弟子入り?
遅れてごめんなさい。
「上級くらいでいいかな……。
《遍く水の精よ 我が力を贄として 我が定めし今、我が定めし此処に 天より墜つる水龍の、破壊の奔流をもたらせ》」
そうクリストフがゆっくりと唱えると、彼の身体から膨大な量の青色の魔力が放出された。
それこそ、俺の視界を覆い尽くすほどに。
何だ、これ……。
何だ、この魔力量は……。
俺の総魔力量よりずっと多い。
一つの、たった一つの術に使うだけで、だ。
なんだ、これ。
ただの上級で、これなのか……?
これが、上級なのか……?
これならば、あるいは……。
「【瀑布】」
そうクリストフが唱える。
魔力が一気に収縮し、そして、弾けるように、膨大な量の水が生まれた。
そして、壁を突き破り、外へと溢れ出した。
後には、壁に大穴が開き、ずぶ濡れになった部屋だけが残された。
……やり過ぎじゃね?
ほら、ヴァルターも絶句している。
「お……、俺の家がっ! こ、これはやり過ぎだろう!?」
ヴァルターが呆然として言う。
「いやだって……。このくらいじゃないと、消せなかったと思うよ? だってアレ、上級相当だったもん」
男の『もん』はキモいだけだぞ、クリストフよ。
「あんな細っこい火がか?」
「うん。熱量自体はそんなでもなかったけど、性質がめんどかった。多分、完全な形じゃないと思うけど。……そうだろう? アルベール君」
名前を呼ばれ、思わずビクッとする。
なぜ分かった!?
「な、何デスカ?」
「? 何でそこでアルが出てくるんだ?」
「さっきの火術、君のだろ」
ギクッ。
「おいおい、冗談よせよ。アルは一歳だぞ? 上級相当の火術なんて使えるわけ……」
そ、そうだそうだ! 使えるわけないよねー。
「いいや、使えるさ。だって実際使ってるんだから。それに、そこで這いつくばってるのは魔力切れで動けないからだろ?」
ギクギクッ。
何でわかる!? どこぞの名探偵でもあるまいし。
「それより、アレどうやってやったんだい? 僕も見たことない火術だったのだけど」
そりゃそうだ。
自分で改変して創ったのだから。
つぅか、完全にバレてら。
「あ、アレは上級火術ではない! ただの灯火だ!」
言っちった。
言っちったぞ!
どこぞの魔王みたいなことを!
……這いつくばりながら言っても迫力なんて皆無だが。
しかし、これからどうすべきか。
言ってしまったからには、もう戻れない。
周りの反応は……?
「ほう……? アレが灯火だと。興味深いな……」
マッドな顔をしていた。
俺は戦慄する。
やべぇ奴だ。
「な……!」
こっちは、また絶句している。
「?」
状況がよく分かっていないようで、ポカンと首を傾げてるのもいる。
最初の以外は大丈夫そうだ。
それぞれがそれぞれの世界に入ったまま、何分か経った。
「お、おいアル。本当なのか?」
最初に復活したヴァルターが聞いてくる。
「まぁ、本当」
「そ、そうか……」
ーー前々から変な奴だとは思っていたが……。
引いてるのか? こいつ。
というか、息子を変な奴呼ばわりは酷くね。
「一歳でこれか……。なぁアル、クリストフに弟子入りしないか? こう見えてコイツは、結構優秀なんだ」




