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第九話 破壊神シヴァ


 落下している。

 全身の力が及ばずに、ただ重力に身を任せて落下し続けている。


 爺ちゃんは「神に会って来い」と言ったが……。




「いや、これ、死ぬだろ!!」




 何をしても無駄だ。

 手を動かしても足を動かしても身体は垂直に落下し続けている。 


 クロノスは言っていた、夢を想えと。


 くそっ、俺の夢。俺の夢はーーーー。


「英雄に、なりたいぃいいいいっ!!」


 なりたい……?


 いや、違うだろ。


 なりたい、なんてそんな神頼みじゃダメだ。どこかで心の中で甘えがあったんだ。


 いつの間にか俺は闇属性だから無理だと、自分自身で思ってたんだ。


 俺は英雄になりたいんじゃない。


 俺は、俺はっ!!!






「俺は英雄になるんだああああああぁぁぁっっっ!!!」








 その時、世界が静止した。


 いつの間にか知らない場所に立っていた。

 何も無い全てが真っ黒な場所だ。

 植物も無く、空もなく、海もない。

 すごく寂しい場所だった。


『てめえ、俺を呼び出すとは中々ヤルなぁ』


 っ、いつからそこにいた……?


「あ? 最初からだよ、てめえが見えなかっただけだろ」


 闇だけの虚空の場所から突如、そのから現れたのだ。


「誰、だ……?」

『俺は破壊神シヴァ。まっ、闇属性の神ってところだな』


 その人は全身が黒かった。

 髪も黒く、目も黒く、纏う黒衣も黒く、その腰にぶら下げられた酒瓶までもが黒かった。

 そして破壊神と言われても信じられる様な、圧倒的な圧力を纏っている。


『ところでテメェ、英雄になりたいんだってなァ! 闇属性如きでよォ!』


 ブワッ、と風が巻き起こった。

 風というよりも魔力による威圧だ。


「で、テメェは何しに来たんだァ? 神頼みなんてどーたらこーたらってたよなァ」

「頼むんじゃない、俺は力を貸してほしいだけだ」

『それは頼るじゃねえのかァ?』

「違う。俺も一緒に戦うんだ」

『ケッ。結局はテメェ一人じゃ戦えねえんじゃねえか』


 確かにそうだ。俺は一人じゃ何も出来ない。

 けど、過去の英雄達はどうだった?

 一人で戦っていた者はいたか? いや、いない。

 彼らは常に信じる者と愛する者と共にあったのだから。


「そうだよ、でもそれでいいんだ。英雄は一人で戦ってたわけじゃないから」


 ケッ、と面白くなさそうに目を逸らす破壊神シヴァ。

 だが俺と目を目が合うとニタァと笑った。


『俺はよ、初代魔王にも手を貸したことがあるんだ! いやあ、あの時は楽しかったぜ。人間の泣き喚く様を見るのはよォ!』

「………………」

『またやりてえぜ! このままテメェの身体を乗っ取ってヒト暴れするのもアリだなァ!』

「なら、友達になろう」

『…………は?』


 かつての英雄、【友情の勇者】アルシオンが言った。「困ったら友達になっとけ。敵も味方もない、友達になれば最終的には親友になる」と。

 ならば俺も破壊神シヴァと友達になり、最終的には親友になって見せよう!


 さあ、答えはどうだ!?


 と思ったら破壊神シヴァはぷるぷると震えていた。だが我慢も限界の様でーーーー。


「ぶっ! ブワハハハハハハハハハッ!! 友達って、破壊神に友達って!」


 何かツボに入ったらしい。


「ギャハハハハ! ヒーッ、ヒーッ、あー腹痛え……!」


 転がり回ってとんでもないほど爆笑してる。

 そんなに息が出来ないほど面白いことを言ったつもりもないんだけどな。


「破壊神シヴァに破壊を頼むならともかく、友達になろうなんて言う奴、テメェが初めてだ! おもしれえ、いいぜ! お前に力を貸してやる!」


 っ! マジか!


 そして破壊神シヴァが指を鳴らすと俺の身体も自由に動いた。何故か立てているんだが、これも破壊神シヴァの力だろう。


『ただよ、隙を見せたらてめえの身体を乗っ取って、破壊の限りを尽くしてやるぞ!』

「なら、そうならない様に努めるよ」


 ニカッ、と二人で笑い合うと、今度は上を見た。


『だがよ、俺ァテメェのジジイにちょっくら恨みがあってよ』

「奇遇だな、俺もだ」

『おっ、いいねぇ。ならこんな作戦があるんだ。耳貸せ、耳』

「なんだよ……」


 こそこそと破壊神シヴァが作戦を伝える。


「なるほど。いいね」

『だろ!』


 作戦内容を考える二人のそれは、まるで子供の兄弟が悪戯を思い付いた様な笑顔だった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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