座標を弄る実験
三日連続です。
新記録。
「あああ! 壁が!?」
まずい。バレるかも知れない。
まさかあんな威力が出るなんて……。
予想外だった。
と、とりあえず魔術関係のは、ベットの下に隠して、穴は……。
背中で塞ごう。
もし見つかったら、しょうがない。
その時はその時だ。
そんな体勢のまま、10分たち、さらに20分たった。
誰も来ない。
気付かなかったのか。
「よかったぁ……」
まぁ、落ち着いて考えれば分かることだった。
音はそれほど大きくはなかったし、穴が空いたとはいえ、小さなものだ。
前に物を置けば分からないだろう。
よし。
隠蔽工作だ!
棚を置くのは……。
今の筋力じゃ無理だな。
おもちゃとかを積んどいても、逆に片付けられた時に見つかりそうだし……。
紙でも貼っとくか。
ちょうど、レイチェルにもらったのがまだ残っている。
適当に絵でも描いて貼っときゃあ剥がされないだろ。
さて、何を描くか……。
ここは子どもらしく、下手くそな家族の絵でも描いておこう。
ヴァルターと、レイチェルと俺と……。
完成し、壁に貼られた絵を見て思う。
うん。下手くそだな。
いかにも幼稚園児の絵、と言った感じだ。
「ふゎあ……」
眠い。
そういえば、もうそろそろ昼寝の時間か。
不自然に思われないよう、ベッドによじ登って寝る。
おやすみなさい、だ。
それからしばらくして。
「アル、お昼寝しましょう〜。……あら?」
ドアが開き、レイチェルが入ってきた。
「なんだ、もう寝てたのね。特に変わったことは……。まあ!」
部屋の中を見回し、何かを見つけた様子で窓の方へ近づく。
「これは……、私とヴァルトさんと、アルかしら……? ふふっ」
少し微笑んで立ち上がると、彼女の息子の頭を優しく撫でた。
「おやすみなさい、アル」
そう言って、部屋の中から出て行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
目を覚ます。
昨日は……、確か昼寝しすぎて、夕食に起きて、またそのまま寝たはずだ。
魔力を消費しきれていない。
まぁいいか。
最近はマンネリ化してる感があったけど、昨日の発見でまた楽しく感じられるようになったし。
その発見とは。
そう、オリジナル魔術だ!
いや、固有魔術の方がカッコいいな。
無属性か……。
まだ色々と知らない属性がありそうだ。
雷とか。
それとも、風の上位互換か?
ゲームだとそういうのは時々あったが。
いや、新しいものより、まずは基本を固めよう。
まだ属性と効果の整合性についてしか確認できていない。
あとの、座標と時間、効果のみを弄るのはまだ検証していない。
今日はそれからやろう。
座標を弄る。
多分、三節目の《今此処に》の《此処に》を弄ればいいはずだ。
ここ、だから、そこ、に換えてみるか。
「《大いなる土よ 我が喚び声に応えよ 今其処に 豊穣の土をもたらせ》【土】」
茶色の魔力が放出されるが、いまいち形と場所が定まらない。
そしてそのまま、発動することなく魔力は霧散してしまった。
何故?
《其処》じゃあアバウトすぎたか?
でも、それなら《此処》で問題なく発動しているのはおかしい。
じゃあ、距離の違いか?
ちょっと確認だ。
ここに一つのビンがあります。
それを自分のすぐ目の前に置きます。
そして呪文を唱えます。
「《大いなる土よ 我が喚び声に応えよ 今ビンの中に 豊穣の土をもたらせ》【土】」
問題なく魔術が発動し、瓶の中に土が生まれた。
ロマンに欠けるが、これなら……。
ビンを少し離す。
そしてまた、呪文を唱える。
「《大いなる土よ 我が喚び声に応えよ 今ビンの中に 豊穣の土をもたらせ》【土】」
問題なく発動した。
そしてこれを、ビンが部屋の端に行くまで繰り返した。
部屋の端から端程度の距離ならば問題なく発動した。
やっぱり……。
具体性の問題だったようだ。
《此処》で発動したのは、場所がかなり限定されるからだろう。
『術者の近くかつ目の前』という感じで。
もしくは術者の意識によるものか。
なら、《其処》でも限定するか、場所をはっきりイメージすればできるはずだ。
ビンを少し遠くに置き、それを指差す。
そこはビン、そこはビン……。
「《大いなる土よ 我が喚び声に応えよ 今其処に 豊穣の土をもたらせ》【土】」
茶色の魔力が放出され、ビンの方へ流れていく。
ビンの上で魔力が渦巻き、次第に収縮し、土が生まれる。
成功だ。
なんか時系列ボコボコになってるかも。




