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第三十七話 同じ“黒”同士、仲良くしようか!

何とか次の章までは毎日投稿を続けてやる……!

「「「「あ」」」」


 皆が分かれた、あの裏路地の広場に戦闘を終えた四人が顔を合わせた。


「お久」

「おう」

「ウーッス……」

「あわわ……!」


 戦闘を終えてボロボロな者や傷一つ負っていない者もいたが、敵が持っていた麻袋を奪い取り抱えているのが四人全員の勝利を物語っていた。


「中身、どうだったんだ?」

「せーの、で言おー」 

「んじゃ、せーの!」


 ナックルの掛け声で一斉に麻袋を広げて、そして――――


「「「「ハズレ」」」」


 ――――麻袋の中身にはアクアはいなかった。


「やっぱりか」

「ていう事は残った一袋」

「つ、つまり、あの赤髪の人が持っていた麻袋に……」

「アクアが入っている」


 どこにいるかも分からない、敵のリーダー格を追って行ったラストの勝利を信じて、四人とも空を見上げた。


「勝てよ、ラスト……」

「アニキ……っ!」

「ナ、ナックル君!? ウルフ君!?」


 ナックルとウルフは二人とも、倒れた。


 リリスが慌てて倒れた二人の介抱をしようと近寄ると、二人の傷の深さに驚愕する。


 ナックルは両腕の骨が見える程に皮膚が抉れ、さらに全身に重度の火傷を負っていた。ウルフも全身の至る所に風穴が空き、血が噴き出していた。


 一目で分かるだけでも重症の怪我なのだ。実際は内臓など、目に見えない傷が多いだろう。


 こんな傷で、どうやってこの場所まで来たのか。

 リリスは驚愕するが、何よりもまずナックルとウルフの治療を優先する。


「っ、ラ、ラースちゃん!」

「はいっ! リリスお姉さまっ!」

「二人の治療を、お願い、します!」

「喜んで~っ!」


 どこからか現れたサキュバスのラースが恍惚とした表情でナックルとウルフの治療に取り掛かった。


「……何でコイツがリリスの命令を聞いてるの?」


 その光景を見て引き気味にメユリが言った。


 さっきまで、バリバリの戦闘状態で眠り香を嗅がせてきた敵だった相手が、リリスの命令を聞いている事に違和感を覚えた。


「えっと、その、“めっ”てしました……っ!」

「えっ、拷問したの……?」

「何でそうなるんですかぁ……!?」

「だって、めってしたんでしょ?」

「そういう意味じゃなくて、あの、そのぉ……!」


 慌てて言葉を改めようとするが、急ぐほど言葉が出て来なくなってしまった。


「そ、それよりもラストさんですよ! あそこにはリーダーの男がいて……」


 無理矢理、話を逸らした。

 と言っても、すでにラストの元にアクアがいると分かった今、アクア奪還が目的のリリス達がそれを追わない手はなかった。


 急げば挟撃する事が出来るし、この人数だ。必ず勝てる。


 ん~、と考える仕草をするメユリ。

 ただ答えは決まっていて、こう答えた。


「でも、まあ、ラストなら大丈夫でしょ~。ボク、コウシロウの加勢に行ってくるね~。同じボクっ子仲間だしね~」


 ふわぁ、とあくびをしながらメユリはふわふわと飛んで行ってしまった。


「ラストさんなら、きっと……」


 そこまで言われて、自分で気が付く。


 よく考えてみるとリリスが他人のために祈る事は初めてだった。


 加勢の件については、メユリの実力は言わずもがな。リリスはかすり傷程度は負っているのに対して、メユリは戦闘があったと言うのにその柔肌には傷一つ付いておらず、さらに余裕もありそうだ。リリスが祈るまでもない。


 だから勝利を信じて、リリスも治療のためにナックルとウルフの傍に寄った。


「……リリスお姉さまはあの坊やがカインに勝てると思ってるんですか~?」

「うん、そう信じて、るよっ」

「リリスお姉さまには悪いですけどあの坊やじゃ、カインには勝てませんよ~っ」

「えっ? それは、どういう……」

「だって、カインは最強だから」


 謎の言葉を残して重症となり、かなり危ない状況の二人を無事に治療するために、ラースは仕事に集中した。


 リリスからの質問でラースがその事を口にする事は二度となかったが、一つだけ分かった事がある。


 敵は強い。




 ――――頑張れ、ラストさん。









 この敵は強い。


 追走から追い付いて、敵と対峙して改めて思った。


「また、君か」

「ああ」

「王女を取り戻しに来たのかい?」

「そうだ」


 当たり前だ。俺達はアクアを助けに来た。


 そう答えると赤髪の男はフッ、と笑って肩に乗せた麻袋を地面に置いた。


「なら、君が全力を出せるように先に教えておこうか」


 麻袋を開いて、中身を見せた。


「んんっ! んんっんっ!」


 そこには猿ぐつわをされたアクアがいた。

 ただ、縛られて拘束されているだけで別段怪我はしていなかった。 

 

 何かを言いたそうに声を出しているが、猿ぐつわのせいで聞き取れない。


 でも、何となくだが言いたい事は分かった。


「俺は大丈夫だから、任せてくれ。アクア」


 そう言うとアクアは安心したように大人しくなった。


 絶対に勝つ。


「僕に一度負けた君が良く言うよ」

「同じかどうか、試してみろよ」


 カインは荒れ狂う黒風を纏った。凄まじい風圧が周囲をも吹き飛ばした。


 俺も黒い剣を創り出し、右手に握った。


「風魔法 黒風乱舞!」

「闇魔法 大・黒・斬!」


 カインがアジトで放った様な強力な黒い風を吹き荒らした。

 まともに受ければひとたまりもない。


 だが、前と同じ様にはいかせない。


 黒剣から放たれた黒い斬撃が黒風を相殺した。


 もう前とは違うんだ。覚悟が違う。


 必ずコイツに勝って、必ずアクアを助けてやるんだ。


「同じ“黒”同士、仲良くしようか!」

「死んでも嫌だね!」


 こうして、王女アクアが見守る中、赤髪の闇属性vs赤髪の黒風の対決が始まった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークや高評価、感想など是非よろしくお願いします。

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