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第三十九話 破壊神剣トリシューラ

連日投稿がぁああああああ!!!



1st(ファースト・)release(リリース) 破壊神剣トリシューラ」



 俺は普段、破壊神の力を封印している。その一段階目の封印を解放される事によって得る力は、一本の黒剣だった。


 禍々しい闇を発し、その周囲に空間の歪みすら生んでいるその剣は圧倒的な魔力を放っているが、それでもさっきの様に木々を枯らしたり、黒く染めたりはしていなかった。


 しかし、カインの本能が告げていた。


 あれはやばい。人知を超える存在だ、と。


「黒風の檻!」


 ならば先手必勝だ。異形の姿となったと言っても、カインの魔法はさらに磨き上げられ、強力なものになっていた。


 黒い風が周囲を覆い、檻の様になって封じられた。


黒嵐(こくらん)!」


 そして檻を中心にして黒い竜巻を発生させた。それは徐々に激しく、巨大になっていく。大地が抉れ、木々が吹き飛び、周囲の物を破壊していく。


 あんなものの中央にいればひとたまりもない―――――。





「“仇斬り”」






 だが、そんな漆黒の嵐すらも切り裂いて、嘲笑うかのように無傷のラストが現れた。しかし、その圧倒的な実力とは反対に苦悶の表情を浮かべていた。

 

 まるでカインを憐れむ様な目で――――。


「その目を、その目を辞めろォオオオオオ!!」


 カインは黒い風を吹き荒らした。その威力は明らかにさっきよりも上昇している。


 だが力を上げた代償からか、カインの姿形がさらに変貌して行った。両目の周囲がはれ上がり、昆虫の様になった。さらに皮膚も乾いた砂漠の様にヒビが入り出した。


「その目は何だ! 私が、僕が、オレを憐れんでいるとでもォ言うっの、かァ!?」


 姿の変貌から、ついに呂律までおかしくなり出した。

 今もまだ身体の変態は続いている。


 だが、それと同時に黒い風も強くなる。


 吹き荒れる嵐が一つ、発生する。


 また一つ。さらに二つ、と増殖していく。


「吹キィ荒レッロ! 死ヲ呼ブ風ェエエヨ! “黒嵐舞踏会”ィッ!」


 無数の黒い嵐が俺に向かって放たれた。

 たった一つだけで地面がボロボロになっているのに、無数に放たれれば破壊力が桁違いだ。一瞬で街の一つや二つは崩壊させられそうだ。


「受ケキレルカナァアアアアアア!?」


 カインは勝利を確信した。


 そして油断したのだろう一瞬、瞬きをした。

 その瞬間、カインの視界からラストが消えた。




「“(うつろ)()り”」




 次にその姿が見えた時、カインは地面に倒れていた。


「…………は、ェ?」

「“空斬り”」


 唖然としているカインの前で、たった一太刀で黒い嵐は消し飛ばされた。


 破壊神剣トリシューラの能力は“刃に触れた物を破壊する”事だ。破壊神(シヴァ)の能力の劣化版だが、その能力は見ての通り強い。


 破壊できない物は無いと言っても過言では無かった。


「格ガぁ、違ウゥアぁ……」


 完全に敗北を認めたのか力を抜いてガクリ、と後頭部を地面に付けた。


 そんなカインの姿を見て少し悲しく思う。


「――――カイン。俺は爺ちゃんがそんな事をするとは思えないんだ」


 話しかけると指先がピクリ、と反応した。聞こえてはいるみたいだ。


「カインが嘘を吐いていないのは分かる。でも、俺の目から見た爺ちゃん達がそんな事をする人だとは思えないんだ」


 この四年間の事を思い出す。


 俺を迎え入れる時、爺ちゃん達は優しく歓迎してくれた。


「その話がどこまで本当なのか、どこかで話が違っているかもしれない。でも、それでも俺はタキオスを知っている」


 カインの握った拳が震えている。そして叫んだ。


「ダカラ、ダからァ、何ダと言うのダ……。ダカラと言ッても、俺が受けた仕打ちは消えない。無グなラァないッ!」

「…………その通りだ」


 カインが感じた苦しみも何もかも、消える事は絶対にない。

 


「ならば、俺を殺セ! オ前のォ! 仲間ヲ攫ったァ、俺をコロゼェエエエエエエエ!!」



 それはカインの悲痛の叫びだった。“殺してくれ”と“もう楽にしてくれ”と言っている。苦しくて、辛くても死ねなかった。ようやく死ねるとそう思っているんだろう。


「確かにその通りだ。お前はアクアを攫った。許される事じゃない」


 剣を振り上げる。太陽の光が刃先に反射して、カインを照らす。

 どんなに眩しくても、変貌したせいで(つぶ)(まぶた)すらなかった。


 今、この剣を振り下ろせばカインを簡単に殺すことができる。


 でも――――




「でも“兄貴”を斬りたくないんだよ……」




 俺は剣を下げた。


 顔も知らなかった。今日、始めて会った。


 両親が死に、裏切られて、その後に掛け替えのない存在を見つけた。

 少し形は違うが俺とカインの境遇は似ている。


 それにタキオスの血は繋がっている。


 だから“兄”と呼んでもいいだろう。


「あ、兄……?」

「ああ。弟に兄ちゃんを、()()()殺させる気なのか?」


 説得になっていない説得。


 でも、言葉の通りカインを殺したくないという気持ちは同じだ。


 カインは血の繋がりよりも濃い、固い絆で結ばれた家族が出来た。

 でも()()()()()()()()()。タキオスの血が。なら、俺が家族になればいい。


 無茶苦茶な説得だが、どうなるか――――。




「ぷっ、ぷははは! そうか、家族か!」





 ――――結果、カインは腹を抱えて笑った。


 そりゃあ、こんな滅茶苦茶な事を言われたら笑いたくもなる。


 ただ、少しだけ。本当に少しだけカインの表情が和らいだ気がした。


「弟か……。悪くネェな」


 カインは身体の力を抜いている。

 油断とかではなく、敵意も一切感じない。


 完全に戦意喪失した様だ。


 ただ嬉しそうに笑っているのは分かった。


あと二、三話でこの章は終了となります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークや高評価、感想など是非よろしくお願いします。

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