力の正体

翌日ーー


「やぁ、来たよ」


 昼過ぎ、クリストフが家にやってきた。

 昨日は午前中だったのだが、今日は午後かららしい。

「今行きます」

 クリストフの声に応えて庭へ行く。


「さあ、今日の授業を始めようか。さ、座って座って」

 地べたに座る。

 今日もヲタトークを聞かされるのだろうか。

「はい。お願いします」

「今日はどうしようか。正直言って、座学で教えることなんて、クソの役にも立たない歴史くらいしかないんだよな……。理論的なことなんて分かってないし。

 おし、実技にしよう」


 よかった。ヲタトークはしないらしい。


「じゃ、宿題を聞こうか」


 うげっ。

 宿題かぁ……。

 いや、やってきたけどね? ほんとほんと。


 でも自信があまりない。


「さ、言って」

 なぜかクリスがワクワクしているように感じるのは気のせいだろうか。


「はい……。魔力とは、何物でもない、何物にもなっていない、そして、何物にもなれるものではないかと思います」

「ほう、その心は?」

「えっと……、まず思ったのは、何で魔力は土とか水になるんだろう、って言うことでした──」


 土と水なんてのは、全く違うものだ。見た目も違えば、形も違う。性質も違う。もっと細かく言うと、そもそも構成している分子が違う。

 なので、魔力ってのは分子を造るものーー原子ではないかと思ったのだが、ここで問題が一つ。

 

 原子って、何の原子?


 原子は確か百種類以上ある。

 というか、そもそも土も水も一種類の原子でできているわけではない。


 そんなわけで、魔力=原子説は否定された。


 じゃあもっと単位を小さくしようと思って、魔力=素粒子説を提唱してみたのだがーー。

素粒子にも、電子やら光子やら色々と種類がある、と昔一時期ハマっていた理科系の本に書いてあった。


 そんなわけだから、これも一瞬で否定された。

 

 じゃあどうしよう、と。


 そもそも、魔術なんてのを科学的に考えるからいかんのじゃ!ということに思い至りーーそもそも、原子やら素粒子やらが魔力なら、前世にも魔術があったはずだーー科学チートは諦めた。


 土とか水じゃあよく分からなかったので、風とか火とかで考えてみた。


 ストレートに魔力の正体を考えるとダメだと分かったので、堅実に風やら火やらが起こる原理から考える。


 風を起こすには。


①空気ーー厳密にはそれを構成する分子ーーを動かす。扇風機とか、そんなイメージだ。

②空気を圧縮して、解放する。もしくは、真空状態を作って、空気を吸い込む。コンプレッサーとか。

③空気を暖めたり、冷やしたりして上昇気流や下降気流を作る。


①と②はともかく、③は風というより、火な感じがする。


 ①と②はどうしたら起きるか。

 ①については、空気の分子に運動エネルギーを与えればいい。ちょうど、団扇で風を起こすように。

 ②は、要するに周囲との気圧差を作ればいいというわけだ。

 圧縮は、①と同じようになんかこう……、運動エネルギーで押し固める感じというか、その……。つまりそういう訳だ。

 他にも、そこに空気を新たに作り出せば、それに押されて風が吹くだろう。


 つまり、魔力の正体は『運動エネルギー』か、『物質を作る何か』の二つに絞られたわけだ。

 個人的には、エネルギーの方を推したい。かっこいいから。


 

 次。火について。

火が燃えるのに必要なものは、

①酸素

②燃料(可燃物)

③熱

の三つだ。


 酸素は空気中から取っているとしても、熱と燃料については魔力の働きであると分かる。

 だって、火術使う時にガソリンとかなんて使ってないし、ましてやマッチなんかも使っていない。使ってたら魔術じゃない。


 ここでも、魔力は『熱エネルギー』と『燃料』という二つのものに変わっている。


 以上から、魔力は、『エネルギー』と『物質』の二つに変化しているとわかる。


 つまり、魔力の正体は。


『エネルギーにも物質にもなれるナニカ』だ。

 こんな曖昧な結論でいいのかとも思うが、これ以上のことなんてわからない。


「ふぅん……。所々よくわからないとこもあったけど、筋は通ってる気がするな。

 まさか、これほどとは……。面白い、面白いよ!」


「そ、そすか……」


 テンションが急上昇、そして俺の株も爆上がりだぜ!

 ……野郎の好感度稼いでもそんな嬉しくないけど。

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