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第六話 僕達は笑わないよ。君は英雄になれる。



 ここは食堂だ。流石に貴族の家だって豪華なのだと思っていたら、食卓は普通の家と変わらない広さだ。

 

「「ラストお兄様はリリ(ララ)の隣ねっ!!」」

 

 両隣の幼女に手を掴まれて、二人の真ん中の椅子に座らされた。


「わははは! 早速懐かれたな!」

「あらあら。リリとララがこんなに簡単に懐くなんて……」


 ピンク色の髪の子がリリちゃん。

 水色の髪の子がララちゃん。

 二人は双子らしいけど、道理で息ぴったりだと思った。

 

 少し話しただけで仲良くなれた。

 幼女のコミュ力怖ぇ。


 それから、食卓にはみんな座って、料理も運び込まれて来た。

 けれど一つだけ席が空いてままだ。


「お父さん、また仕事でしょうか?」

「そうねえ。今は少し忙しいみたいよ」


 まだ来ていない人はクレアさんのお父さんなんだと予想する。


 するとちょうど帰って来たみたいだ。


「ふう。すまないね、仕事が長引いてしまったよ」


 食堂の扉を開けて一人の男性が入って来た。

 青髪と眼鏡がとても知的そうだ。


 それから席に座って、目の前に座っていた俺と目が合ってにこりと微笑んでくれた。


「やあ。子供の時に会ってるんだけど、もう忘れてるよね? 僕はジャック・タキオス。一応、魔術管理局の局長をしているんだ。よろしくね」

「は、はい、よろしくお願いします」


 とても優しい声で言ってくれた。


 何はともあれ、全員が席に着いた。






「それではこれより、ラストの歓迎会を始めるぞ!乾杯っ!」

「「「乾杯っ!!」」」






 クロノスさんの音頭で宴会が始まった。


 食卓に並べられた豪華な料理の数々にみんな一斉に手をつけ始めた。


「ほれ、ラストよ。いっぱい食べなさい」

「あ、ありがとう、クロノスさん」


 クロノスさんが肉の盛り合わせを小皿に分けてくれた。


「ラスト君、僕のおすすめはこれだよ」

「ラストちゃん、よそってあげるわね」

「ラスト、これも美味しいですよ」

「ラスト! 食え食え、太くならねえぞ!」


 次から次にみんながご飯を分けてくれる。

 いつの間にか目の前が料理で山盛りになっていた。


 食べ切れるかな……。





 食べ切った。

 頑張ったから、お腹はパンパンだ。


「ラストお兄様っ!」

「すごーいっ!」


 ふふふ、俺の勇姿を見てくれたか。


 二人の幼女が讃えてくれた。

 少し元気が出た。


「さて、ラストよ」


 いつになく真剣な声で言った。

 シン、と食卓が静まり返った。


「そろそろ……」


 何だ、何を言われるんだろう。

 随分と間を溜めてから口を開いた。






「ワシをお爺ちゃんと呼んでくれんかのぅ……」






 ……散々間を溜めてそんな事か。


「えっと、爺ちゃん……」

「うむ! 何じゃ!」


 クロノスさん、いや爺ちゃんがにんまりとした笑顔をする。


「狡いですよ、お父さん! なら私はママと、いえ、スカーレットお姉ちゃんって呼んでください!」

「そ、それなら私もクレアお姉ちゃんと!」

「俺のこともライオスお兄ちゃんって呼んでくれ!」


 すると今度はみんなが寄ってたかって来た。

 流石に勢いが強過ぎて苦笑いになってしまう。


「すまないね、ウチは少し煩くて」


 ジャックさんも苦笑いで言った。


「さて、ラスト君」

「は、はいっ」

「僕の事もお父さんって呼んでくれていいからね?」

「「「抜け駆け禁止っ!!」」」

「まあ冗談は置いておこう」


 ジャックさんも悪ノリして来た。

 流石に冗談だったのか、その後に真剣な顔をして口を開いた。




「ラスト君。君の夢は何だい?」




 優しくそう問いかけた。


 夢。 


 夢?


 ……夢か。


 夢はある。

 でも、言えない。

 俺は闇属性だから、きっと。


 でも。


 クロノスの、ジャックの、スカーレットの、クレアの、ライオスの、リリとララの優しい瞳がそれを言わせた。






  






「英雄になりたい」






 






 

 口が開いてしまった。

 バッ、と両手で口を塞ぐ。


「す、すみません……」


 なんでこんな事を言ったんだ。


 俺が、闇属性の俺が英雄になるなんて……。


「何故、震えているんだい?」


 っ。ジャックに言われて気付く。

 いつの間にか手が震えていた。


「君はずっと笑われて来たんだね」


 昔のことを思い出した。


『馬鹿な夢を見るな』

『英雄になんてなれるわけがないだろ』

 

 ずっと笑われ続けて来た。

 

 きっとこれからもーーーー。


「でもね、僕達は笑わないよ。君は英雄になれる」


 ああ、そうか。


 クロノスとジャック、クレア、ライオス達が真っ直ぐと俺の目を見てくれた。


 今までの人達とは違う。


 俺を《闇属性》だから、では無く《ラスト》として見てくれている。






「ううっうあああああんっ!!!」

 





 俺はまた泣いた。


 英雄になる夢を認めてくれた。

 

 真っ直ぐに目を見てくれた。


「ラストお兄様?」

「大丈夫?」


 リリとララが心配してくれた。

 俺は大丈夫だよと言い続ける事しか出来なかった。


 膝上に置かれた手の甲に落ち続ける涙が妙に冷たかった。

明日からは17時に投稿して行きます。


今後の目標は、ひとまず五章らへんまでは休まずに毎日投稿を続けられたらいいなと思っています。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

作者のモチベーションアップに繋がりますので、ブックマークや高評価、感想などよろしくお願いします!

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